残された少年
彼は不意に目を覚ました。自分のいる場所を中心に大きなクレーターが出来ていたことからすぐに状況を理解した。
「また………なのか………」
少年は一人呟いた。そして身体を起こした。
「…………」
少年は転がっている死体を見ながら拳を強く握りしめていた。それは自分に対する怒りだった。
「誰一人守れない………僕は……」
少年はふと足を止めた。そこに転がっている死体くくぎ付けになっていた。
「澪野………晴哉…………みんな死んでいった……なのに……」
━━━どうして僕だけ残されるのだろう……
高斗の前に、今まで息を潜めていた瑛太が姿を現した。
「辛いかい?高斗………」
「兄さん………もうおしまいでいいじゃないか……なんでみんながこんなことするの……」
「残念ながら終わりはない。そして君と彼を引き合わせるつもりもない……」
「そうだよね………それにもう迷わないと決めたんだ!こんなところで挫けては今までに死んだ人に申し訳ない!」
高斗は新風丸を手にした。その剣は彼には一段と重く感じた。
「………………」
瑛太は無言のまま集中力を高めている。
「剣技『隼狩り』」
先に動いたのは高斗であった。『隼狩り』とは、相手の武器を弾きその反動で相手に突きを喰らわす剣技。その様子は隼が獲物をとるように見えるためそう名付けられているが、あくまで高斗が名付けただけなので本当かはわからない。これは威力は低いものの、急所を捕らえることが極めて多いい。さらに、武器を弾ければ百発百中である。
高斗は瑛太の盾を弾きとばして瑛太の左ももに突きを喰らわせた。ように見えたのたが、盾を弾かれたあとに逆手に持っていた短剣できれいに攻撃を止めた。
「そうだよ………俺は……僕はこんな戦いを期待していた……もっとだ弟よ!俺の血が沸騰するくらいの興奮を味あわせてみろ!」
「ぐっ………次だ!」
高斗は多くの剣技を使って攻撃する。しかし、瑛太にはギリギリで止められる。
「もっとだ……もっとぶつけてみろ!」
「言われなくても………はぁぁっ!」
高斗は攻撃の手を休めない。しかし瑛太はそれをすべて見極める。そんな攻防が続いていた。高斗はこの戦いをずっと続けていたいと心のどこがで思っていた。もっと違う状況で、兄の瑛太と真剣勝負が出来ていればそれは可能だったのかもしれない。そして、それは瑛太にも言えることだった。彼もまた自分の弟としっかり向き合いかたったのだ。そんな両者の戦いは第2ラウンドに進むのであった。