第43話 王妃を狙った犯人をつきとめろ
次の日、シルヴィオはラヴェール王子から、セフィーラさまから直接加護をいただいたこと、王妃さまが毒におかされていたことを聞いた。
「王妃さまに毒だなんて……。」
「まだ宰相が調べ始めたばかりだけど、今まで誰にも知られることなく、毒を盛った奴らだからね。犯人探しは難航するかも知れないな。」
改めて、簒奪により王位が挿げ替わった国なのだと実感する。誰も信じていない目つきだった、国王のことを思い出す。
子どもであるシルヴィオにはまだ知らされていないが、恐らく現在の国王が王位についていることを、よくないと思う輩か、王妃を自分たちにとって都合のいい人材にしたいと考える勢力が存在するのだろう。
国王の元婚約者の親友だったという現在の王妃は、チェルレッティ公爵家側の人間だ。
カロリーナを王太子妃に据えようとした場合、同様の勢力に狙われる可能性があるかも知れない、とシルヴィオは思った。
家庭教師の授業で、この国にはチェルレッティ公爵家以外にも、公爵家や候爵家が多数存在し、その中、もしくは諸外国の王族の中から、代々王妃を輩出してきた歴史を学んでいた。
つまり王妃の立場を狙っている敵も、その数だけ存在するということだ。あわよくば腹の中の子どもたちすらも、始末するつもりで毒を盛っていたとも想像出来る。
「それにしても、シルヴィオは凄いね。僕や王妃さまは、精霊の加護と祝福で毒を消したし、毒見役たちも精霊と妖精の森の、祝福がかかったグナの葉をひと月も飲まないと、体内から消えない、キュアポーションのきかない毒を盛られていたっていうのに、毒を自力で打ち消しちゃうだなんて。」
セフィーラさまが、そう教えてくれたのだとラヴェール王子が言った。毒無効のスキルのおかげだろうなとシルヴィオは思い、
「そ、そうですね、あははは……。」
と曖昧に誤魔化した。
そこへ、
【デイリーミッション
王妃を狙った犯人を突き止めよ・その1。
侍女メリッサの秘密を探れ。
報酬:上級聖水】
と文字が現れデイリーさんの声が聞こえた。
名指しということは、その侍女が関係していることで間違いない筈だが、なぜストレートに犯人を教えてくれないんだろうな?とシルヴィオは首をひねった。
ラヴェール王子が先に食事の席を立ち、シルヴィオは給仕の為に壁に控えていたシーラに、メリッサという侍女を知っているか尋ねた。
「メリッサですか?確か王妃宮の侍女ですね。何度か顔を合せたことがあります。彼女がどうかしましたか?」
「う、うん、ちょっとね……。」
デイリーミッションのことをシーラには話せない為、シルヴィオは曖昧に誤魔化した。
「かなり可愛いとは聞いていますよ。」
何を勘違いしたのか、シーラはそうシルヴィオに教えてくれた。どうやら美人だという噂を聞いて、興味を持ったのだと勝手に勘違いをしてくれたらしい。
それならその方がありがたいので、特に訂正もせずに、シルヴィオは昼食を食べ終えると、ギィに念話でメリッサの居場所を調べて、そばで監視するよう頼んだ。
家庭教師の授業を受けていると、ギィに似た別の眷属が、小さな手をフリフリしながら、シルヴィオの気を引こうとしてくる。
上を見上げると、眷属がくるりと空中で円を描き、そこにギィと、可愛らしい若い女性の姿が映し出された。
思わず、わっ!と声を上げそうになって口元を両手で覆ったが、隣の椅子に腰掛けているラヴェール王子も、家庭教師も、それに気がついた様子がなかった。
どうやら自分にだけ見えているらしいと気がついたシルヴィオは、ホッとして、教師のほうを見ているフリをしながら、映し出された映像に目をやった。
人気のないそこは裏庭だろうか。恐らくあれがメリッサなのだろう。メリッサは誰かと会っているようだった。
「……もう終わりにしたいの。みんな王妃さまに毒が盛られていたことに気付いてしまったわ。これまで以上に難しくなる筈よ。あなただって捕まりたくはないでしょう?」
「いいのか?お前がやめれば、父親の解呪の為の聖水が手に入らなくなるんだぞ?稼ぎをみんな送ってまで、ここまで生かしてきたんだろう?」
「王族殺しは大罪だわ。貴族であっても即死刑よ。私が捕まれば、どうせ父も殺される。上級聖水を手に入れて解呪出来たって、意味がないもの。だったらせめて、罪人の娘としてでなく、ただの父親思いの娘と思われたまま、死なせてやりたいの。」
「ふん。お前が捕まろうが死のうが、こちらは知ったことではない。どうせ捕まって死ぬのなら、1日でも長く生かしてやって、美味いものでも食わしてやったほうがいいんじゃないのか?」
「なんですって!?始めからそのつもりだったのね!?上級聖水だって、渡すつもりがないんでしょう!」
メリッサは叫んだ。
「もちろん渡すさ、王妃が亡くなればな。お前は王妃が死ぬ前に捕まって殺されるか、王妃を殺して上級聖水を手に入れて、父親と共にこの国を逃げ出すか。2つに1つなのさ。」
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