第47話 呪詛返しの仕方
「なんですって!?シルヴィオ、それは呪いかも知れません。そうした呪殺方法があるのです。そうでなければ、突然舌が膨らむなどありえないことです。」
「呪い!?じゃあメリッサは……!」
確かに、突然さっきまで普通に話していた人間の舌が、気道を塞ぐくらいにまで膨らむとは考えにくい。
彼女の父親だけでなく、メリッサ自身もなんらかの呪いがかかっているようだった。シルヴィオは何かメリッサを助ける手段がないかと素早く頭を巡らせる。
だがシルヴィオが答えを出す前に、
「レジーナ、宮廷呪術師を今すぐこちらへ!」
「宮廷呪術師をただちに呼び寄せなさい!」
王妃の言葉に、レジーナが近くに立っていた従者へ、宮廷呪術師を呼ぶよう叫んだ。
そうして宮廷呪術師がやって来たのだが、メリッサの体を調べてため息をついた。
「これは……間違いなく呪術師がかけた呪いに他なりません。対象に直接接触することでかけられる、口封じの呪いになりますが、呪いを解く為には、かけた人間の名前を知る必要がございます。」
と言った。
つまり、直接接触出来ない王妃さまには呪いがかけられないが、暗殺をしようとする人間には呪いをかけることが出来た。
その為王妃さまは毒殺で殺そうとし、その実行犯から自分にたどり着かぬよう、口封じの呪いをかけたということらしかった。
だが、呪いをかけた人間の名前がわからなければ、呪いをとくことが出来ないのであれば、メリッサはこのまま死んでしまう。
その時、
【デイリーミッションクリア
王妃を狙った犯人を突き止めよ・その2。
侍女メリッサに聖水を手渡せ。
報酬:侍女メリッサと会っていた男の情報。
呪術師、ヘンリオッソ・イルバートン。】
と、文字とデイリーさんの声が聞こえた。
これをどうにかして呪術師に知らせれば、メリッサの呪いを解くことが出来る。
だがどうやって知り得たのかと言われてしまえば、シルヴィオは答えることが出来ないだろう。こうしている間にも、メリッサは窒息して死んでしまうかも知れない。
シルヴィオは、
「フィオレ!来て!」
とフィオレを呼んだ。
「何よ?」
どこかで姿を隠していたのか、すぐにフィオレがやってきて、不機嫌そうにそう言う。
「ちょっとこっちに来て。」
フィオレを手招きして、耳打ちしているかのように、内緒話をしているフリをする。
「何よ?何して──」
「シッ。」
シルヴィオは人差し指を唇に立てて、フィオレに黙っているよううながした。
「まあ、妖精だわ!本当にシルヴィオは、妖精と意思の疎通をかわすことが出来たのですね!」
驚いている王妃さまだったが、
「よ、妖精でございますか?わたくしの目には見えないのですが……。」
とレジーナが困惑しつつ言う。
精霊や妖精は力の強い個体以外は、魔力の高い人間にしか見ることの出来ないものだ。
つまりフィオレはそこまで力の強い個体ではないということだろう。
「ふん!この私が見えないなんて、失礼しちゃうわね!」
プライドが傷付けられたのか、フィオレは腕組みしながらプリプリしていた。
「母さま、妖精に今教えてもらいました。メリッサに呪いをかけた人間の名前がわかりました。ヘンリオッソ・イルバートンと言うそうです。」
「それは本当なの?シルヴィオ。」
「はい。」
「何よ、私そんなこと言ってないわ。」
「シッ。口裏を合せてよ。」
幸いフィオレの文句は王妃さまの耳には届いていなかったらしく、
「今のを聞きましたね?今すぐ解呪を試してちょうだい。」
と宮廷呪術師にそう告げた。宮廷呪術師は先端に水晶のはまった杖を取り出すと、メリッサの体の上で杖をぐるりと回しつつ、懐から取り出した丸められた紙を燃やした。
紙に書かれた魔法陣が空中で光り、そこから紫色の煙が吹き出したかと思うと、窓の隙間を通って外へと飛んで行った。
「これで呪いは術者に跳ね返りましょう。今頃絶命しておる筈です。この者を回復することはわたくしめにはかないませんので、宮侍医を呼ぶなり回復魔法使いを呼ぶなりなさってください。」
「え!?し、死んじゃったんですか!?」
王妃さまを狙ってメリッサを操っていた人間は、恐らく呪術師本人ではない。その裏に依頼した人間がいる筈だ。
メリッサと一緒にいた男から、そこに辿り着こうと考えていたシルヴィオは、メリッサに呪いをかけたその人物が、呪い返しでアッサリ呪殺されてしまったと聞き驚いた。
これでは犯人を突き止めることが出来なくなってしまう。メリッサを助ける為とはいえ、まさか犯人が殺されてしまうとは思わなかった。
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