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第28話 『碧き雷光』

 何とか、アルベーに到着した。

 もう一生分魔物と戦ったような気さえする。

 種類にして七種類くらいの魔物と戦ったが、どの魔物も簡単には倒せなかった。


 ちょっと嬉しかったのは、またミノタウロスの肉が食えたことだ。

 あれ、食べれば食べるほど癖になる味してるんだよな。

 スルメみたいなものだろうか。

 味がって意味ではなく、やみつきになるという意味で。


 シャルロッテから魔術を教わろうかと思ったが、大事なことを忘れていた。


 彼女は、雷聖級魔術師だ。

 一方で、俺の得意魔術は火魔術。

 火魔術だけでいうならば、俺の方が階級が上である。


 俺は、雷魔術に関しては中級である。

 どうしようかと悩んでいたが、俺は決心した。

 なにも、火魔術にこだわる必要はない。

 だから、シャルロッテから雷魔術を習ってみよう、と。


 火魔術もかっこいいが、雷魔術も十分男心をくすぐられる。

 雷聖級魔術なんて、使えたらかっこよすぎやしないか。


 というわけで、俺はこの五日間、アルベーを目指しながら雷魔術の習得に励んだ。

 当然、そう簡単に習得は出来ない。

 全くの進歩もないまま目的地に到着してしまった。


「まずは宿を探すぞ」

「宿を借りられるほどのお金はあるの?」

「私に任せてください。

 両親が、餞別として旅費をくれましたから」

「どのくらいもらったんですか?」

「えっと……。

 翡翠銭(ひすいせん)30枚くらいですね」 

 

 それがどのくらいの価値なのかは分からない。

 エリーゼも首をかしげている。

 流石の王女も、他の大陸の通貨はまでは知らないか。


「翡翠銭は、天大陸の通貨の中では二番目に価値の高い硬貨だ。

 白金銭(はっきんせん)、翡翠銭、鉄銭、石銭の順に、価値が決まっている」

 

 解説助かるぜ、ランスロット。

 やはり、大陸ごとに通貨が違うのだろうか。

 いや、グレイス王国は独自の通貨を使っていたな。


 とりあえずこの大陸は、全ての町や村で共通の通貨を使っているということだろう。


 その後、俺たちは無事に宿を見つけることができた。

 男2、女2のちょうどいい構成だから、その通りに分かれようとしたところ、エリーゼが何故か駄々をこね始めた。


「あたしはベルと一緒じゃないと落ち着かないの!」

「で、ですがエリーゼ……。

 ちょうどシャルロッテさんという女性の仲間がいるんですから、ここは男女別で分かれましょうよ」

「ベルとがいいの!」

「うぐっ……」


 たまに見せるこのデレがたまらなく可愛いところではあるが……。

 この状況、一番可哀想なのはシャルロッテだ。

 まるで、自分と一緒になるのが嫌だと言われているかのような気持ちになっていることだろう。


 分かる、分かるぞ。

 俺も経験があるからな。


「私は構いませんよ。

 ランスロットさん変なことをしてくるとは思えませんし」

「無論だ」

「でも……」

「ベルはあたしと一緒になるのが嫌なのね……。

 もういいわ……もう一部屋借りて一人で寝泊まりするわ」


 どうして急にメンヘラ化するんだよ。

 そんでその金はどこから出ると思ってるんだ。


 まあ、シャルロッテとランスロットがいいっていうなら……。


「分かりました。

 僕とエリーゼ、シャルロッテとランスロットさんのペアで部屋を借りましょう」


 仕方のない子だわ、ほんと。


---


「というわけで、明日からどのように生活していくかを話し合いたいと思います」


 俺とエリーゼの部屋を会場として、会議が始まった。

 どうやら、この会議の進行役は俺であるらしい。


「早速だが、俺から一つ提案がある」

「どうぞ、ランスロットさん」

「この町には、冒険者ギルドがある――」

「冒険者をやるってことよね!?」


 言いかけたところに、見事にエリーゼが食いついた。

 さっきの駄々をこねる姿といい、エリーゼは精神年齢がかなり低いように思える。

 俺より年上だが、妹のような目でみてしまう。


「賛成です。

 ここで少しでもお金を稼いで、今後の足しにした方が後々楽だと思いますし。

 戦力的にも、十分でしょう」

「ついに……ついに夢が叶うのね!」


 エリーゼは目をキラキラさせて俺の目を見た。

 急に手を掴まれたからドキッとした。

 昔から冒険者に憧れはあったみたいだし、嬉しいだろうな。


 俺としても、冒険者に興味はあった。

 そう思うと、何だかワクワクしてきたな。


「冒険者としての報酬は、受けた依頼の難易度によって変動する。

 A級の依頼を受ければ、それに見合った報酬が得られるが、パーティのランクと同じかその一つ上の難易度の依頼しか受けることができない。

 駆け出しの冒険者パーティはD級から始まるから、D級とC級の依頼しか受けられないということだ」

「D級の依頼って、どんなものなんですか?」

「主に迷子になったペットの捜索依頼や、失くし物の捜索だ」

「何それ! つまんないわ!」


 確かに、それは面白くないな。

 でも、金を稼ぐためにはやらなきゃいけないもんな……。


 労働って、大変なんだな。

 無職だったから辛さが分からなかったが、今回初めて身をもって体感することになりそうだ。


「C級から、討伐依頼が受けられるようになる。

 D級パーティでもC級の依頼なら受けられるから、最初はそれでコツコツ金を稼ぐしかないな」

「C級なんて、下から二番目じゃない。

 簡単な任務が多いんじゃないの?」

「難易度としては低く設定されていても、この辺りの魔物はかなり強い。

 それに、この辺りではない遠い場所に依頼地が設定されている場合もあるから、一概に簡単であるとは言い切れない」


 忘れていた。

 この大陸の魔物は、かなり手強い。

 なんでも、魔大陸の魔物の次に危険な魔物が多いと言われるくらいだからな。


「それって、遠征任務とかもあるってことですか?」

「ああ。歩いて数週間かかる場所の任務もある」


 なるべく早く帰りたいから、とっとと金を稼いでデュシス大陸に渡りたい。

 ゆっくり旅をする予定ではいるが、あまりのんびりしすぎてもよくないだろう。

 ロトアとルドルフの安否も気掛かりだし。


 遠征任務は一気に稼げるかもしれないが、そこまで行って帰る時間がネックだな。

 それなら、近場の任務をコツコツこなして稼ぐ方が合理的だと言えるだろう。


 今は冒険者として大成するという目標なんかはないから、

 とにかく早いところランクを上げて、より難易度の高い依頼を受けられるようにしたいところだ。


 戦力的には、何の問題もないはず。

 この五日間でたくさんの魔物と対峙してきたが、時間がかかりながらも問題なく撃破することができた。

 初めてにしては割と上手く連携がとれているし、ある程度のランクまでは上がるだろう。

 というか、早く上がってもらわないと困る。


 最悪何か月かかけてでもいいが、できるだけ、できるだけ早くな。


「効率的に稼ぐ方法はあるのでしょうか。

 ベルやエリーゼとしても早いところ故郷に帰りたいはずですし、

 あまり長居するわけにもいきません」

「パーティランクよりも高い難易度の依頼を受けて成果をあげれば、より多くの報酬が得られる」

「じゃあ、それで行きましょ!」


 エリーゼは両手をパンと合わせた。

 冒険者パーティを組んで金を稼ぎ、稼いだ金で何か月か生活する。

 十分な金が集まったら、再びデュシス大陸目指して出発。


 このプランで、俺たちの今後の展望は固まった。


---


 翌朝。

 エリーゼは誰よりも早く起きて、身支度を始めた。


「ちょっと!

 着替えるからあっち向くか部屋出るかしなさいよ!」

「すみません」


 最近、エリーゼはこういうところに厳しくなった。

 同じ部屋で同時に着替えてたりしてたのに、何だか寂しい。


 まあ、エリーゼももう12歳だしな。

 そういうのが恥ずかしくなるお年頃になったのだろう。

 娘が成長したお父さんの気持ちが分かったような気がする。

 俺の頬を、ツーッと涙が伝っていく……。


 俺は部屋を出ずに、体だけ後ろを向ける。


 チラッ。


「なっ……! 何でこっち見んのよ!」

「ごはぁっ!」


 綺麗な腹パンを食らった……!

 もう殴られ慣れてしまった自分がいるのが怖い。

 

「最近、胸も大きくなってきたから、見せるのは恥ずかしいのよ。

 男の人って大きいのが好きだってよく聞くけど、あたしのはまだ小さいから……」


 それは偏見だなぁ。

 俺は大きくても小さくてもいけるユーティリティプレイヤーだ。

 エリーゼの胸も最近膨らんできているから、割とそっちに目が行ってしまう。


 男の性なんだ。

 ご容赦ください。


「も、もっと大きくなったら見せてあげるわよ」

「ありがとうございます。言質、とりましたからね」


 何だと!?

 うおおおおおお!

 早く育ってくれないかなぁぁー!


「……やっぱなし!」

「女に二言はねェ!」

「やだったらやだ! 殺すわよ!」

「ぶぇっ!」


 今度は頬にビンタを食らった。

 親父にもぶたれたことないのに!


「朝から騒がしいな」

「おはようございます、二人とも」


 もみくちゃになっているところに、ランスロットとシャルロッテが起きてきた。

 今起きてきた感じではなく、もう外出する準備を整えて部屋を出てきた。


「準備ができ次第、冒険者ギルドに向かう。

 そう遠くはないが、早めに行って目ぼしい依頼があれば受けたい」

「分かりました。急いで準備します」


 そういって、数十分で支度を済ませた。

 支度とはいっても、歯を磨いて顔を洗うくらいだが。

 俺は戦う時に何の武器も持たないから、準備は楽な方だ。


 槍術使いのランスロット、

 剣士のエリーゼ、

 後衛型魔術師のシャルロッテ、

 そして前衛型魔術師の俺。


 前衛3に後衛1。

 バランス的にはどうなのだろうか。

 単純な戦闘力的には事足りているが、一般的なパーティでいうとやはりバランスは悪いのかも。

 

 まあ、一般常識にとらわれるのもよくないよな。

 とりあえず金を稼げればそれでいいし。


 全員準備ができたところで、俺たちは宿を出た。





「冒険者ギルドへようこそ。

 新規のご登録ですか?」

「ああ」


 少し歩いて、ギルドに着いた。

 結構年季の入った建物だと思ったが、中は意外と綺麗だ。


 見渡すと、アニメやゲームで死ぬほど見たような光景が広がっている。

 本当にこんな感じなんだな。

 奥に酒場もあるし、本格的に冒険者になるという実感がわいてきた。


「登録料をいただきますが、よろしいでしょうか?」

「これで足りるかしら?」

「鉄銭五枚で大丈夫ですよ」


 良心的でよかった。

 てか、登録料なんて取られるのか。

 色々いちゃもんつける輩とかいるだろうし、ギルドの受付嬢って大変そうだよな。


「確かに、頂戴致しました。

 それでは、パーティ名を決めていただきます。

 こちらですぐに決めることが難しいようでしたら、

 あちらのテーブルにて話し合ったのち、こちらにご提示ください」

「ゆっくり考えます」

「はい、どうぞ」


 パーティ名か。

 何も考えていなかった。

 昨日のうちに話し合っておくべきだったかもな。


 金を作るためとはいっても、やっぱりやるからにはかっこいいパーティ名がいい。


「皆さん、案はありますか?」

「どうせならかっこいい名前がいいわ」

「私は、こういう名前をつけることに対するセンスはないので……」

「適当な名前でいいだろう」


 だから案を求めてるんだっつの!

 さりげなく俺に委ねようって魂胆が透け透けなんだわ!


 しかし、うーむ……。

 長年培ってきた厨二チックなワードを何とか組み合わせたらいい感じになったりしないだろうか。


 まず、皆の容姿をモチーフに考えてみよう。


 俺は金髪にエメラルドグリーン色の瞳。

 エリーゼは、真っ赤な髪に真っ赤な瞳。

 シャルロッテは、緑髪に碧い瞳。

 そしてランスロットは、銀髪に碧い瞳だ。

 奇しくも、ランスロットとシャルロッテの瞳の色はほとんど同じ色である。


 ここから、何か連想できないだろうか。


 シャルロッテの碧い瞳、そして得意魔術は雷……。


 ――ピンときた。


「……『碧き雷光』とか、どうでしょうか」

「かっこいいわ!」

「由来はどういったものなんですか?」

「なんとなく、各々の瞳の色と得意属性を思い浮かべた結果、こうなりました」

「青色に、雷……。

 何かこれ、全部私の要素じゃないですか?」


 あ、バレた。


「いいじゃないですか。

 ってことで、パーティリーダーはシャルロッテに決定します」

「ちょちょ、ちょっと待ってくださ――」

「決定!」


 俺はテーブルをバンと叩き、立ち上がった。


 俺たちのパーティ名は、『碧き雷光』。

 ついでに、ほとんどシャルロッテモチーフということで、パーティリーダーはシャルロッテに決まった。


 いよいよ、始まるのだ。

 俺たちの、冒険者生活が。


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