12話、愛称と数式
ラサマ村を出て廃坑へ向かう道は予想してた通り、少し険しいし思ったより遠い。
この笛、どんな音が鳴るんだろ?
「ちょっと笛、吹いてみていい?」
「うん、いいよ」
ぴぃぃぃぃぃ!
俺より先にミアリスさんが気になってたのか首紐に下げた笛を少し触りながら聞いてきた後に吹いた甲高いような独特の音。俺も自分の笛を取り出して軽く吹いてみる。小さいのに意外と音が通る。俺のはミアリスさんよりかは甲高くはないがわかりやすい音だ
ただ、一発でわかるくらいにわかりやすい
「やっぱ、音が違うな」
「そうね。これで合流できるってことよね」
「だね、お互い覚えてたらだけど」
なんて笑い飛ばしたが実際、笛は全然悪くない。なんか笛のルールを後で決めとこうかな
夕方になったからまずは周囲に何もいないか確認しながら火おこしや野宿の準備だな、ミアリスさんと協力して火を起こし固形の保存食を溶かしてスープにした
うん、保存食をあと一個入れたくなるくらいには少し薄いかも?けど苦にはならない味だ
食べ終わり焚き火を囲む、ミアリスさんは火をボーっと見てる
んー、、スープに何が足せないかなぁ、、
「もし、近くに動物が居たらスープに生肉をいれてみる?」
「良いかもだけど湖や川付近なら大歓迎よ」
あー、たしかに水問題とか考えたくないもんな。持ち運ぶの面倒だし
「たしかに、あと近くにこの木みたいな水を蓄える木があったら良いんだけどね」
木を指さしてるとミアがそうね、って言った後に意を決したようにこちらを見てきた!
「あーきしゃ、、」
意を決した顔で、噛んだだと?
ミアリスさんの顔がまた赤くなってきたな
「あぁ!もう!」
俺を呼ぼうとして噛んでキレるマッチポンプが始まった!?どういう事だ!?なんて思ってたら
「愛称で呼んでいいかな!?」
愛称!?呼ばれた事ないから反応に困る
「いいけど、いきなりどうして」
これしかでなかった
「わかった、アキって呼んで良い?アーキしゃ、、さん付けでずっと呼ぼうとして噛むの!夜も練習したけど無理だったからこの呼び方ならと思ってかんがえたの!」
噛みながら怒るミアリスさん、多分感情が嵐になってるんだろうなぁ
「私もつけて良いから、お願い」
懇願する女の子に言われたら断る理由はないな、わかったって言うか
「ちょっと噛むの可愛かったのに」
考えより先に言葉が出た、やらかした
「ここまで嬉しくない可愛いは初めてよ?」
ほらー!ちょっと、さん付けで噛むのを楽しもうかとか考えた俺何してくれてんの?
ミアリスさんがちょっとむすってしたじゃん
でもミアリスさんを略称で呼ぶのか、なんて呼ぶかな
ミアさん、ミリさん、アリスさん、リスさん、アリさん
ダメだ最初以外ロクな名前じゃねぇ
ミアだな、、初めて人を略語で呼ぶかも
「わかった、じゃあ、、ミアってどう?呼びやすいし」
お、ミアって呼ばれて満更じゃないご様子、あれ?左目が金色に?銀に戻った
「よろしくね、アキ」
「よろしく、ミア」
アキと言われたのは初めてだったなら気恥ずかしいな
「私、明日の朝は早く起きて少し魔法の練習するね」
「わかった、そのタイミングで俺も寝るから移動は昼にするよ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
ふう、すぐに寝れるの凄いな。
ミアは正面で寝転んだ
周囲の確認しとくか周りに人はいない、ミアの寝顔確認
動物の確認、草の擦り音無し、ミアの寝顔可愛い
周囲に気配消したやつ、居ない、光が見えない、ミアの足がでてて寒そう
マントを脱いで足にかける、下にひいた布とサンドさせて虫が来ないようにする
ミア寝れてる、ミア寝顔可愛い、ミアの周りに虫がいないか確認、無し
、、、、
、、、、、?
何で周囲警戒にミアを凝視みたいなのを俺は入れてるの?気持ち悪すぎない?
朝早く、目覚めたミアと軽く挨拶をして魔法の練習を始めたのを見て意識が飛んだ
美味しい匂いに釣られて起きたら、まさかのミアが昨日とは違うスープを作ってた
「寝起きに優しいスープだ」
「これあたりだね」
「おいしい」
何気なくおいしいって言ってしまった。
ミアもこの味に満更でもないのかニコニコしてるのを見つつ、俺も気にいったスープを味わう
食べながらふと思った
「なぁ、魔法ってどう出すんだ?」
それを聞いたミアが自分の器のスープをスプーンで掬い飲みながら考える
「魔法は数式を覚えて使うの」
「数式?」
「ええ、初級の火の魔法でさえ特定の数式さえわかれば出せるわ」
指先に火が揺らめく程度の火をミアが出しながら語る
「ただ、素質がない人は無理だし。数式が分かっても出せない時は出せないでスランプなんてざらよ」
なるほど、だから練習が要るのか
「今のミアもスランプなのか」
「ええ、前は上級魔法も使えてたんだけどね」
「努力、無駄になっちゃった」
なぜか、影を落としたように言ってきたミアに俺は思わず言葉が強くなる
「無駄じゃないだろ」
「なぜ言い切れるの?」
おいお前、今から言う言葉は誰に対して言う言葉だ?
「スランプってことは必ず戻るはずだし努力がなかったら俺とここに居ない」
よく言うよな、自分は努力しないで全てを失った癖に。他人には言えるのか?
今度は俺が自傷気味に笑ってしまう、自分で自分を嘲笑ってるようだ
少なくてもミアに向けた笑いじゃない
「何それ」
ミアが呆れたような笑いをする、俺もミアに合わせたような釣られ笑いしてしまった
何か変われるかな、努力をするミアに見合える男なのか?
そんな疑問を考えるのをやめて、野宿の片付けをした
出発できる準備ができたからすぐに廃坑に向かうと明るい内に着いた。人の出入りはない。足跡も痕跡もない
魔物の痕跡も、無さそうだな。あの獣道は小動物クラスだ
「調査って言っても見て回るだけみたいだな」
依頼書をみながらミアは何かを痛感してるようだ
「…思ったより地味ね」
うん、わかる地味なんだよ斥候って
「斥候向けの依頼だからね」
「じゃあ私は練習してても良い?」
「人はいなさそうだし、何かあったら笛を吹く」
「わかった」
ミアリスさんが少し離れた場所で火の玉を手に留めたりする練習を始めたようだ。人がいたら練習の気配でもう出てくるはず。
俺は廃坑の周辺を黙々と調査する。
人も魔物も問題なし。報告書に書く内容はこれだけか。依頼として成立するのか心配になるレベルだが報酬は出るらしいから良しとしよう。
ミアが見えないというか場所がわからないから笛を鳴らす
ぴぃぃぃぃぃ!
どこまで、届くんだろ
ぴぃぃぃぃ!
少ししてミアの笛の声が聞こえたからそちらに向かう
うわ!木から落ちた水が顔についた!
最悪だ、、まぁ飲み水にできる木だからいいが
バッグの布を出すのがめんどくさくて裾を上げ顔を拭いた
腹に力を入れて服が伸びないように拭いたら気配を感じたからその方向に構えたら笛を握って顔を真っ赤にしたミアがいた。左目が金色になってる
なんで真っ赤?
「どうした?」
「いや、なんでもない」
深く聞かないで別にいいか、なんかいいことでもあったんだろ
ミアもしてたが笛を握ってたし、この笛凄いな
ミアはいつもの表情になったが、笛を見ている
「この笛、すごいね」
「だな、買ってよかった」
本当に買ってよかったしミアの笛の音を覚えたよ
しかし、どこにいてもわかるな、仮パーティのはずなのに何故かそんな気がしないな。
悪い気はしない、むしろ、嬉しい、、のかな?
帰り道に日が傾いてきたので開けた場所を見つけて野宿の準備をする。俺が火起こしをしていたらミアが自然に手伝い始めた。だんだん役割が自然に決まってきた気がする。言わなくても動くのはやりやすいな。
夕食を終えて焚き火を囲む。静かな夜だ。
おや?今回は前に生肉を入れるアイデアを干し肉と保存スープで試したのかな?匂いが良くなってる
「適度に塩味があって美味しい」
「それはよかった」
短かったけど、ミアは口角が上がってるし目が金色だった
「おやすみ」
「おやすみ」
俺はまた暖を撮りながら夜を過ごすが、また足が寒そうだからマントをかぶせて朝を待つ
んー、、、寝顔を見るのが習慣になりそうで怖いな
ただ、ミアに何があったか知りたいが、まぁ下手に聞くより話の流れで聞けたら聞くぐらいで良いか。なっても聞ける自信はないが
あと虫は寄せ付けんぞ、こっちにもくるな
寝起きのミアと交代で寝る
まどろむように目だけ起きたらミアが安定して出せるようになってきたみたいで少しガッツポーズしてる姿が見えた
「…少し出るようになった気がする」
「さっきより安定してたね」
思わず言った言葉にミアが驚いたように反応してきた
「…見てたの?」
「今起きた」
事実だからしかたない
それきり恥ずかしいのか沈黙になった。
何も無いのにミアが少し笑った気がした。すぐに前を向いて歩き続ける。
俺もそれ以上何も言わなかった。
夕方に村に着いたけど、、
二人で過ごすって、何か良いな




