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第68話 シュレア姫とのお茶会

「えっ!?ギィが見えるのですか?」

「ギィちゃんとおっしゃるのですか?とっても可愛らしいですわね。」

「ギィッ!ギィッ!」


 可愛らしいと言われてギィが喜んでいる。シルヴィオとシーラたち以外に姿を見られることはなかったし、シーラたち、特にレルグのギィに対する扱いは乱暴だ。


 シルヴィオの眷属とはいえ、自分たちと同じ従者の扱いなのだろう。シルヴィオの分身というわけではないので、扱いを雑にしても構わないと思っているようだ。


 レルグなどは、ギィと顔が似ているとシャイナにからかわれるたびに、別に似てないよなあ?と言いながら、ギィの口を左右に引っ張っていじめたりもしてくるので、ギィはレルグのことがちょっと苦手なようだ。


 シュレア姫はギィを抱いて、まるでぬいぐるみか子猫のように、ナデナデしながらかわいがっている。ギィはとろけるように目を細めて、シュレア姫の胸に手を添えて、撫でられるがままになっていた。


 ちょっとギィが羨ましいと思ってしまうシルヴィオだった。

 シュレア姫が紅茶を入れてくれたが、カップのデザインは揃いのものではなかった。


 恐らくここに客など呼ぶことを想定していない為、このカップは両方ともシュレア姫だけのものなのだろう。シルヴィオはそのことに思い至って、申し訳ない気持ちになる。


「ドレスの採寸をなさっていたんですね。」

「はい、ラヴェール王子がデザイナーをこちらに呼んでくださいまして。」


 再び沈黙が訪れる。

「……あの。」

 シルヴィオが話しかけようとした時だった。


「我が国の宰相、マリバ・ルーンベルクが、王妃さまに害をなそうとしていたことを聞きました。」

 シュレア姫は悲壮感漂う表情で言う。


「お聞きになられたのですね。」

「はい、先日、侍女から。……これでわたくしは、国に帰れないことが決まりました。いつかは……と期待していた気持ちもあったのですが、もう、諦めました。」


 そう言ってさみしげに笑うシュレア姫。宰相マリバ・ルーンベルクの犯した罪により、将来留学してくる予定のジャイロ第5王子と入れ替わりで、シュレア姫を国に戻すという話が、立ち消えになってしまったのだ。


 王子とはいえ5番目のジャイロ王子より、王女のシュレア姫のほうが、嫁に出すという点において、政治的価値は高い。


 このまま何もしなければ、シュレア姫は将来、この離れの塔を出られる筈であったが、自国の宰相が余計な企みを実行したことで、ストルツォ王国はシュレア姫に対する一切の権利を手放す宣言をした。


 そうすることで賠償を最小限にしようという魂胆だった。それは生殺与奪の権利をすべてオークランド王国に握らせるということ。


 それこそ、シュレア姫を王族や貴族、極端なケースで言えば、前線の兵士たちに差し出して、好きにしてもいいということすら可能だということだ。


 野蛮な国であれば、それもありえるのだ。だがこれは国と国の取引だ。王妃の命を宰相が狙ったのだから、ストルツォ王国はそれを大義名分に再び戦火に包まれないだけ、かなりの温情措置だと言えた。


 そもそもその程度で賠償が済む筈もない。留学のていでオークランド王国にやって来て、そのまま交代で人質となる予定だったジャイロ王子も、追加の人質になる予定だと、ラヴェール王子から聞いていた。


 幼いシルヴィオには、何もすることが出来ない。意見すら出来ない。だからせめて、慰めになるかも知れないと思い、話相手になりに来たのだった。


「わたくしを心配してくださったのですか?」

 そう言って、シュレア姫が眉を下げながら微笑む。


「僕なんかが、おこがましいですけど。」

「いいえ、尋ねてきてくれる人もいない生活ですから。嬉しいですわ。温室の手入れも引き続き任せていただけることになりましたし、人質としてはかなりの高待遇だと思います。ましてやこんな事件を祖国がおこしてしまったのに、ドレスまでいただいてしまって……。」


「それは僕を守ったお礼ですから、正当な対価として受け取って下さい。それに、あの温室の花々は、シュレア姫にしか世話出来ない花も多いと聞きます。シュレア姫は立派に役目をこなしていらしゃいますよ。」


「そう言っていただけて何よりですわ。人質の生活は孤独ですが、せめてオークランド王国だったことが、救いかも知れません。」


 そう言ってシュレア姫は、ティースプーンにじゃれていたギィを撫でつつ、カップがぶつからないように持ち上げて紅茶を飲んだ。


「たまにこうして、遊びに来てもよろしいでしょうか?今度はぜひ、兄も連れて来たいのですが。あ、でもギィのことは内緒にして下さい。兄さまには見えないので。」


「ええ、喜んで。ラヴェール王子には見えないのですか?こんなに愛らしいのに。残念ですね。了解致しました。」


 そう、嬉しそうに笑うシュレア姫を、いつか堂々と陽の光の下に連れ出してあげたいと、シルヴィオは強く思うのだった。




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