三人の結末
少女は大きく笑い続けていた。
「アッハッハ……私は……高斗くんに……自分に勝った……アッハッハ……」
少女の足元にはたくさんの死体が転がっている。先程まではすべて生きていたのに、一瞬にして死体となったのである。
少女はようやく我に戻り、軽い深呼吸をしてから呟いた。
「危険な賭けだった。あれは一種の自爆技だったから………」
数分前に起きたことを詳しく説明しよう。
少女は、高斗との戦いで少しずつエネルギーを蓄えていた。それもエネルギーとなるのは両者の血である。彼女はそれにより、莫大なエネルギーを蓄えることに成功した。後はそれを放出するだけであった。しかし、それだけでは不確定要素が二つあった。一つは自分への被害である。大量のエネルギーを放出するのであるから、当然のように身体の負担は大きくなる。それを解決するための策が、白虎と融合し、自分への被害を最小限に抑えることであった。
しかし、ただ融合するだけでは意味がなかった。そこで利用したのが零刀である。零刀に触れたことにより、僅かな零刀の力を薄い層として身体にまとった。これで一つめの不確定要素を解決した。
二つ目は高斗を倒せるか否かである。単純といえば単純なのだが、とても彼女にとっては厄介なことであった。それを解決したのは彼女のスピードであった。あのときの高斗は澪野を感覚で捕らえようとしていたために、触覚以外からの情報をシャットアウトしていた。それにより、爆発の衝撃のスピードを澪野のスピードと勘違いしてエネルギーの塊に飛び込んでしまわせることにしたのだ。ありえない話だが、その二つは結果的に現実に起きたものであり、目の前に倒れてる高斗がその証明だ。彼の呼吸は完全に止まっている。
━━つまり………彼は死んだのだ……
澪野は高斗をじっくり見つめる。
「後は君のお兄さんだけ………それで鉄との約束もすべておしまい……」
澪野はくるりと回り最後に、
「サヨナラ………」
そう言い残した。
━━━サヨナラ……私の想った人よ……
彼女が空を飛ぼうとしたその時だった。
グサリ………ポタポタ……ポト……
彼女は自分のお腹に目を向けた。零刀が身体を貫いていた………
「ぐはぁっ………誰だ………」
後ろを向くと一人の少年が立っていた。
「晴哉………なんで……あな……たはっ……死んだはず……」
ゆっくりと晴哉は歩いてきた。しかも、彼の身体は傷一つなかった。
「何故だ!」
「………君と同じ………鉄の影響さ…」
晴哉は落ちていた高斗の新風丸を拾って続けた。
「僕は鉄にある力をもらった。それは、『自分を殺した相手が死ぬまで生き返る』という力さ」
「嘘だ!そんなこと……」
「君は知ってるはずだよ………」
澪野は抵抗を止めた………
「結局みんな死ぬのかな………」
「それはないと思うな………だって……」
━━━神風高斗は…………
━━━いつだってそうじゃないか………
「晴哉………お願い………」
「そうだな………僕たちはここでリタイアだ………後は任せたよ………」
晴哉は澪野と共にこの世から存在を消した……