澪野VS高斗
「高斗くんは………やっぱりそうなんだよね……いつも先を見ている……だから……」
━━━私は君を殺さなくてはならない……
澪野は四つん這いになった。
「私は獣だ………そしてこれはリアルではない……これは幻想だ。そしてゲームである………」
澪野の歯は、牙のように鋭くなり、装備していたクローは本物の爪のようになっていた。まさに白虎そのものになっていた。
「ワダ………シワ………キサマ………ヲ……ゴロス………」
「澪野………君はそこまで………」
澪野のスピードは格段にあがっていた。その姿は肉眼で捕らえることは常人では出来ない。それは高斗にも言えることだ。彼でさえ、彼女の姿ははっきり捕らえられない。
「ぐっ…………それでも!」
高斗は見えない澪野を感覚で捕らえようとした。しかし、当然のように捕らえることは容易ではなかった。澪野にもデメリットがないわけではない。このスピードのコントロールは並大抵の人間ができるものでもない。しかし、それをコントロールするのが吉良澪野という少女の凄さなのである。
━━━それは高斗と出会ってすぐのこと
その少女は彼に気持ちを抱いていた。好きとか嫌いみたいな感情でなく、興味や期待みたいな感情である。その少女は強く願った。すると、ある少年が少女の目の前に現れた。
「いい心だね………」
「あなたは………だれ………」
少女は偶然手にしていたナイフを突き付けた。
「おっと……気を悪くさせて申し訳ない。僕はこの世界で神の存在だ……」
「笑わせないで!そんな冗談…」
「嘘じゃないさ………僕には君が力を欲しているのがよくわかるよ……」
少女はナイフをおろした。そして渋りながらも少年に聞いた。
「私を………バケモノにして……あの人を止められるバケモノにして……」
少年の目が光った。
「………いい答えだ……だけど、君はあの人を止めることは出来ないかもしれない。それでもいいのかい?」
澪野と高斗。互いがぶつかり合う度に、赤い血が飛び散る。その度に澪野は笑うのであった。それは勝利の確信の笑み………
━━━そして時は満ちた………
その時それを目にしたもの達は驚愕した。
━━━しかし………
━━━それは………
━━━━この戦いの終わりを告げるものと言っても過言ではなかった……




