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第57話 ストルツォ王国第1王女、シュレア姫

 取り調べの際、同じ子を持つ親として、ラヴェール王子とシルヴィオが死んでいたかも知れない点について、特に後悔していたメリッサが、子どもと会えるように、と王妃さま直々に進言があったからだった。


「最後に申し述べることはあるか。」

 そう尋ねた国王さまに、いいえ、とメリッサやシャクマーン辺境伯が答える中、たどたどしい口調で、お伝えしたいことがございます、と口を挟んだ者がいた。


 驚いてメリッサもシャクマーン辺境伯もローウェル騎士団長も振り返る。それはメリッサの娘、テレサだった。親たちが慌てる中、

「よいのです、申してみなさい。」


 と王妃さまが微笑みながら言った。大きなウエーブがかかった腰までの金髪の、愛らしい幼女は、しっかりとシルヴィオの目を見て、緊張しているのか、ギュッとクリームパンのような手を握りしめながらつばを飲み込んだ。


「シルヴィオさまにひとこと申し上げたいのです。おじいさまを助けて下さったと聞きました。おかあさまが死なずに済んだのも、シルヴィオさまが一生懸命だったおかげだって。本当にありがとうございました。」


 まだうまくカーテシーが出来ないのか、よろけつつお辞儀をしているテレサ。その光景に王妃さまが微笑む。


「ラヴェール、シルヴィオ、こんな場に、いつまでも子どもがいるのはよくありません。テレサ嬢を王宮の温室にでも、案内してさしあげなさい。」


「かしこまりました、母上。」

 外では王妃さまを母上と呼ぶラヴェール王子は、侍従に連れられたテレサとシルヴィオと共に、謁見の間を出て温室へと向かった。


「緊張したのではないですか?」

 テレサに温室を案内しながら、ラヴェール王子が尋ねる。


「僕らは王族だから、ああした場面にも慣れていかなくてはならないけど、普通の令嬢がああした場に呼ばれることは、基本ないことだからね。」


 まっすぐ目を見られないテレサに、そう言って微笑むラヴェール王子。

「せっかくだから、温室を見ませんか?滅多に来られる場所じゃないですよ。」


 テレサをエスコートするように、シルヴィオはその手を差し出して笑った。おずおずと手を伸ばして、テレサが手を重ねた。


 温室の中の珍しい植物や、この季節には見られない植物に案内すると、テレサは興奮したように頬を染めて見入っていた。暫く温室内を案内し、ベンチにテレサを挟んで座ると、ラヴェール王子がテレサを見つめた。


「突然のことで驚かれましたよね。お祖父さまが呪いで死にかけて、お母さまがそれを助ける為とは言え、脅されて罪に手を染め、死刑になる寸前だった。怖かったのではないですか?」


 するとテレサはポロポロと涙をこぼし、

「はい、わたし、怖かったです。おじいさまが死んじゃうんじゃないかって。おかあさまも死んじゃうんじゃないかって。……とても怖かった、です。」


 シルヴィオはハンカチをテレサに差し出した。テレサはそれで涙を拭うと、

「お礼がしたい、です。」

「お礼、ですか?」


 すると、テレサがチュッとシルヴィオの頬にキスをした。

「おじいさまもおとうさまも、私がこうするととっても喜びます。お礼、です。」


 そう言って、まだ涙の浮かんだ顔で微笑んだ。それを見たラヴェール王子が、ふふっと笑う。


「かわいらしいお友だちが出来て良かったね、シルヴィオ。」

「からかわないで下さいよ、兄さま。」


 そこに、ガサリ、と葉のこすれ合うような音がして、白いドレスを着た、背中までのプラチナブロンドの美しい少女が現れた。


 年の頃は10歳前後で、シルヴィオやラヴェール王子よりもかなり年上だ。薄紫色の目をしていて、たおやかでどこか儚げな印象だった。今まで見た中で、1番美しい女性だなとシルヴィオは思った。


 少女はきょとんとした表情で、一瞬シルヴィオとラヴェール王子を見ていたが、さっとひざまずいて最敬礼をとった。


「失礼致しました。わたくし、ストルツォ王国が第1王女、シュレアと申します。」

 と名乗った。


「あなたがシュレア姫なのですね。なぜここに?ここは王族専用の温室で、王族を伴わずに入室することは不可能な筈ですが。」

 とラヴェール王子が尋ねる。


「これはわたくしに許された、唯一の外出先なのです。この温室には、わたくしにしか世話の出来ない植物がたくさんございます。」

 敬礼したままシュレア姫が言う。


「その為ああして、警備の者と従者を伴ってにはなりますが、定期的にこちらを尋ねております。今も植物の世話の最中でございました。おいでになられているとは知らず、申し訳ございません。」


 振り返らずにシュレア姫がそう言った後ろには、確かに王宮の兵士と、侍女が立っていた。日頃王宮のどこかに幽閉されているというシュレア姫にとって、植物の世話の為の外出が、唯一心が休まる時間なのだろう。






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