11話
合同練習試合の悔しさは、まだ三人の胸に残っていた。体育館に入ると、冷たい床の匂いとボールの弾む音が広がり、自然と背筋が伸びる。
「次は絶対勝ちたい!」健斗が声を張り上げる。握ったボールを胸に押し当て、目は真剣そのものだった。
「俺たちのスタイルを作ろう」翔真が静かに言う。ノートを片手に、戦術の図を走り書きしては消す。冷静な声の奥に、焦りと決意が混じっていた。
「うん、もっと走って、もっと楽しもう!」美咲が笑った。汗を拭うタオルを肩に掛け、二人を見つめる瞳は明るく揺れていた。
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練習は一気に熱を帯びた。健斗は何度も同じ角度からシュートを繰り返す。ボールがリングに当たるたび、体育館に乾いた音が響いた。
「この角度なら決まる!」健斗が叫び、次の瞬間、ボールは綺麗にネットを揺らした。
翔真はパスのタイミングを研究し、秒単位で動きを調整する。
「タイミングを合わせろ!」と声を飛ばし、ボールを受けた美咲が走り込む。
「ナイス!」美咲が笑顔で応える。彼女の声は、疲れた空気を一瞬で明るくした。
汗が床に落ち、シューズがきしむ。呼吸は荒く、胸が焼けるように熱い。それでも三人は止まらなかった。理屈やトリビアではなく、ただ夢中でバスケに打ち込む時間が続いた。
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練習の合間、健斗が息を切らしながら笑った。
「なあ、俺たち、ちょっと強くなったんじゃないか?」
翔真はタオルで額を拭いながら、珍しく笑みを見せた。
「数字じゃなくても、手応えはある」
美咲は水筒を握りしめ、頷いた。
「うん、試合が楽しみだね」
三人は再びコートに立ち、声を重ねた。
「走れ!」
「回せ!」
「打て!」
その声は体育館に響き渡り、夜の空気を震わせた。猛特訓の日々は、確かに三人を変えていた。




