第52話 証拠の集め方
「相手を呪い殺す程の呪いには、通常の呪いよりも強い触媒が必要です。この場合の触媒とは、本来呪いをかけたい人物、つまり依頼主の血や爪などです。触媒に使われた人間を特定すれば、それは証拠になりますね。」
「そんなことが出来るの!?」
「呪術師には跳ね返した呪いから、触媒を特定することは不可能でしょうが、方法はありますよ。」
「どうすればいいの!?」
「呪術は私たち魔族の魔法に近い性質を持っていますから、呪いをかけられた人間に残った、魔力の波長を追えばよいのです。魔力の使用痕跡を調べる方法があるというのは、家庭教師から習いましたか?」
「うん。でも、専用の魔道具を使用しない場合、魔法使い自身がそれを追えるのは、かなり上級の魔法を使える人じゃないと、無理だって教わったよ。」
「呪術師のスキルと比べると、魔法は使用する魔力量が多いものですが、それであっても残った魔力の痕跡をたどるのは、人間にはかなり難しいものですからね。」
「でも、呪術師ってスキルだよね?魔法スキルと違って、スキルはスタミナを使うものだから、魔力は必要ないんじゃない?」
「どんな生き物にも、大なり小なり魔力は存在します。スキルを発動させる際に、本人の魔力の痕跡が残るのです。」
「へえ⋯⋯。それは初めて知ったよ。」
「呪術師は魔力の痕跡を追えませんが、発動前であれば呪いそのものから呪術師を特定したり、触媒を追うことが出来ますね。それは魔法を使う人間には出来ないことです。」
「今は発動後だから、呪術師には追えない、でも魔力の痕跡を追える人なら追跡することが出来る、ということ?」
「そういうことですね。私でなくとも、レルグやシャイナにも可能ですよ。」
「じゃ、じゃあそれを今すぐやってもらって⋯⋯。」
「ひとつ問題があります。」
と、シーラがピシャリと言う。
「魔族の力を使って、触媒の対象者を追跡、特定したとして、どうやって証拠として提出するおつもりですか?特定した人間の証言と、能力による再現がなければ、人間界では認められないものだと聞きましたが。」
「え?つまり、特定したとしても、それを証明する為には、特定する方法を再現出来る人間が、法廷に立たないといけないってこと?法定に立つってことは、身分の証明とかも必要になってくるよね?」
「そうなりますね。まあ、法定でなく、王族や貴族の集まる前だけで再現することもあるようですが。あくまでも私の知っている人間の知識なので、国や時代によって異なる可能性もありますが。」
シーラは高位の魔族であり、かなり長生きなのだと以前自己紹介された事があるので、魔族の中でも人間の情報について詳しいのだろう。
ひょっとしたらかなり古い歴史に作られた法律の可能性もあるし、オークランド王国の法律では違うかも知れない。だが問題はそこではない。
もしも本当に証明する人間が自らの身分を証明し、証言に信憑性を持たせる必要があるということは、シーラに頼むにせよ、レルグやシャイナに頼むにせよ、魔族であることを明かしてもらう必要がある。
そんなことをすれば大騒ぎだ。オークランド王国の第2王子は、魔族と懇意にしていたと、大問題になるだろう。
「シーラもレルグたちも、今は人間の身分を手に入れているように偽装して生活をしているんだし、それでなんとかならないの?⋯⋯ならないから忠告したってこと?」
「そうですね。裁判の際は、特に高位貴族や王族が絡む場合は、証言が正しいか判定する為の、教会の道具を使用することがあると聞いています。もしもそれを使用された場合、私たちが人間だと偽っていることも、恐らくばれてしまうかと思いますよ?」
「それじゃあ駄目じゃないか⋯⋯。どうすればいいんだよ。せっかく特定する方法があるのに⋯⋯。」
シルヴィオは思わず頭を抱えた。
【なんだってあなたはそうやってすぐ、近くにいる魔族を頼るんですかねえ。】
と、デイリーさんがプリプリしながら話しかけてくる。
『え?ご、ごめんなさい?』
【私たちは、経験な信者の一人を、出来れば救いたいと思っているのですよ?どうして私に聞いてこないんです?】
『ということは、何か別の手段があるってことですか?』
【質問です。魔族の反対はなんですか?】
『え?ま、魔族の反対、ですか?ええと、聖職者⋯⋯?』
【正解です。聖職者であれば、魔力の痕跡を追うことが可能です。聖職者と魔族にしか出来ないことですから、魔法師団でも知らない筈です。実際現時点で教会に頼んだりはしていないようですね。それに祭司であれば、堂々と証言に立つことも出来るでしょう?】
『確かにそうですね!じゃあ、教会の祭司さまにお願いすれば、特定出来るかも知れないということですか?』
【通常の祭司では難しいでしょう。微量な魔力の痕跡を追うのですから。祭司長レベル、少なくともレベルの高い聖魔法が使える、副祭司長でないと難しいでしょう。通常の祭司は、レベル5までの聖魔法しか使えない、聖職者のスキルを持つのが常ですからね。】
『さっそく提案してみます!』
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