第50話 メリッサへの事情聴取
「きゃあっ!?」
突然牢屋の影がモゾモゾと動き出したのを目の端で感じ取ったメリッサは、気の所為だと思いつつもじっくりと見つめて、やはり気の所為ではなかったことに気がつくと、思わず悲鳴を上げて後ずさった。
「──あ、驚かしちゃってすみません。僕です、シルヴィオです。」
「ギィッ!」
ギィもメリッサに挨拶をしたが、ギィの姿が見えていないメリッサは、当然声も聞こえていない。いる筈のない人物が、誰も入れる筈のない牢屋の中に現れたことに驚愕した。
牢屋と言ってもここは貴族専用の場所で、入口が鉄の棒ではなく、小窓のついた鉄の扉になっている以外は、ベッドやチェストなども備え付けられ、窓もあって光も差し込むという環境だった。
暇つぶし用なのか、本棚まで備え付けられていて、快適とまではいかないだろうが、王宮の地下にあるという牢屋と比べれば、当然過ごしやすい環境だと言えた。
鉄の扉の前には兵士が一応立っているが、防音魔法が施されている為、プライバシーも守られている。これはアカシックレコードで調べた情報だ。
中にいる罪人が兵士と取引しない為だと、アカシックレコードには書かれていたが、おかげで外の兵士に気付かれることなく、メリッサと話すことが出来る。
以前国王が書いた日記にあった部屋も、こんな感じの造りだったのかも知れないな、とシルヴィオはなんとなくそう思った。
「シルヴィオ王子……さま?なぜここに入ることが出来たのですか?」
「王族専用の抜け穴があるんですよ。そこから入りました。」
そんなもの、ここには当然ないわけだが、実際有事の際の抜け穴は存在する。メリッサはその1つがつながっているのだろうと思ったのか、そうなのですね、と納得していた。
「あなたに話が聞きたくて会いに来ました。あなたを脅していた人について教えて欲しいのです。」
「ですが……、私は何も知りません。私を脅していた人も、いつもフードを被っていましたし、男性だとしか……。」
「このままでは、あなたは死刑になるそうです。それだけでなく、一族にも責任を取らせることになりそうです。あなたの愛するシャクマーン辺境伯も、殺されてしまうかも知れないのですよ?」
そう冷静に告げると、メリッサはビクッとして怯えた表情を浮かべた。予想はしていても、実際王族に直接伝えられるとなると、事情が異なるようだ。
正直に罪の告白をしたことで、多少なりとも減刑される期待もあったのだろう。だがそれはまるで甘い考えで、なんの慈悲もないことを知ったのだ。
「僕も母さまも、あなたを操る為に、シャクマーン辺境伯に呪いをかけて、利用したのだと考えています。ですが、黒幕に通じる手がかりもないことには、あなたがいくら罪を自白したとしても、減刑にまでは至れないのだと言われてしまいました。」
「そう……ですか……。」
メリッサはそう言ってうなだれた。
「だから、何でもいいです。何か手がかりになることはありませんか?僕はあなたを死刑にしたくはありません!」
グッと両手の拳を握ってそう言うと、メリッサは顔を上げてチラリとシルヴィオを見た。
「どうしてそこまでして下さるのですか?」
「母さまが、あなたを大切に思っているからです。」
シルヴィオはきっぱりと言った。
「それに、創世神リヒャルトさまも、その娘神のアダリーダさまも、あなたのようなまっすぐな方が死罪になるのは、望んでいないと思います。」
それは実際、デイリーミッションの内容を見る限りそうだと思える為、シルヴィオはなんとかしてメリッサを説得しようとした。
「ああ、創世神リヒャルトさま。わたくしはなんと罪深い信者なのでしょう。父の回復をあれだけ願っておきながら、その実王妃さまの命を狙う手助けをするなどと……。」
メリッサは胸の前で両手を合せて指を組んで、祈るようなポーズで涙を流した。
彼女は経験な使徒なのかも知れなかった。
メリッサは涙を指で拭いながら、
「私でお役に立てるかわかりませんが、できる限り協力させていただきます。」
と言った。
「では早速お伺いしますが、メリッサさんを脅していた人と会っていた時、何か違和感を感じませんでしたか?」
「違和感⋯ですか。」
「はい、なんでもいいのです。話し方だとか、嗅ぎなれない臭いがしたですとか、この国の人間が持っていないような物を常に身につけていたですとか⋯⋯。」
メリッサは、何かを思い出そうとするように、目線を上に向けながら、
「⋯⋯この国の人間ではなかったと思います。」
「それは確かですか?」
メリッサはコックリと頷いた。
「話し方が、なまりを隠そうとする人特有のものというか⋯⋯これでも王宮勤めなので、他国のお客様を迎える場に立ち会うことが何度もありましたので。」
とメリッサはシルヴィオの目を見た。
「来賓の方々は我が国の公用語を皆さんお使い下さいますが、やはり独特のイントネーションの違いというものを感じました。私を脅していた人物にもそれを感じたので、我がオークランド王国の人間ではないと思います。」
そうキッパリと告げた。
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