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第83話 公爵家に染み込む毒

 ガスパールはチェルレッティ公爵家で、順調に立ち位置を築いていた。カロリーナに取り入る為には、カロリーナ付きの侍女であるミアナ、カロリーナ付きの侍女候補であるブランキーニャと親しくなる必要があった。


 仮にも公爵令嬢の為、幼児といえどもあまり近付かせてはもらえなかったからだ。

 アドリアーノの件で周囲の同情を買うことが出来たガスパールは、ミアナとブランキーニャとはかなり親しくなっていた。


 ミアナはガスパールを可哀想で可愛らしい子どもとして。ブランキーニャは自分より年下の守るべき子どもとして。ガスパールを扱ってくれた。


 面倒ではあったが、2人といる時間を出来るだけ作るようにした。そうすることでカロリーナと接触する機会をうかがっていた。


 読み書きや計算が出来るところをミアナに見せると、家令からはまだ年齢的に早いと言われもしたが、非凡な子どもとして、将来学園に入る為の勉強に備える為、家庭教師をつけてもらえることになった。


 アドリアーノがいなくなったことで、侍従補佐の枠があいてしまった為、急遽ガスパールをその為に育てることが決まったのだ。


 その結果この世界の人間は、公爵家に勤める人間であっても、読み書きや計算の出来ない従者も多くいることがわかった。


 そういう人間は下級の下働きとして働くことになる。上級の従者に当たる人々は、下級貴族の出や、商人の家の出が多く、なにがしかの学園を卒業しているのだと教わった。


 転生者特典で読み書きの出来るガスパールは、日本語で書いたつもりの内容が、この世界の文字として相手に見えていることを知った。


 学園の試験は、大抵が読み書き計算と、地理と歴史とのことで、読み書きと計算はまったく問題がないと言われた。元日本人からすれば、計算などは小学校レベルの算数なのだから当然の話だった。


 その為、地理と歴史を中心に習うことになったのだが、元々勉強が得意ではなかったガスパールは、すっかり授業に飽きていた。その時、雑談のひとつとして家庭教師が告げる。


「洗礼で魔法のスキルをいただけたら、魔法科に入ることになりますが、魔法科に入る場合は、入学試験とは比較にならないほどの、難しい計算が出来るようになる必要があります。もしも魔法スキルだった場合は、高度な計算式の授業も組み込まれるようになりますよ。」


 とのことだった。ガスパールは思わず、ウエッと内心下を出した。数学など、大の苦手だ。それに計算式など知らなくとも、自分は魔法を使うことが出来る。


 だから、コイツは何を言っているんだ、と首を傾げた。

「なぜ、計算式がわからないと、魔法が使えないの?」

 幼い子どもを装いつつ尋ねる。


「魔法は魔法陣を構築する際に、様々な計算式を利用するのです。それを理解するためには、高度な計算が理解出来ないと、使えるようにならないということですな。もちろん簡単な魔法なら、魔力だけを使用するのでも使うことが出来ます。」


「簡単な魔法って、たとえば?」

「チェルレッティ公爵家は、明かりや調理場の火など、さまざまなものに魔力を込めた魔石を使用しています。私設騎士団の持つ武器にはめ込むのもそうですね。それは魔力だけの単純回路で、簡単な魔法、つまり身体強化や、火をつけるだけの魔法です。そこには計算式を使用しません。」


 果たして自分の聖魔法は、簡単な単純回路なのだろうか、とガスパールは考える。純粋に魔力が高いことで、簡単な魔法でも威力が出ているのだという可能性もある。


 本来この体は、神の使徒に与えられる筈だったもので、一般の人間よりステータスが高い可能性があるからだ。そこは魔法の授業を受けてみるまでわからないだろうと思う。


 だがもしも単純な火力のみの威力であった場合、計算式を理解出来たら、今よりも強い魔法が使える可能性もある。その時が楽しみだ、とガスパールはニヤリとした。


 ガスパールが飽き飽きしながら家庭教師の授業を頑張っていると、ついにカロリーナと接触する機会がやってきた。


 既にこの年齢で教わることは教えきったとして、年齢が上のカロリーナとブランキーニャと共に、家庭教師の授業が受けられることになったのだ。


「カロリーナさま、今日からよろしくおねがいします。」

 ガスパールは最大限の愛らしい表情を作って、カロリーナにペコっと頭を下げた。


「一緒に授業を受けられて嬉しいわ、ガスパール。いなくなってしまったアドリアーノの分も、従者になれるよう頑張ってね。」

 カロリーナがそう言って微笑む。


 人を操る実験は、アドリアーノで最初のテストを済ませてからも、次々にチェルレッティ公爵家の人間で進んでいた。


 お礼だと言っては、定期的にクッキーを作る許可を得て、それを公爵家の人々に配って歩いた。あまり大量に入れると、アドリアーノのように一気におかしくなってしまう。


 肝心の公爵家の人々に食べさせることこそ叶わなかったが、少しずつ。少しずつ。貴重な砂糖を使ったお菓子を喜ぶ従者たちの体内に、アドリアーノの毒が染み込んでいった。



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