第7話 国王の過去の日記
シーラはどうやら王宮の人たちに人気らしかった。シーラの顔を見に、今まで顔を出したこともない兵士たちまでが、シルヴィオの部屋を訪ねてくる。
まああれだけの美人なのだから、人間に見えている限り、男の人は寄って来るだろうな、とシルヴィオは思った。
それにしても、シーラの食事はどうしているのだろうかとシルヴィオは想像した。吸血鬼なのだから、寄って来た人間たちから血をいただいているのかも知れないが、前世と同じであれば、吸血鬼に吸われた人間は吸血鬼になるのではないだろうか、とも。
知らない間に城中が吸血鬼になっていたりしないだろうかと、シルヴィオは少し不安になるのだった。
だがそんなこともないようで、表面上は皆普通の人間のように見える。しばらくドキドキしながら見守っていたが、とりあえずその心配はしなくてよさそうだと胸を撫で下ろした。
すると、
【デイリーミッション
出生の秘密を暴け・その2。
国王の過去の日記を手に入れよ。
報酬:スキル・アイテムボックス∞】
と声と文字が現れた。どうやらその1、その2とあるように、出生の秘密を暴くデイリーミッションはいくつかあるらしい。
前回書斎の鍵を手に入れさせたということは、書斎にその日記があるとみて間違いないだろう。
人々が寝静まった頃に、またギィに頼むことにして、いつものように昼寝をしたり、乳を飲ませてもらったりして過ごした。
夜になり、そろそろ動かなくてはデイリーミッションが時間切れになってしまうかも知れない時間に、シルヴィオはギィに声をかけた。
『ギィ。国王さまの過去の日記を手に入れてきて。』
「ギイッ!」
ギィは敬礼のようなポーズを取ると、影の中へと沈んで行った。しばらくして、日記を手に戻って来るも、日記には鍵がかけられていて、読むことが出来なかった。
これは明日また、鍵を手に入れるクエストがあるかも知れないなとシルヴィオは思う。クエストのことを考えれば、今日は鍵を探させないほうがいいかも知れなかった。
【デイリーミッションクリア
報酬:スキル・アイテムボックス∞】
と声と文字が現れる。無事今日もデイリーミッションをこなすことが出来た。
過去の日記ということだから、そんなにすぐに日記を探すということもないだろう。
シルヴィオは早速日記をアイテムボックス∞にしまった。
これで少なくとも、探されたところで見つけられることはないだろう。シルヴィオはそう安心してお昼寝を開始した。
何度か眠りについて、たびたび起こされて授乳をし、オムツを替えてもらって、を繰り返していると、あっという間に次の日になっていた。
赤ん坊は猫のように1日の大半を寝て過ごすと言うが、それにしてもほぼ起きている時間がないので、1日が経つのが早かった。
そして今日も、
【デイリーミッション
出生の秘密を暴け・その3。
国王の過去の日記の鍵を手に入れよ。
報酬:スキル・空中浮遊】
と、想像通り鍵を手に入れるクエストが現れた。早速ギィにお願いして、鍵を探してもらうが、暫くして、ギィ……と、困惑したように鳴きながらギィが戻って来た。
どうやら場所がわからないらしい。仕方がないのでフィオレを呼び出すことにした。
「もー!なんなのよ!気軽に呼びつけないで欲しいんだけど!?」
フィオレはプリプリしながら、それでも部屋にやって来た。
『国王の過去の日記の鍵を探してくれない?ギィには見つけられなかったみたいなんだ。』
「探索魔法も使えないの?使えないのね、あんたの眷属は。」
ふん、と鼻で笑いながらも、フィオレは鍵を探しに部屋を出て行ってくれた。
だが今回はすぐに戻って来なかった。待っている間暇だな、と思ったが、赤ん坊向けの遊び道具で遊ぶ気にはならない。
そう言えば、同胞の命は1日1体眷属を生み出すことが出来るのだということを思い出す。ギィを生み出して以降、新たな眷属を生み出しはしなかったが、1日1体ということであれば、毎日生み出しておいたほうがいいかも知れないな、と考える。
シーラという脅威が近くにいることを考えると、自分を守ってくれるであろう眷属は、1体でも多いほうがいい。
ステータス画面の同胞の命の部分を触ると、空中に黒いモヤの塊のようなものが生まれ、くるくると回転し始めた。その塊が回転を止めると、ギィと同じサイズの、だが顔も何もなく、のっぺらぼうのような新たな眷族が生み出された。
失敗したのかと思ったが、ギィと仲良く手を取り合っているところをみると、そうでもないらしい。明日また新たな眷族を生み出したら、また違うタイプが生まれるのかも知れないな、と考えた。
しばらくしてフィオレが戻って来た。
「見つかったけど、入れないわ。場所を教えるから、その眷族を貸しなさいよ。」
と腕組みしてふんぞり返りながら言ってくる。
「ギイ、ついて行って。」
「ギィッ。」
ギィがフィオレについて外へ出て行った。
しばらくすると影から出て来て、得意げにギィッ!と鳴きながら、鍵を差し出して来た。
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