第8話 日記の中身は
【デイリーミッションクリア
報酬:スキル・空中浮遊付与】
と声と文字が現れる。無事今日もデイリーミッションをこなすことが出来た。
早速空中浮遊のスキルを使ってみることにする。初めは地面に体重がかからない感覚に慣れなかったが、すぐに自由に飛び回れるようになった。
『ははっ!楽しいや!』
「ギィッ!」
ギィも顔ナシの子も、嬉しそうに僕と一緒に飛び回っている。
まだ自由に動き回れない体からすると、空中浮遊を使ったほうが、思った速度で移動することが出来る。
使っているところを人に見られるわけにはいかないが、これで窓から外を見ることが出来るようになった。窓にはうっすらと黒い髪と青い目の赤ん坊が映っていた。
まだ明るいのではっきりとは見えないが、これが現在の自分の見た目なのだろう。可愛らしい顔をしていると思えた。
既に首はすわっているから、まっすぐ外を見ることが出来た。迷路のようになった生け垣と、何かを模して作ったような刈り込みをされた木のオブジェ。美しい花々。
とにかく広い、いや広すぎる庭だった。今までベビーベッドと天井しか見ることのデイなかったシルヴィオは、ここが王城だというのが初めて納得出来た気がした。
なにせ門すら近くに見えないのだから。これを維持しているということは、この国はかなり裕福だということに他ならないだろう。
シルヴィオはひとしきり庭を眺めると、国王の過去の日記を読んでみることにした。
これが恐らく自分の出生の秘密に関わっているのだろうと思えたからだ。
<XXXX年X月X日。
成人してしばらく経つというのに、王太子選定の儀の日程が決まらない。父上はやはり弟を後継者にするつもりのようだ。なぜだ。
弟が成人するのを待っているのだとしか思えない。なぜだ。長男は私だ。しかも奴は妾腹。なんの後ろ盾も持たぬ、平民の踊り子の息子。
奴を王子として迎えることすら腹立たしいのに、私ではなく、弟を王位にすえると?
母親同様、あまたの異性をベッドに引き込み、私の乳母の娘までも手にかけられた。
様子がおかしいと思い問いただすと、彼女は泣いていた。
恥ずかしげもなく、何人もの愛人を囲っているくせに、更に侍女たちにまで手を出すような男を、私の代わりに王太子に……?
それなのに、父上がかわいがっているのは、私や母上ではなく、弟とその母親。
こんなことが許せるものか。あれが国王になどなったら、この国は終わりだ。>
──初っ端からかなり不穏な文字が書かれている。どうやらシルヴィオが生まれる前に御家騒動があったようだ。
<XXXX年X月X日。
父上から直々に、弟を王太子にしようと考えていると言われた。頭が割られたような気分だった。なぜだ。どうして私を王太子にしないのか。
私が優秀だからだと?
なぜ優秀な者が王太子に選ばれない?
優秀な人間が支えてやれば、弟でも国王そしてやっていけるとのことだった。
父上はどれだけ弟が可愛いのか。
弟を傍で支えてやれと仰るのか?冗談じゃない。あんな男、誰が支えるものか!>
<XXXX年X月X日。
弟が正式に王太子選定の儀を迎えることと決まった。私はそれを聞いて、思わず弟の胸ぐらを掴んでいた。なぜだ!なぜ貴様が選ばれるのだ!
母上と私のなにがお前たちよりも劣るというのだ!
弟は静かに私を見つめていた。哀れな者を見るような目で。その目をみた途端、私は弟を殴りつけていた。
弟は私などよりもずっと優秀な人間だ。極端な話し、国王が私でなくとも、弟でなければいいとすら思っている。
あれは王の器ではない。あれを王位につかせてはならない。父上には、なぜ、それがわからないのだ!>
<XXXX年X月X日。
私は時期国王に害をなした人物として、塔に閉じ込められた。上位貴族や王族を牢屋に入れるわけにはいかないので、罪を犯した人間を閉じ込めておく為の場所だ。
過ごしやすい環境だと言うだけで、結局は軟禁だ。自由にどこかに行くことも、誰かと連絡を取ることも容易いことではない。
日記は持ち込むことが出来たが、母上への連絡すらままならない。
この国はいったいどうなってしまうというのだろうか。>
──王族も色々あるらしい。シルヴィオはだがふと、この日記が自分の父親の物であることを思い出す。そしてわからなかった。
弟が国を継ぎ、兄が塔という名の牢獄のような場所に軟禁されたのであれば、自分の父親はその弟だと思われるが、なぜそれならば兄の日記を保存していたのだろうか?と。そう訝しがりながら日記を読み進めていく。
<XXXX年X月X日。
私の前に魔族を名乗る人物が現れた。いったいどこから来たのか。塔は外から鍵をかけられていて、中から開けることが出来ない。
誰かが招き入れない限り、入ることは出来ないというのに。
だが人ならざる存在であるのはひと目でわかった。全身の毛穴が開いて、毛が一瞬で逆だった。本能でわかる。これは私の命を一瞬で奪うことの出来る存在なのだと。
そいつは私にこう言った。
取引をしませんか?と。
あなたが本来の立場を取り戻す為に、必要な力をお貸しいたしますよ、と。
私は気付けば、その人ならざる者の手を取っていた。そして、そいつの言葉に耳を傾けていたのだった。>
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