第48話 王族殺しの代償
「呪いは跳ね返されるとより強力になるものなのです。その為呪術師は本名を知られることを好みません。本名を知られ、呪術を跳ね返されたのですから、その時は死ぬまでです。これは呪術師として生まれた者の定めなのです。」
宮廷呪術師はあっさりとそう言ってのけた。
「跳ね返す以外の選択肢はなかったのですか?これではメリッサに呪いをかけた人間の手がかりが途絶えてしまいます。」
「手段がなくもありませんが、ことは緊急を要しました。あらかじめこの者に口封じの呪いがかけられていることがわかっており、呪いが発動する前であれば、解除の方法を探ることもできましたが、発動後であれば一刻を争います。この者が死ぬか、呪いを跳ね返すか。2つにひとつです。残念ですが。」
「そうですか……。彼女を死なせるわけにはいきませんし、仕方がないですね。」
シルヴィオはガックリと肩を落とした。
確かにあのまま時間をかけて解呪の方法を探っていては、メリッサは死んでしまっていた可能性が高い。今回は仕方がなかったと諦めるほかなかった。
宮廷魔法使いの中から、回復魔法使いが呼び寄せられ、メリッサは無事に意識を取り戻した。そしてベッドの上で、告白したいことがあると告げ、レジーナに、王妃さまに毒を盛っていたのは自分であること、また、呪いをかけられた父親を救う為、上級聖水をたてに脅されていたことを話したのだった。
シルヴィオは、メリッサの回復報告を待つ間、手持ち無沙汰になった為、王妃さまに誘われて、共に王宮に建てられた温室で花を眺めていた。
そこにメリッサの告白を報告にきた従者がやって来て、王妃さまと共に報告を受けた。
苦しむ直前の様子から、何となくメリッサの仕業だと察していた王妃さまは、そう……とだけ呟いた。
「……メリッサは罪に問われるのでしょうか?」
シルヴィオはチラリと王妃さまを見上げる。
「そうね、王族殺しは極刑にあたるから。」
残念そうに王妃さまが呟く。
「ですが、僕はシャクマーン辺境伯が呪いにかかっていたということに、疑問を感じているのです。」
シルヴィオはテーブルの上に置いた両手の拳を握りしめてそう言った。
「シャクマーン辺境伯、そしてメリッサさんの2人が、それぞれ呪いにかかっていたというのは、果たして偶然なのでしょうか?」
王妃さまは、まだ幼い息子が言う言葉としては不適当な推論に、目をぱちくりとさせながらも、子どもだからと話から除外することなく、シルヴィオの質問に答えてくれた。
「そうね。それはわたくしも感じています。シャクマーン辺境伯は貿易に向かった先で呪いを受けたとメリッサは言っていたけれど、それ自体が、わたくしに毒を盛りたかった人間の罠ではないかと感じています。」
「メリッサさんが母さまの給仕担当だったことを、外部の人間に知るすべはあったのでしょうか?」
「王妃宮に出入りする人間であれば、皆が知ることです。考えたくはありませんが、王妃宮に勤める人間のいずれかから、聞き出した可能性はなくはないでしょうね。」
それに、と王妃さまは続けた。
「王宮や貴族宅には、国内外の貴族や、他国の間者が潜んでいるものです。従者として入り込めば、毎回特定の人間に料理を運ばせていたことは、すぐにわかったことでしょう。」
「王妃宮の給仕担当は、メリッサさんだけなのでしょうか?」
それであれば、メリッサが狙われた理由もわかるな、とシルヴィオは考えていた。
「いいえ、他にあと2人。交代で給仕をしているわ。王族が口にする物を運ぶ人間は限られるから、彼女の出自だけでも、わたくしに近しい位置にいるであろうと推測は可能でしょうね。」
「──と言うと?」
「王宮に勤められるのは、基本貴族の令息令嬢なのだけれど、王族に近しい位置に配置されるのは、どうしても上位貴族が中心になってくるから、ということよ。」
「平民はいない、ということでしょうか?」
「どうかしら……。騎士団や魔法師団には大勢存在するけれど、王宮だと文官くらいじゃないかしらね。王族につかえる侍従や侍女となると、最低でも学園で優秀な成績をおさめた下級貴族ということになるの。」
「それはなぜなのですか?」
「何かあった際に保証をしてくれる人間がいないから、というのが正解かしら。貴族はその一族が責任を取ることが出来るけれど、平民にはそれがないから、ということね。」
「……万が一王族を害した場合、責任を取る相手がいない分、漬け込まれる隙が生まれる、ということでしょうか?」
一族がまとめて責任を取らされる可能性が高い貴族に比べると、その身1つしかない平民は、悪意のある人間からすれば、つけ入りやすい存在ということになる。
「呪いは跳ね返されるとより強力になるものなのです。その為呪術師は本名を知られることを好みません。本名を知られ、呪術を跳ね返されたのですから、その時は死ぬまでです。これは呪術師として生まれた者の定めなのです。」
宮廷呪術師はあっさりとそう言ってのけた。
「跳ね返す以外の選択肢はなかったのですか?これではメリッサに呪いをかけた人間の手がかりが途絶えてしまいます。」
「手段がなくもありませんが、ことは緊急を要しました。あらかじめこの者に口封じの呪いがかけられていることがわかっており、呪いが発動する前であれば、解除の方法を探ることもできましたが、発動後であれば一刻を争います。この者が死ぬか、呪いを跳ね返すか。2つにひとつです。残念ですが。」
「そうですか……。彼女を死なせるわけにはいきませんし、仕方がないですね。」
シルヴィオはガックリと肩を落とした。
確かにあのまま時間をかけて解呪の方法を探っていては、メリッサは死んでしまっていた可能性が高い。今回は仕方がなかったと諦めるほかなかった。
宮廷魔法使いの中から、回復魔法使いが呼び寄せられ、メリッサは無事に意識を取り戻した。そしてベッドの上で、告白したいことがあると告げ、レジーナに、王妃さまに毒を盛っていたのは自分であること、また、呪いをかけられた父親を救う為、上級聖水をたてに脅されていたことを話したのだった。
シルヴィオは、メリッサの回復報告を待つ間、手持ち無沙汰になった為、王妃さまに誘われて、共に王宮に建てられた温室で花を眺めていた。
そこにメリッサの告白を報告にきた従者がやって来て、王妃さまと共に報告を受けた。
苦しむ直前の様子から、何となくメリッサの仕業だと察していた王妃さまは、そう……とだけ呟いた。
「……メリッサは罪に問われるのでしょうか?」
シルヴィオはチラリと王妃さまを見上げる。
「そうね、王族殺しは極刑にあたるから。」
残念そうに王妃さまが呟く。
「ですが、僕はシャクマーン辺境伯が呪いにかかっていたということに、疑問を感じているのです。」
シルヴィオはテーブルの上に置いた両手の拳を握りしめてそう言った。
「シャクマーン辺境伯、そしてメリッサさんの2人が、それぞれ呪いにかかっていたというのは、果たして偶然なのでしょうか?」
王妃さまは、まだ幼い息子が言う言葉としては不適当な推論に、目をぱちくりとさせながらも、子どもだからと話から除外することなく、シルヴィオの質問に答えてくれた。
「そうね。それはわたくしも感じています。シャクマーン辺境伯は貿易に向かった先で呪いを受けたとメリッサは言っていたけれど、それ自体が、わたくしに毒を盛りたかった人間の罠ではないかと感じています。」
「メリッサさんが母さまの給仕担当だったことを、外部の人間に知るすべはあったのでしょうか?」
「王妃宮に出入りする人間であれば、皆が知ることです。考えたくはありませんが、王妃宮に勤める人間のいずれかから、聞き出した可能性はなくはないでしょうね。」
それに、と王妃さまは続けた。
「王宮や貴族宅には、国内外の貴族や、他国の間者が潜んでいるものです。従者として入り込めば、毎回特定の人間に料理を運ばせていたことは、すぐにわかったことでしょう。」
「王妃宮の給仕担当は、メリッサさんだけなのでしょうか?」
それであれば、メリッサが狙われた理由もわかるな、とシルヴィオは考えていた。
「いいえ、他にあと2人。交代で給仕をしているわ。王族が口にする物を運ぶ人間は限られるから、彼女の出自だけでも、わたくしに近しい位置にいるであろうと推測は可能でしょうね。」
「──と言うと?」
「王宮に勤められるのは、基本貴族の令息令嬢なのだけれど、王族に近しい位置に配置されるのは、どうしても上位貴族が中心になってくるから、ということよ。」
「平民はいない、ということでしょうか?」
「どうかしら……。騎士団や魔法師団には大勢存在するけれど、王宮だと文官くらいじゃないかしらね。王族につかえる侍従や侍女となると、最低でも学園で優秀な成績をおさめた下級貴族ということになるの。」
「それはなぜなのですか?」
「何かあった際に保証をしてくれる人間がいないから、というのが正解かしら。貴族はその一族が責任を取ることが出来るけれど、平民にはそれがないから、ということね。」
「……万が一王族を害した場合、責任を取る相手がいない分、漬け込まれる隙が生まれる、ということでしょうか?」
一族がまとめて責任を取らされる可能性が高い貴族に比べると、その身1つしかない平民は、悪意のある人間からすれば、つけ入りやすい存在ということになる。
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