第74話 兄さまに秘密の一部を打ち明けよう
「こんばんわ。遅くにすみません。」
「キャッ!?」
予想外にシルヴィオが現れたことに驚いて、シュレア姫が悲鳴をあげてのけぞる。
「驚かしてしまってごめんなさい。どうしても今日のうちにお話しておきたいことがあって……。」
「そうですか、どうぞ。」
シュレア姫が向かいの椅子をすすめてくれる。シルヴィオはお茶を入れてくれようとするシュレア姫に、すぐに帰るので、と遠慮した。
「……それで、お話とは?」
「はい。僕の兄さまと、僕の専属侍女をここに連れて来たいと思っています。」
「ラヴェール王子と侍女を、ですか?」
「侍女はシュレア姫の呪いをとく為です。上級聖水を直接、刻印に塗り込む必要がありますので……。」
「直接……塗り込む……。」
その言葉を聞いて、シュレア姫は恥ずかしそうに頬を染めてうつむいた。
「僕の侍女は少し呪いに詳しくて。シュレア姫の刻印について質問したら、そのやり方で呪いをとけるとのことでした。」
シルヴィオも釣られて赤面しながらそう答える。シュレア姫と2人、暫くうつむきながら、なんと話したものか戸惑っていた。
「兄さまには、僕と一緒にシュレア姫のお茶友だちになってもらえたらなって。植物の世話の為でしか外に出られないのであれば、話し相手もいないでしょう?」
「そうですね……。侍女が世話に来ますが、ずっとそばにいるわけではないので……。」
身の回りの世話と言っても、こんな蜘蛛の巣が張ったような部屋だ。最低限のことしかしてもらえていないのだろう。
「もしもラヴェール王子にもいらしていただけたなら、嬉しく思いますわ。」
シュレア姫はそう言って微笑んだ。
シルヴィオとしては、呪いをとく場面に立ち会わせて、シュレア姫の現状を伝えるつもりでいた。実母から呪い殺されようとしている幼い姫。きっとなにがしか、シュレア姫の為になることを考えてくれる筈だ。
「呪いをとく場面には、兄さまにも立ち会ってもらうつもりでいます。死ぬ呪いですからね、万が一のことがあった場合に、兄さまにいてもらえるのは心強いです。」
「そう……ですね……。」
死ぬ呪い、と言われて、シュレア姫は目線を落とした。改めて、祖国から切られたということを気に病んでいるのだろう。
「早ければ、明日にでも兄さまを連れてきます。今日はこれで失礼しますね。おやすみなさい、シュレア姫。」
「ギィッ!」
ギィと共に手を振って、微笑みながら手を振り返すシュレア姫を見ながら影の中へと潜り、シルヴィオは自室に戻って就寝した。
次の日、シルヴィオはラヴェール王子に、内緒の話があるので人払いをして欲しいと、昼食の席で頼んだ。
ラヴェール王子は少し困惑しながらも、ゼーに離れているよう指示をした。ゼーが何やら小箱を取り出して机の上へと置いた。
お辞儀をしたゼーが遠くに離れて行った後で、ラヴェール王子は小箱の蓋を開けて、中のボタンを押した。
「兄さま、それは?」
「これは消音の魔道具だ。これを使うと周囲に声が聞こえなくなるんだ。王族には必須のアイテムだな。いずれシルヴィオももらえるようになると思うよ。」
そんな便利なものがあるのか、とシルヴィオは思った。距離が離れるだけでもじゅうぶんな気がしたが、王族ともなると、重要な話はそう簡単に出来るものでもないらしい。
「それで、内緒の話ってなんだい?」
「……僕のスキルについて、です。」
「スキル?」
「スキルは本来、洗礼を受ける年齢じゃないと使えないものだと聞きました。でも、まれにそれ以前に使える人間もいるのだと。」
「そうだね、授業でそう習ったな。」
「……僕、実はもう、スキルが使えるのです。」
「なんだって?スキルが使える?」
「はい。」
「いったいどんなスキルなの?」
「影に潜り込んで、他の部屋との間を行き来することの出来るスキルです。」
「なんてことだ……それを国王さまや王妃さまには?」
ラヴェール王子は両親を、父親、母親としてでなく、国王と王妃と呼んだ。
つまりこのことは、国に影響を与える大きな出来事として捉えているということだ。
「いえ、まだ……。兄さまに話すのが初めてです。」
「どう伝えたものだろう……正直そんなスキルは聞いたことがないよ。王家の影だって持っていないと思う。そんなスキルがあったら、どこでも侵入し放題だ。」
「だと思います。」
実際にはギィの力によるものだが、ギィはシルヴィオのスキルで生み出したものなので、結果的にはシルヴィオのスキルと同じだ。
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