6話
試合を終えた夕方。三人は駅へ向かう道を歩いていた。汗は乾き、少し疲れた顔に夕陽が差し込む。
「今日の相手、ジャンプの滞空時間が長かったな」翔真が口火を切る。
「重力加速度は一定なのに、体の使い方で違って見えるんだ」健斗が理屈を重ねる。
美咲は笑って「見てる方はただ『すごい』って思うだけだよ」と返した。
――
駅前を抜けると、古い城跡の石垣が見えた。
「わっ、城跡だ!」美咲が急に身を乗り出す。
「石垣の角度は崩れにくいように設計されてる」健斗が解説する。
「でも落城の可能性はゼロじゃない」翔真が淡々と返す。
美咲は笑って「理屈より雰囲気を楽しもうよ」と言った。
さらに歩くと寺の山門が現れた。
「資料館も近くにあるみたい。寄りたいな」美咲が目を輝かせる。
しかし閉館時間を過ぎていて門は閉じられていた。
「次は昼間に来よう」健斗が肩をすくめる。
「確率的に、開いてる時間に来られるはずだ」翔真が続ける。
美咲は少し残念そうに笑った。
――
電車に乗り込むと、車窓から街の灯りが流れていく。
「負けても楽しかったな」健斗がぽつり。
「次は勝率を上げよう」翔真が応じる。
美咲は何も言わず、二人の声を聞きながら窓の外を見ていた。
ふと三人の視線が合い、同時に笑い声が弾けた。
電車のざわめきに混じって、その笑いは青春の音のように響いていた。




