第34話 画期的なアイデア
魔道具の権威、マッド宮邸伯だけあって、既に研究を一度行っていたらしい。
おかげですぐに実験が始められることになり、他にもたくさんの実験用に用意された魔石を使って、物を浮かせられるかの研究を始めることになった。
シルヴィオはまずは馬を想定している為、馬の置物を使って実験を開始する。最終的にはエアバイクのような物が作れたらな、と思っていた。
「浮かばないですわね……。」
「風魔法というのがよくないのだろうか?」
「着眼点はよいと思うのだがのう。」
カロリーナ、ラヴェール王子、マッド宮邸伯が首をひねっている。
「──そうだ、火魔法を合せてみるのはどうだろうか?」
ラヴェール王子がふと思いついたように言う。
「火魔法ですか?」
「魔法師団の訓練を見ていた時のことを思い出したんだが、火魔法と風魔法が合わさった時に、人が浮かび上がったことがあったのだよ。」
次期国王としての権威を示そうとしているのか、シルヴィオの前とは違った話し方で、ラヴェール王子が人差し指を立てる。
「まあ、そんなことがあったんですの?」
カロリーナが口元に手を当てて、驚いたようにそう言う。
上昇気流だろうか?とシルヴィオは考える。確かに上昇気流に乗ることでも空を飛ぶことは出来る。気球やグライダーなんかが、上昇気流を使って飛ぶ乗り物だ。
離陸だけをグラビティの魔石でおこない、飛ぶのは上昇気流に任せられれば可能だろうが、構造的に馬や馬車は難しいだろう。
そうなると、気球が最もイメージに近いかも知れない。
「あの、薄くて軽い袋がないでしょうか?」
「どの程度の軽さですかな?」
「そうですね……、反対側が透けて見えるくらいが理想的ですけど、そこまででなくとも構いません。」
「これなんかはどうですかな?」
マッド宮邸伯が持って来てくれた袋は、ゴムのような感触ながら、向こう側が透けて見える袋だった。ちょうどゴミ袋のような感じだった。
「ちょっとこれで試してみます。」
シルヴィオは火魔法と風魔法が込められた魔石を使い、熱した空気を袋の中へと送り込んだ。袋がふわりと浮かび上がる。シルヴィオは簡易な気球を作ったのだった。
「わあ……!」
「おお、これは!」
「浮かんだぞ!」
「これをもっと大きくして、馬車に耐えられる大きさの物を作ったら、空を飛べるのではないでしょうか?前に進むのも、火魔法と風魔法を使えば出来ると思います。」
「グラビティの魔石は、万が一にも落っこちないようにする為の、補助として取り付ければ、ゆっくり地上に下ろすだけなら、大した魔力は使いません。なんと、長年停滞していた研究が、こんな簡単なことで……。」
「この袋の素材は、簡単に手に入る物でしょうか?」
「国民の主食である、ラニェール麦から、麦を取った後の、捨てる部分などから作られる物ですので、いくらでも手に入ります。」
「では、大きな袋を作っていただけるところはありますでしょうか?」
「研究所と提携している工房に頼めば、時間はかかるかも知れませんが、恐らくは可能かと。」
「こんな風に作れないでしょうか?」
シルヴィオはノート代わりの石板に気球の絵を描き、籠の部分を馬車に置き換えた。
「この袋を安全に取り付けられる馬車の開発も必要ですな。」
絵を見ながら関心したようにマッド宮邸伯がヒゲをさする。
「馬車を極力軽く出来るといいですわね。貴族の馬車は装飾が多くて、重たい物が多いですわ。脱輪してひっくり返ると、起こすのが大変だと聞きますもの。重たい物を飛ばすのは大変そうですわ。」
カロリーナがそう進言する。
「では、推進実験を進めつつ、馬車と袋の開発を急がせましょう。楽しくなって参りましたぞ。人生何が起こるかわかりませんなあ!こんな子どもたちに教わることがあるのですから。」
マッド宮邸伯は嬉しそうに言った。
馬車は馬に引かせるもの、とされていたが、この形状だとエアバイクをつけると逆に飛ばしにくいので、エアバイクはエアバイクで作ることにした。
計算上エアバイクと人一人程度であれば、初級の風魔法と火魔法であっても、大量につければ浮かび上がることがわかった。量産を視野に入れていた為、これは嬉しい発見だった。
グラビティで浮かび上がり、ジェット推進のように風魔法と火魔法で進み、あとは少しでも揚力の力を借りる為、翼をつけて、またがる形ではなく、スクーターのように足を揃えて乗る形の乗り物を作ってみようということになった。
授業を受けつつ実験を繰り返し、ついに気球型の馬車と、エアバイクが完成したのだった。新たな魔道具、それも空を飛ぶ魔道具とあって、人々の注目の的であった。
王都の広場の前で、大勢の貴族の来賓や平民たち、そして国王までもが見守る中で、気球型の馬車とエアバイクのお披露目が行われた。
事前にマッド宮邸伯のアイデアで、兵器利用の懸念について改善案を盛り込んで貰ったことで、純粋に娯楽や移動目的でのみ、利用出来る仕様にしてある。
シルヴィオの目的のひとつが、今まさに達成されようとしていた。
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