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ヤンキー少女をストーキングしよう

 こんにちは、須藤王すとうきんぐです。

 前回はクラスどころか学年でもトップの人気の誇る要桃子かなめももこさんをストーキングしましたが、今回は彼女の女友達である稲船いなふねさなぎさんをストーキングしてみましょう。



 彼女も要さん同様電車通いのようですね、向きは逆ですが。

 駅からのっしのっしとやってきた稲船さんをこっそりつけまわします。

 身長は170を越えていますがかなりのスレンダー体型、多分体重は50ないのではないでしょうか?少し心配ですね。髪は金色に染めており、おまけに両耳にはピアスをつけているというガチなヤンキー少女ですが、学校へつくと教師にきちんと挨拶をします。見た目ほどヤンキーではないみたいです。

 授業中は携帯電話をいじるかゲームをするかばかりですが、授業を聞いていないというわけではないようです。俗に言う要領の良い子なのでしょう。この間の英語のテストでも、かなり高得点を取っていた気がします。

 お昼の時間になると、彼女は学食へ行きました。僕もそれについていきます。

 学力で彼女はカツカレー大盛り+唐揚げ+サラダ+プリンと豪勢に頼みます。

 彼女が痩せているのは別に無理なダイエットをしているからというわけでもないみたいです、単に太りにくい体質なのでしょうね。

「お兄ちゃん、桃子とはどこまで行ったんだ?」

「なんのこったよ、なんもねえよ」

 料理を持ってとある男の前に座り、男と会話をし始めます。男はどうやら要さんの男友達のようです。

 ん、稲船さん今お兄ちゃんと発言しましたね、この2人は兄妹なのでしょうか。

 全然似てませんね、男の方は多分身長150もないのではないでしょうか。妹に身長を全て奪われた感じですね、何だか同情してしまいます。



 午後は体育の授業があるので、ジャージに着替えてグラウンドへ。

 僕達4組の生徒は5組と合同で体育の授業を行います。

 今日の授業はサッカーです。

「それじゃあ2人組を作って、パスの練習だ」

 体育教師が無情にもそんな事をいいます。

 実は僕も要さん同様に友達と言える人間が一人しかいないのです。

 おまけにその友達は病弱な子で、今日も風邪で学校を休んでいます。

 ストーキング対象である稲船さんと組もうと考えましたが、彼女はすぐに要さんとペアを組みました。

 困ったなあ、誰か一緒に組んでくれる人探さないと…とサッカーボールを持ってうろうろしていると、

「あ、あの、私と、組んでいただけません?」

 女の子に声をかけられました。同じクラスの愛顔さんです。

 大正時代にいそうなお嬢様って感じがしてそこそこ可愛いのだけど、僕はちょっと不気味な気がするんですよね。何ででしょうか?

 それでも彼女の誘いを断る理由など僕にはありません。

「うん、いいよ」

 僕は彼女と少し離れて、サッカーボールを彼女に向かって蹴ります。

 その後何回か彼女とパスをします。何だか愛顔さん、顔が赤い。

 風邪をひいているのかな?それとも、実は僕の事が好きだったりして。

 なんてね、僕みたいな存在感のない男を好きになるような人間なんていないって。



 その後男女分かれてサッカーの試合をすることに。

 まずは4組男子対5組男子。存在感のない僕は、奇襲してボールを奪います。

 しかしボールを奪って誰かにパスをしようとしても気づいてもらえないんですけどね。

 何だか悲しくなったのでそのまま敵のゴールに突っ込んでシュートを決めました。

 何で僕はここまで存在感がないのでしょうね?



 続いて4組女子対5組女子。

 さて、いかにも運動神経の良さそうな稲船さんがどんな動きをするか注目です。

 ホイッスルが鳴ると同時に辺りを縦横無尽に駆け巡り、あ、ばてた。

 そんなに走るのが得意というわけではないみたいです。

 しかし身長の高さで技術をカバー、要さんが「ひぇあい!」と目を瞑りながら出したパスを、

「ふはは!喰らえ、オーバーヘッドキぎゃあ!」

 稲船さんは宙に舞ってオーバーヘッドキックをしようとするも見事に失敗、顔面にボールをぶちあてて、地面に鈍い音を立ててドサッと落ちます。

 彼女のお兄さんによって保健室へと運ばれていくのを見守りながら、ヤンキー少女という彼女のイメージがどんどん崩れていきます。



 体育の授業も終わって、帰りの会の途中に教室に稲船さんは戻ってきました。

 そして放課後、彼女が学校を出るのを僕はつきまといます。

 要さんの時と同様に、彼女がどこで降りるかを確認し、切符を買って駅のホームへ。

 どうも稲船さん、ニヤニヤしていますね。

 電車が来ました。待ってましたとばかりに彼女は車両に入って行って、その中にいた男と嬉しそうに会話をし始めます。

 どうやら彼氏持ちみたいですね、まあヤンキーだし彼氏くらいいるよね、というのは偏見でしょうか。

 そもそも彼女がヤンキーだと僕は認めたくないのですが。

 二人の会話を邪魔するつもりはありません、隣の車両からひっそりとそれを見守ります。

 ふと視線を感じた僕が振り向くと、同じ車両に愛顔さんが座っていて、こちらを見ています。

 こちらを見ていたのがバレたと思ったのか、わざとらしく持っていた本を読み始めます。

 まずいな、隣の車両を覗く怪しい人間だと思われているのかもしれない。

 しかし愛顔さんは不思議な子だ、僕の存在感の無さが通用していない気がする。

 まあ今は彼女の事よりも稲船さんのことだ。稲船さんと彼氏が駅で降りたのを確認し、僕も降りて二人を追跡します。



 稲船さんは彼氏に自分がいかに高校でヤンキーとして活躍しているかを武勇伝をして話しています。

 今日もサッカーでハットトリックしたぜ!と言っていますが勿論それは嘘です。

 彼氏も嘘だと気づいているのか苦笑いしています。

 やがて別れ道で彼氏と別れ、しゅんとしながら彼女は自分の家へ。僕もそれについていきます。

 彼女の家は田舎の平屋。今回も彼女の部屋を拝見してみましょう。

 電気のついた彼女の部屋を確認して、こっそり中を窺います。

 ヤンキー物の漫画がたくさんありますが、それと同時に少女漫画もいっぱいありますね。

「はぁ…いつになったら黒須は俺のハジメテを奪ってくれるんだろう」

 彼女はベッドに体育座りになって、少女漫画を読みながらそんなことを呟きはじめました。

 どうやら彼女は処女のようです。意外ですね。

 しかしこれで確定しました、彼女は見た目はヤンキーですが中身は繊細な乙女なのです。

 これ以上ストーキングして彼女を怖がらせるのも悪いので、撤収することにしましょう。僕は自分のアパートへと戻ります。そういえば最近隣の部屋に誰かが越してきたみたいなんだよね、どんな人なんだろう?


 ◆ ◆ ◆


 ああ!今日は須藤様とお話ができましたわ!サッカーで二人組になってパスを回せましたわ!

 そして須藤様はサッカーの試合で大活躍なさいました。なんとかっこよいのでしょう、益々惚れましたわ。

 それにしても、今日は須藤様、よりにもよって下品なヤンキー風情をストーキングするなんて。

 あんな下品な女のどこがいいのでしょうか?

 どうせあんな女、中古に決まってますわ。

 その点私は、いつでも須藤様にハジメテを捧げるつもりですのに。

 もやもやしながらも、私は須藤様と一緒にアパートへ戻り、自分の部屋で聞き耳を立てます。

「さて、古本屋で漫画でも読んでくるかな」

 須藤様はそう独り言をおっしゃった後、部屋を出て行かれたようです。

 恐らく帰ってくるのは2時間くらい後でしょう。

 私は部屋を出て、隣にある須藤様の部屋のロックを開けます。暗証番号なんてばればれですわ。

 須藤様の部屋に入った私は、まず食品類を物色。

 まあ、カップラーメンばかりではありませんの。これでは健康によろしくないですわ。

 こっそりと健康にいいサプリなどを置いておきますね。

 そして私は須藤様のベッドへダイブ。ああ、須藤様の香りがしますわ。

 布団の上で枕を抱えて須藤様の匂いをたっぷり堪能。

 さて、名残惜しいですが今日はそろそろ部屋に戻りましょう。

 淑女たるもの、何事も程々にね。

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