第71話 専属従者は王家の影
あとは明日現れるであろうデイリーミッションで、シュレア姫に呪いをかけた相手の名前を聞き出すだけだ。
シーラがその名前を念じつつ、シュレア姫の胸元の刻印に、上級聖水を塗り込めば、シュレア姫の呪いをとくことが出来る。
今日は家庭教師の授業がある日だったので、唯一会いに来られるお客と一緒にお茶をしたそうなシュレア姫に、申し訳なく思いつつもその場を失礼させてもらい、家庭教師の授業にラヴェール王子と共に出た。
昼休憩の時間になり、ラヴェール王子とともに昼食を取ろうとした時だった。見慣れない少年が現れて、恭しくお辞儀をした。年の頃はシュレア王女くらいだろうか。
「シルヴィオ、紹介するよ。僕の専属従者が決まったんだ。」
「専属従者……ですか?」
「うん。精霊女王セフィーラさまへの挨拶が済むとね、王族は専属従者を付けてもらえることになっているんだよ。」
「専属従者なら、兄さま、もともといますよね?僕にも専属侍女がいますし……。」
シーラもシャイナも、シルヴィオの専属従者ということになっているのだ。
「それとは少し違うかな。彼らは身の回りの世話をするだけだろう?」
「はい、まあそうですね?」
「この場合の専属従者は将来の右腕候補となる存在のことだね。政務に関連することは、将来の宰相候補なりとも話すことになるんだけど、彼らとの間に入って、調整してくれる役割を持つんだ。」
ようするに、秘書のようなものらしい。
「ジョゼマリアだ。僕はゼーと呼んでいるよ。これからは僕と共に行動することになるから、よろしくね、シルヴィオ。」
「わかりました。よろしく、ゼー。」
「よろしくお願いいたします。シルヴィオ王子殿下。」
ジョゼマリアは、この世界では珍しい、黒髪に黒い目をしていた。元日本人のシルヴィオからすると、妙に親近感を覚える。
ちなみに女性のような名前に聞こえるが、この国ではジョゼマリアだと男の子の名前で、マリアジョゼだと女の子の名前になる。
実際、ショートカットの美少女だと思わせるような、中性的な美少年だ。前世の日本であれば、かなり女の子から人気が出るだろうな、とシルヴィオは思った。
王族の秘書になるくらいだから、かなりのいいところの御子息かと思いきや、
「彼は王家の影の1人なんだよ。」
とラヴェール王子が言ってきた。
「王家の影、ですか?初めて見ます。影って表に出てくることもあるのですね。」
以前シルヴィオにもついていると説明は受けたが、紹介を受けたことはなかった。
「そうだね。大半は表に姿を現さずに、諜報活動なりをすることになるけれど、護衛なんかを兼ねる場合は、こうして表に出て、役職を得ることもあるんだよ。」
それもこれも、自身が精霊女王であるセフィーラさまから、加護をたまわったことが原因なのだとラヴェール王子が言った。
通常、5歳の時にセフィーラさまに挨拶をしたことで、もらえるものは祝福。過去には寵愛を得た王族もいたらしいが、通常は祝福が基本らしい。
この国に住む精霊女王として、最低限のものを与えているに過ぎない。だから加護を得たラヴェール王子は特別であるとして、護衛を兼ねて王家の影を右腕として与えられることになったのだそうだ。
こうなると、シルヴィオとしては、自分が精霊女王セフィーラさまから、寵愛を得たなどということは、家族や周囲に話すべきか悩んでしまう。
万が一にも次男の自分のほうが、王太子にふさわしい、なんて言われてしまうわけにはいかないよなあ、と思う。
実際、祝福、加護、寵愛の順で、精霊から与えられる力は大きいとのこと。しかも精霊女王ともなれば、その力は絶大だ。
過去に殆ど得た王族がいないという、寵愛を得たことが知られれば、シルヴィオを王太子に推す派閥も現れることだろう。
そうなれば、早々に国が割れる。
“魔王の器”として生まれ、その運命に抗う立場のシルヴィオとしては、正直それどころではないし、万が一体を奪われてしまった場合、王太子が魔王になってしまうのだ。
王子の立場を捨てて生きることは難しくとも、せめて第二王子のままでいられるよう、寵愛の件は隠したほうが良さそうだった。
いずれ折を見て、家族にだけは話したほうがいいかも知れないが、家族がどう反応するかはまだわからない。
特にあの、考えの読めない国王が曲者だ。子どもたちとも殆ど関わろうとはしない。
デイリーミッションで手に入れた日記を読む限りは、本当は愛情深い人のようにも思うが、それは恋人相手に限定されているという可能性もあった。
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