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お気に入り小説6

義姉の婚約者に恋をしたら、鏡に殺される未来を映されました。

作者: ユミヨシ
掲載日:2026/11/08

ルリーナはある朝、鏡を見ていて、ハっと気が付いた。


「このままじゃ私は殺される?」


何故、そう思ったのか解らない。鏡の中に自分の末路が浮かび上がったそんな気がした。


ルリーナ・ベルク公爵令嬢15歳。


父が市井で食堂に勤めていた母を気まぐれに手をつけて産ませた娘だ。


二年前に母の再婚と共に、このベルク公爵家に引き取られた。

前妻の公爵夫人が亡くなったからだ。


再婚したとはいえ、母は市井で暮らしていた女。ただただ、着飾って公爵夫人としての仕事なんて出来なくて。


17歳の前妻の娘のエルディシアが、王立学園に通いながら、屋敷の事等を仕切っていた。


前妻である公爵夫人は身体が弱い人だったらしい。

母は公爵家に迎え入れられて、舞い上がり、素敵なドレスや宝石を買いあさった。

父が喜んで与えたからだ。


そしてルリーナは恋をした。


義姉の婚約者であるアルド・カイデ公爵令息である。

金髪碧眼の彼はとても美しくて。


義姉に会いに来た帰りに声をかけたのだ。


「私、ルリーナ・ベルクと申します。母の再婚でこの家に引き取られました。アルド様、とても美しいですね」


思わず、あまりのアルドの美しさに褒めてしまうルリーナ。


アルドは微笑んで、


「褒めてくれて有難う。ルリーナか。とても可愛らしい令嬢だね」


そう言われて嬉しかった。

アルドの事が大好きになった。


でも、義姉の婚約者。親しくしてはいけない。そう解っているけれども。

好きな気持ちが抑えられなくて。


王立学園で学年が二つ上で、クラスも違うのに、わざわざアルドの所へ会いに行った。


休み時間、他の男子生徒達に混じって、楽しそうに話をするアルド。

青い瞳にキラキラ光る金の髪が美しくて。


ルリーナは、教室の扉からその姿に見惚れた。


義姉のエルディシアがこちらにやってきて、睨みつけて来た。


「貴方の教室はここではないわ。何の用でこちらにきたのかしら」


「なんでもありませんわ。お義姉様」


「そう。それなら自分の教室に戻りなさい」


もっとアルドの姿を見ていたかった。

とても綺麗だったから。


もっとアルド様と親しくなりたいわ。

アルド様が私の婚約者だったらよかったのに。


涙が零れる。

だから、アルドに接近して、親しくなったら、もしかしたら、婚約者が私になるかもしれない。


義姉は冷たい女だ。

市井生まれの自分を馬鹿にする。


だから、アルドを盗ってやろう、そう思った。



そんな事を思っていたとある日の朝、鏡を見ていたら、自分の末路が見えた。


桃色の花のついた紅茶のカップ。

アルドと共に紅茶を飲んだら、急に息が苦しくなって、血を吐き出して、そのまま倒れた。


そして自分は死ぬ。

紅茶に毒が入っていたのだろう。


その運命に戦慄した。


誰が自分を殺したのだろう。

義姉?アルドを盗ったから?


未来の自分は親し気にアルドと共に紅茶を飲もうとしていた。

アルドに接近して、仲良くなったのだろう。


アルド様の事は好き。

見ているだけで胸がときめく。

この夢の事を母に話してみることにした。


母は指に宝石を嵌めながら、一言。


「そうねぇ。さすがにエルディシア様の婚約者を盗るのはまずいんじゃない?多少の私の贅沢は目をつぶってくれているけど。だってこの宝石だって贅沢っていってもエルディシア様の着けている指輪とか首飾りとか比べたら安物よーー。エルディシア様を立てないと。貴族っていうのは怖いものなの。そこをうまく解って生きないとね」


だなんて呑気に言われた。


「お母さんっ。娘が殺されようとしているのよ。それなのにっ」


「だったらエルディシア様を敬いなさい。仲良くなりなさい。それからアルドっていうエルディシア様の婚約者から手を引きなさい」


「でも、私、アルド様の事が好きなのっ」


「好きでも人の物を盗ってはいけないわ。そうでしょう?ルリーナ」


母の言う通りだと思った。

義姉の物を盗ろうとしたから、殺された。それを理解した。

そして鏡で見た幻の通り、このままでは自分は殺される。


だから、アルドに接近するのをやめよう。そう思った。



義姉エルディシアの部屋をノックした。


「どうぞ。あら、珍しいわね。貴女がわたくしの部屋に来るだなんて」


思い切り床に頭を擦り付けて土下座した。


「申し訳ございませんでした。二度と、アルド様には近づきません。だからお許し下さい。私は心を入れ替えます。お義姉様の為に生きます。だからどうかっ」


必死に頭を下げた。


死にたくない。そしてふと義姉の棚にある紅茶のカップを見てしまった。


薄桃色の花が咲いている可愛らしいカップ。


鏡の中で見た幻で、このカップに毒入りの紅茶を注がれて出されたのだ。


幻の中の自分は言ったのだ。


「今日のカップは綺麗な色のカップねぇ。薄桃色で花がついているわ」


嬉しそうにそう言って、毒入りの紅茶を飲み干した。

ああ、そんな死に方したくない。


エルディシアは微笑んで、


「あの鏡、貴女が辿る未来を映したのだけれども、反省したようで良かったわ」


「お義姉様が。あの鏡を私の部屋に?」


「そうね。このまま、わたくしが貴女を許しておくと思って?父は甘いわ。わたくしがカイデ公爵家に嫁がなくて、どうするのよ。貴女が嫁ぐ事をカイデ公爵は許していない。だから、わたくしが貴女を毒殺してと頼んだら、きっちりやってくれたでしょう。それが貴族というものよ」


「申し訳ございませんでしたっ」


ルリーナは怖かった。

これが公爵家のやり方なのだ。


アルドの美しさに浮かれて、恋心を持って、接近した自分が馬鹿だと心から思った。


「どうか、お義姉様。私を奴隷のように思ってこき使って下さいっ。一生、お仕えします。お義姉様の言う事を何でも聞きます」


「そう。だったら、これから我が公爵家の令嬢らしく、しっかりと教育を受けて貰おうかしら。アルドの事は諦めて貰うわ。彼がわたくしには必要なの。浮気をするような男でもカイデ公爵夫人の座は魅力的だわ」


そして義姉は笑ったのだ。


「あまりにも浮気が酷いようなら、わたくしにも考えが……あの男は愚かだから、どうとでも出来るわね。愚かな所も含めて愛しいのだけれども」


ぞっとした。

ルリーナは義姉に二度と逆らわない。そう思えた。




ルリーナは必死に勉強した。

義姉の機嫌を取って、いつも頭を下げて。


母は気ままだった。

父に宝石やドレスを強請って、のんびり過ごしていた。


「私は私。エルディシア様の邪魔にならなければいいのよ」


エルディシアも母には関心がないようで好きにさせていた。



一年過ぎて、エルディシア18歳。ルリーナが16歳になった頃。


とある日、エルディシアが、


「大分、礼儀が身についてきたようね。どう?執事の孫で、カイル・レトス男爵令息っていう男がいるのよ。彼と婚約をしたらどうかしら」


義姉が婚約話を持って来た事が驚いた。


エルディシアは扇を手にして、笑って、


「貴女の礼儀では、高位貴族の妻は無理ね。レトス男爵家の妻なら貴女にも務まるでしょう。

いい縁だと思わない?」


「はい。お義姉様の言う通りに致します」


相手がどういう人か解らない。

ただただ、義姉の言う通りにしなければ、と頷いた。



カイル・レトス男爵令息が訪ねて来た。

歳は20歳。

クマのような大男で驚いた。


「わ、私は話が下手で下手で。だからなかなか婚約者が決まらなくて。こんな素敵なお嬢様を私が貰ってしまってよろしいのですかね」


汗を拭きながら必死に、エルディシアに向かって確認を取った。


共に来た男爵夫妻も、

「本当に良い縁をご紹介頂いて」

「うちの息子は気の利いた事、一つも言えなくて」


同席していた父ベルク公爵は、


「エルディシアの決めたことですから。我が公爵家としては良い縁だと」


母も焼き菓子を摘まみながら、


「こんな娘で良ければ、いくらでも貰って下さいねぇ」


エルディシアはにこやかに、


「執事ジェイドはよく働いてくれておりますわ。ジェイドから孫に当たるカイルの事を聞いておりましてよ。ルリーナと二人きりでお話してみたら如何」



ルリーナはカイルと二人きりで、テラスでお茶を飲むことになった。



カイルは緊張した面持ちで、


「本当に可愛らしいお嬢さんだ。ルリーナ様。わ、私で良ければ。ところでルリーナ様はどのような物がお好きなのですか。私の使えるお金の範囲で何か差し上げたい」


必死にそう言うカイルの姿が、ルリーナにとって可愛らしく映った。


なんて良い人……クマのようだけれども、必死になって。


ルリーナは微笑んで、


「私は可愛らしい物が好きなの」


「では可愛らしい物を今度、差し上げましょう」


そう約束してくれた。

そして次の日、カイルは箱を持って訪ねて来た。


「貴女の為に選んだものです。気に入ってくれればよいのですが」


箱を差し出した。

箱を開けてみれば、薄桃色のカップだった。そう、自分が殺された時に使用されたあのカップとまったく同じで。


悲鳴をあげた。


「苦しい。いやっーーー。死にたくない。死にたくないのっ。

いやぁーーーーーーー」


カイルは慌てて、カップを箱にしまって、


「申し訳ないっ。誰も貴女を殺しはしないっ。だから落ち着いて」


ルリーナは涙を流しながら、


「貴方が悪いんじゃない。私が悪いのっーーー。私が義姉の物に手を出したから。私が悪いのよ」


カイルが抱き締めてくれた。


「大丈夫。大丈夫だから。私がルリーナ嬢の事を守る。ああ、でもエルディシア様を怒らせたら我が男爵家が危ないな。だったらエルディシア様に頭を下げよう。だから何があったか私に話してくれないか」


ルリーナは鏡で見た未来の件を泣きながらカイルに話をした。


カイルは頷いて、


「でも反省して、アルド様に近づくのをやめたのだろう。だったら、もう殺される事はないはずだ。だから泣かないで。カップの件は申し訳なかった。あまりにも可憐なルリーナ様にふさわしいと思った柄だったから。違う柄のカップを今度プレゼントしよう」


ルリーナは首を振り、


「このカップ、頂きます。私が二度と愚かな事をしない戒めにするわ。有難う。私の為にカップをプレゼントしてくれて」


カイルは首を振り、


「普段、使えないだろう。そうだ。一緒にカップを買いに行こう。君が欲しいカップをプレゼントしよう」


嬉しかった。カイルの心が。

この人となら幸せになれる。そう思えた。




一月過ぎた。


エルディシアがアルドと結婚した。

豪華な結婚式だった。


アルドはエルディシアの手を取り、大勢の貴族達が見守る中で、教会に入ろうとしていた。


そこへ、怪しげな男達が現れた。

変…辺境騎士団の連中だ。


金髪美男のアラフが、


「屑の美男を貰い受けに来た。アルドとやら、お前、浮気していただろう。女を泣かせる男は屑だ。我がヴォルフレッド騎士団がさらっていって教育を」


エルディシアがアラフの前に立ちはだかり、


「お待ちになって。連れ去る事は許しません。この人の浮気は承知しております」


アルドは青い顔をして、


「ちょっとした浮気だ。ちょっと伯爵家の令嬢とキスをしただけだ」


エルディシアは毅然とした態度で、


「ええ、こちらで調べはついています」


周りの貴族達はざわざわと騒ぎ出す。

でも、エルディシアは、


「わたくしにはアルドが必要です。ですから連れ去る事は許しません」


アラフと共にいたゴルディル、マルク、エダルは、驚いたようにエルディシアを見て、


「いいのか?屑の美男だぞ」

「触手で仕置きしないと」

「三日三晩の出番が」


アルドは青くなってエルディシアの後ろに隠れた。


エルディシアは、


「この男を愛しているからではないわ。愛は既にありません。でも、わたくしはカイデ公爵夫人になりたいの。この男が必要なのよ」


アラフ達をエルディシアは睨みつける。


「だから連れ去る事は許さないわ。もし、強引に連れ去ると言うのなら」


アラフは肩をすくめて、


「そこまで言われたのは初めてかも。解った。今回は見送ろう」


ゴルディルも同意した。

「そうだな。見送るしかないか」

マルクが不満そうに、

「ええええっ――見送るの?」

エダルが宥めるように、

「仕方ないだろ。公爵令嬢が望んでいない」



連中は諦めて帰っていった。

その様子を見て思った。


義姉は怖い。

未来を見る鏡で気づけて良かった。


隣には婚約者のカイルが手を握っていてくれる。


エルディシアとアルドの結婚式がつつがなく続けられて、

その様子を見ているルリーナは、心からこうして愛しいカイルと共にこの場にいられることを感謝するのであった。


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屑でも被害者が望んでなかったら引くことあるんですねぇ。被害者が洗脳されてたりDV被害者みたいに正常な判断が出来なくて、騎士団行きを拒否する場合はどうなるんだろ。 未来を見る鏡のおかげでマリーシアとル…
エルディシアってピヨピヨ精霊とか女神レティナの縁者だったりする?
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