第40話 ラヴェール王子への加護
「その子が近くに住んでいても、もう問題ないのでしょうか?」
一度回復したとて、影響を与える存在が近くに住んでいるとなると、また体調を崩す可能性があるのではないかと、シルヴィオはセフィーラさまを心配した。
セフィーラさまは微笑むと、
「ええ。あなたとつながりましたから。あなたを通じて聖力がもらえますから、私はもう問題ありません。」
「良かった……。実は僕はこの国の王族なのですが、兄がセフィーラさまに挨拶に行く予定だったのですが、この森の様子がおかしいとのことで、来られずにいたのです。」
「そうだったのですか?」
「はい。それで、神さまのお願いもあって、なんとか出来ないかと、フィオレに頼んで様子を見に来たのです。」
「では、わたくしのほうから、その子のところに向かいましょう。森の状態が元に戻ったかわかるまで、しばらく王宮も様子を伺うことになるでしょうから。」
そう言ってセフィーラさまが立ち上がる。
「よいのですか?ありがとうございます。兄の名前はラヴェールと言います。」
「ええ。力も戻ったことですし、さっそく向かいましょう。見送りも出来ませんが、これで失礼いたしますね。」
そう言うと、セフィーラさまは、スウッと体を浮かせて、妖精たちを従え、空へと飛んで行ったのだった。
シルヴィオはそのことがどれだけ凄いことなのか、わかっていなかったが。
王宮では、精霊が直々にラヴェール王子に加護を与えに来たと大騒ぎだった。
精霊が自身の住まう森を出て、直接王族の元へと向かうということ。
それは加護か、場合によっては寵愛すら授けられる可能性のあるのもなのである。
「あ、あれが精霊……?」
「魔力の少ない俺にも見えるぞ……。」
「妖精の姿まで見える!」
「強い精霊が近くにいると、影響を受けて魔力の低い者でも妖精の姿が見えるというのは本当だったのか。」
「なんて美しい姿だ……。」
「俺たちに姿を見せることが出来る程強い力を持つ精霊が、直接尋ねて来てくれるだなんて、ラヴェール王子はどれだけ精霊に愛されているんだ……?」
「この国は安泰だ!」
「ラヴェール王子について行けば間違いないぞ!」
「王太子はラヴェール王子で決まりだ!」
王宮に勤める従者たちは、口々にラヴェール王子を称えるのだった。あまりの事態に、普段は王子たちに関心のない国王までもが、王妃を伴い城の外へと出て来た。
「お久しぶりです、セフィーラさま。」
恭しくセフィーラさまに頭を垂れる国王。
「久しぶりですね。今日はあなたの息子に加護を与えに参りました。」
「森の様子がおかしいと聞いていましたが、お体に問題はないのでしょうか?」
「ええ。神の寵愛をいただいておりますから。何も問題はございませんわ。」
セフィーラさまはニッコリと微笑んだ。
「この子がラヴェールです。さあ、ラヴェール、前に出なさい。セフィーラさまがお前に加護を授けてくださる。」
滅多に関心も寄せない父親に、じっと目を見つめられて、ラヴェール王子は少し動揺しつつも、恐る恐る前に出て、セフィーラさまに恭しく跪いて胸に手を当て、最敬礼の姿を取った。国王の前に出る時のやり方だ。
「ラヴェールと申します。セフィーラさまに拝謁させていただき、恐悦至極に存じます。」
「緊張しなくともよいのですよ。さあ、顔を上げて。」
ラヴェール王子が顔を上げると、セフィーラさまはその額にそっと手を触れた。触れたところが黄緑色に光る。
「これであなたはわたくしの加護を得ました。精霊魔法が使えるようになりますよ。」
「ありがとうございます……!」
見守っていた人々から、割れんばかりの歓声が溢れた。
セフィーラさまはふと、王妃さまに目を向けた。じっと瞬きもせずに見つめられて、王妃さまは困惑した様子を見せた。
「……良からぬ者が、あなたを狙っているようですね。体内に毒が見えます。」
「なんと!?」
「王妃さまに毒だと!?」
「わ、わたくしの体に毒が……?
ですが、毎回毒見の者がわたくしの食事を口にしているのですが……。」
「すぐに効果のある物ではありません。少しずつ体内に蓄積し、体調を悪くするものなので、気付かれにくいのでしょうね。あなたが身ごもるずっと前から、毒を盛られていたようです。母体や母乳を通じて、ラヴェールにもそれが与えられていたようです。」
「そ、そんなに前から……?」
「そう言えば、シルヴィオ王子は乳母が母乳を与えていたが、ラヴェール王子の時は、王妃さまも母乳を与えていたんだよな。」
「ああ、最近疲れやすいとおっしゃって、シルヴィオ王子の時は完全に乳母に任されたんだったよな。」
「じゃあそれも毒の影響で……。」
「毒見担当は複数人で、交代で王族たちの料理を食べているんだ。摂取する回数が分散されたことで気付かれなかったのか。」
「毒見担当も体内に毒が蓄積されているんじゃないか?」
「いったい誰がそんなことを……。」
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