3話
昼休みの学食は、ざわめきと食器の音で満ちていた。三人は並んで席を取り、トレーを置く。カレーライス、ラーメン、サンドイッチ。選んだものはバラバラだが、会話はすぐにひとつにまとまる。
「このカレー、冷め方が面白いんだよ」
健斗がスプーンを持ちながら言う。
「また物理?」美咲が笑う。
「そう。熱伝導率が違うから、ルーとご飯で温度の落ち方が変わるんだ」
「いや、それより食べる順番を最適化すれば満足度が上がる」
翔真が真顔で言う。
「順番?」美咲が首をかしげる。
「例えば、最初に副菜を食べて、最後にメインを残すと幸福度が高い。確率的にね」
「……二人ともほんと変わってる」美咲は笑って肩をすくめる。
――
「でもさ、戦国武将も食事の順番にこだわったんじゃないかな」
健斗がふと口にする。
「兵糧の分配を確率的に考えたはずだ」翔真も乗る。
美咲は少しだけ微笑んで、箸を置いた。
「武将は兵の士気を上げるために食事を工夫したのよ。戦の前には必ず炊き出しをして、兵を安心させたの」
「やっぱり詳しい!」二人が同時に声を上げる。
美咲は照れ笑いをして、また普通に食事を続けた。
――
食後も会話は止まらない。
健斗が「世界で一番長い川はどこか」と言えば、翔真が「素数は無限にある」と応じる。
美咲は「へえ、面白いね」と笑って聞いている。
「でも、川の長さって昔の人はどう測ったんだろうな」健斗がぽつりと言う。
「確率的に推定したんじゃない?」翔真が返す。
美咲は少し考えてから、柔らかく言った。
「古代の人は旅の記録を残していたの。距離を歩数で数えたり、日数で測ったりしてね」
二人は「なるほど!」と声を合わせ、また雑学合戦に戻っていった。
――
学食のざわめきの中で、三人の声はひときわ楽しげに響いていた。
バスケの時はバスケトリビア、日常では雑学トリビア。
その掛け合いが、三人の青春を鮮やかに彩っていた。




