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第46話 発動した呪い

「メリッサ、どうしたのです。王妃さまもシルヴィオさまも皿のものを召し上がられています。早く皿をお下げして、次の皿をお出ししなさい。」


 給仕を忘れて小瓶を見つめていたメリッサを訝しんだレジーナが、軽く叱責するようにそう声をかける。


「し、失礼致しました。ただちにお持ち致します。」

 メリッサは王妃さまとシルヴィオの皿を下げて、新しい料理をテーブルへと並べた。


「メリッサと言うのですね。」

 自分の前に皿を置いたメリッサに、シルヴィオが顔を覗き込むように見上げつつ声をかける。


「ひょっとして、あれが欲しいのですか?」

 シルヴィオはレジーナが手にしたままの小瓶を見つめてそう言った。


「そ、そのようなことは……。ぶしつけに拝見してしまい、申し訳ございませんでした。失礼致します。」


 メリッサはお辞儀をして自分の立ち位置へと戻る。物欲しげに見ていたことをレジーナに見咎められているところへ、王族からもそんなことを言われてしまっては、素直にそうだ言うことが出来ないのだろう。


「メリッサ、正直に言って下さい。あなたはあれが必要なのではないでしょうか?上級聖水と聞いた時のあなたの反応は、単に興味があるだけの人の反応ではありませんでした。」


「そうなの?メリッサ。」

 王妃さまがメリッサに尋ねる。メリッサはなおも言い出し辛そうに、上司であるレジーナをちらりと上目遣いに見た。


「レジーナ、発言を許可するわ。メリッサの気持ちが知りたいの。」

「かしこまりました。メリッサ、発言を許可します。正直におっしゃいなさい。あなたはこの上級聖水が欲しいのですか?」


「……はい。欲しいです。」

 絞り出すような声で、ようやくメリッサがそう言った。


「なぜだか尋ねても?」

 気を使うような王妃の素振りに、メリッサは恐縮しながら、


「……恐れながら申し上げます。実は私の父が貿易に向かった先で、呪いを受けてしまい、長い事ふせっているのです。解呪には上級聖水が必要であると言われましたが、貴重な物なので、金銭では手に入らないと言われてしまったのです。」


「まあ、そうだったの。レジーナ、メリッサのお父上はどなただったかしら?」

「シャクマーン辺境伯でございます。」


「そう言えば、年始の挨拶にも、体調不良で辞退の連絡が毎年入っていたわね。……そう。呪いを受けていたから、来られなかったというわけね。」


 王妃さまは一人得心がいったようにそう呟いた。

「呪いを受けるのはまだまだ不名誉なこととされているわ。誰にも相談出来ずに辛かったでしょう。」


 王妃さまの言葉に、張り詰めていた糸が切れたように、メリッサはついに泣き出してしまった。


「上級聖水は王族でも簡単には手に入れられない物だわ。シルヴィオ、あなた、メリッサに上級聖水をあげてもいいと思うかしら?」


「はい、もちろんです、母さま。」

「そんな、私なんかの為に、そんな貴重なものを……。いただけません。」


「メリッサ、シャクマーン辺境伯領は、我が国にとって重要な拠点です。シャクマーン辺境伯が呪いに苦しんでいるというのなら、それは国益にも通じるということなのですよ。」

 レジーナが言う。


「そうよメリッサ。ことはあなたたち家族だけの問題ではないわ。幸いここには上級聖水があって、シルヴィオはそれをあなたに譲ってもいいと言っているのだもの。」


 王妃さまは立ち上がり、メリッサの手をそっと包みこんだ。

「もしも駄目だと言われても、国の為に国王さまからシルヴィオにお願いしていただくことになったわ。受け取りなさい。そしてただちに領地に戻って、お父上を救うのです。」


「はい……はい……。」

 メリッサはボロボロと泣きながら、涙を拭っていた。


「さあ、受け取って。」

 レジーナがメリッサに近寄り、上級聖水を差し出した。メリッサはそれに手を伸ばして受取り、胸に抱きかかえると、


「王妃さま、お話したいことがございます。実は王妃さまに毒を盛っていたのは……。わた──アグッ!?」


 罪の告白をしようとした瞬間、メリッサが突如として苦しみだした。バターン!と大きな音を立てて、床に倒れ込む。


 シルヴィオが駆け寄って、喉を掻きむしっているメリッサの体を調べると、苦しげに開かれた口の中で、舌が膨らんで軌道を塞いでいるのが見えた。


 まるで毒でも受けたかのような、紫色に変色して、そういう種類のカエルの皮膚の表面かのように、大きなブツブツが膨らんで、なんとも気味の悪い見た目をしていた。


「母さま、メリッサの舌が膨らんで、喉を塞いでしまっています!宮侍医を早く!」

 シルヴィオは王妃さまを振り返った。



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