第72話 専属従者の秘密をさぐれ
王太子選定だけは冷徹に、寵愛を得たことを優先してくるかも知れない。本来王侯貴族は政略結婚しかしないもの。個人の感情よりも、国益や家の為に感情を殺した判断をしてくる可能性のほうが、むしろ高いと言えた。
それに話さなかったからと言って、損があるとも思えない。シルヴィオが5歳になり、正式に王族としてセフィーラさまに挨拶に行くことになった際に、その時初めて祝福を与えてもらったふりをすればよいのだ。
自分に滅多に与えないという寵愛を与えているくらいなのだから、セフィーラさまにもお願いすれば、ふりをするのに協力してもらえるかも知れないとシルヴィオは考えた。
そう考えながら食事をとっていると、ゼーがジッと瞬きをせずに自分を見つめていることに気がついた。……なんだろう?とシルヴィオは困惑しつつ、目線が合わないようにそっとそらした。
「……失礼、シルヴィオさま。よろしいでしょうか?御髪にクモの巣がついております。はらってもよろしいでしょうか?」
と言いつつ、ゼーが微笑んだ。
シルヴィオは思わず頭にバッと手をやってしまう。あまり清潔に保たれているとは言えなかった、シュレア姫の居室には、どこから入り込んだのか、クモの巣が作られていた。
それがいつの間にか髪についていたのだろうということに思い至ったからだ。
「頭にクモの巣?シルヴィオはいつの間に、僕の知らないところでそんなやんちゃな遊びをしていたんだい?」
家庭教師の授業に遅れて現れたシルヴィオが、来る前にどこかでクモの巣を引っ掛けるような、探検遊びをしていたのだろうと、ラヴェール王子は考えているようだった。
「え、えへへ……。」
シルヴィオはそう言って誤魔化すしかなかった。シュレア姫のところに一緒に遊びに行こうと、今日の昼食の際にラヴェール王子を誘おうと思っていたシルヴィオだったが、ゼーがいるのではそれも出来ない。
ラヴェール王子の専属従者とは言え、ゼーは王家の影だ。王家の影は見聞きしたことを王家の影の間で共有し、必要とあらば国王や王妃に報告してしまう。
もちろん今も、どこか見えないところで、シルヴィオの護衛をする為に見守ってくれている筈だが、こんなにも至近距離にいられては、シルヴィオ付きの影にはともかく、ゼーに聞こえないように話すというのは難しい。
護衛が見張りをたて、シュレア姫付きの侍女しか出入りを許されていない塔の中に、まだ鑑定も済んでいないシルヴィオが、そこに出入りできるスキルを持っているというのは、知られてあまり特になることはない。
それこそ、精霊女王セフィーラさまの加護と同様に、特別で異質なことだからだ。
ラヴェール王子以外には、今は知られないようにしたい。
だが、ゼーがこれから専属従者としてラヴェール王子につきっきりになるのであれば、話すタイミングはなかなかないように思う。
ゼーに許可を出して、頭についたクモの巣を払ってもらいながら、どうにかしてゼーがいないタイミングに、ラヴェール王子と話が出来ないものか、考えを巡らせていた。
次の日のデイリーミッションは、予想外の内容だった。
【デイリーミッション。
ジョゼマリアの性別の秘密をさぐれ。
報酬:シュレア姫に呪いをかけた人間の名前。】
というものだった。ジョゼマリアの性別の秘密を探れというのは、どういうことだろうか。シルヴィオは首をひねった。
簡単に考えるのであれば、シルヴィオもラヴェール王子も、ジョゼマリアは男の子だと思っていたが、そうではない可能性があるということだ。
あれだけの美少女に見えるゼーのことだ。女の子だったとしても不思議ではない。だがそのことを、王家の影や国王たちは知っているのだろうか。
……ひょっとして知らないからこその、ジョゼマリアの性別の秘密ではないのか。
──だとしたらなぜ男の子のふりを?
シルヴィオは考えてみたが、その理由はゼー自身にしかわからないことなのかも知れなかった。ひとまず、シュレア姫の為に、ゼーの性別を確認する必要があった。
だがひとくちに性別を確認と言っても、本人に聞いたところで、恐らく秘密なのだから答えてくれる筈もないだろう。
……となると答えはひとつ。裸を確認するしかない。問題はゼーが日頃どこで暮らしているかだ。恐らく従者たちが使用する、大浴場などは使用することはないだろうから、個人の部屋を与えられて、そこで身を清めている可能性が高い。
「専属従者ともなると、専用の個室を与えられたりなんかもするんですか?護衛を兼ねているのであれば、兄さまに近い部屋を与えられることもありますよね?」
家庭教師の授業の休憩時間である昼休みに、シルヴィオはそれとなく、ラヴェール王子に探りを入れた。
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