軸の中心
『俺は誰かと本当の友達になりたかった……』
俺は兄さんと巧みな連携で迷宮森林のモンスターを討伐していた。
「いくよ!」
「遅れるなよ………」
相手は体長7㍍の熊のようなモンスターだった。俺は、この世界でも実体化してた大剣を握り、兄は創造棒で作られた二本の長剣を扱う。
まずは、相手の右ストレート。体格のわりに素早い攻撃だった。俺は大剣で受け流し、右足に斬撃をあたえた。ふらついたが、体制を立て直され、今度は左フック。兄は余裕をもってかわし、左足に斬撃をあたえた。ふらついたところに、今度は俺が右目を斬りつけて視界を奪った。尻餅をついたそいつを兄は逃すかと言わんばかりの連撃。右足、左脇腹、右手、左肩、脳天、右肩、左手、右脇腹、左足と順に目に見えないくらいの速さで斬り続けた。
「後悔するんだな……」
俺の一言に兄が続いた。
「俺たち兄弟の………」
そして二人同時に
「信頼にな!」
俺はあの日の出来事は兄さんに聞いたものなんだ。だから事実は知らない。それ以降は自分の生き方を貫いたつもりだ。そんな俺にはたくさんの友達がいる………と俺は思っている。俺の作り話が面白いからいつも近くにいるだけなのかもしれない。だから俺は友達なんて心からは思えない………
「瑛太。ここは俺と高斗くんに任せてくれないか」
「……構わない」
「準備はいいかい?」
「………いいよ」
今度はカンガルーそっくりのモンスター。俺は新風丸を、零二は創造棒で作られたソードライフルを持ち戦った。超人的な脚力と瞬発力を利用したそのモンスターの戦い方は結構やっかいだった。
しかし、それを利用して零二のライフルで足元を狙い、体制の崩れたところを俺が斬るカウンターをすることで隙をつくることに成功。零二のソードライフルとは、ライフルを変形させることによってビームソードを作りだせる武器のこと。テレビの特撮をまねしたらしい。
隙を逃さず、俺の新風丸と零二のビームソードでモンスターの両足の筋肉を切り落とした。
最後に二人同時に、
「討伐完了」
俺はずっと孤独だったんだ。好んで孤独になっていた。でも、急に記憶がなくなったから怖くなったんだろう。そんなときに兄の凄さがあらためてわかったんだ。自分の小ささを気付かせてくれた兄を。
「次は………私がいくよ!」
澪野は創造棒でマシンガンを作り、テントウムシの集まりのようなモンスターと一人で戦った。彼女の射撃のセンスはピカイチで1匹1匹を正確に撃ち抜いていた。しかし、拡散してしまって、マシンガンでは不利だった。
「下がれ、澪野」
俺はそう叫んだ。
「無理はするな…………いくぞ!」
「は………はい!」
「イメージするんだ!お前ならできる!」
「これが………俺のイメージだぁ~~」
俺の創造棒はショットガンに変わり、澪野に援護を求めた。
「一気にいくぞ!」
このモンスターはこちらの攻撃に合わせて拡散し、また集合する習性がある。ならばそれを利用する。
「澪野!俺が拡散させるから1匹ずつ仕留めろ!」
「了解」
ショットガンはもともとこういう敵に有効で、それを逃したやつを仕留めるのに適役が澪野。そして、
「完全勝利」
だからこそこの仲間はパーティーであり、友達でありたい。俺はそう強く願っている。
迷宮森林に入って10日が経った日だった。辺りは殺気と暗雲に満ちた空気だった