第33話 空を飛ぶ魔道具を開発しよう
「物体を浮かすのに必要な魔石の大きさはどの程度になりそうでしょうか?」
「どういう魔法を込めるかにもよりますな。ただ、たくさん魔力を使う可能性は高いでしょうな。まずは小さい物を作って、浮かせられるか試すところからになるでしょう。」
浮かすことが出来たら、そこから人が乗った場合や、馬車を浮かせる場合を計算して、必要な魔石の大きさと、魔力量を割り出すのが近道でしょうな、とマッド宮邸伯は言った。
その計算はマッド宮邸伯に任せればおそらく簡単であろう。問題はいかに安定させて馬車などを浮かすことが出来るか、そもそもそんなことが可能なのか、という点のみと言えると思えた。
後日、シルヴィオたちはマッド宮邸伯の研究室に案内されていた。カロリーナが先に待っていて、笑顔で出迎えてくれ、ラヴェール王子は嬉しそうに微笑んでいた。
「カロリーナ・チェルレッティです。」
子どもらしからぬ丁寧なカーテシーを見せて、チェルレッティ公爵家の教育が行き届いていることを感じさせてくれる。
少しふくよかなことを除けば、可愛らしい女の子だ。母親は元候爵令嬢で父親が公爵という、血筋だけ考えれば最有力王妃候補である筈の少女。
先代王の時の出来事、かつ実際がどうであれ、謀反員を出したというイメージは、未だにつきまとっているようだ。
ラヴェール王子の為にも、なんとかそのイメージを払拭してあげよう、とシルヴィオは心に誓うのだった。
「シルヴィオさまが、わたくしも研究に参加出来るよう、取り計らって下さったと聞きました。わたくし、ひいお祖父さまのように、立派な魔道具研究家になるのが夢ですの。ですのでとても嬉しいですわ。」
カロリーナはワクワクしているのを隠しきれない様子で、目をキラキラさせてそう言った。
「兄さまだけでなく、僕とも親しくしていただければ幸いです、カロリーナ嬢。」
「もちろんですわ!よろしくお願いいたします。」
「カロリーナは魔道具の基礎は学んでおるから、早速どうすれば開発出来るかを考えていこう。」
実験器具のような物が並べられていたテーブルの上をどかして、テーブルを囲んで腰掛けるよう、うながされる。
「シルヴィオさまは、どのような魔道具を開発したいとお考えなのですか?」
「僕は、空を飛べる魔道具を開発したいと思っているのです。」
「空を飛べる魔道具……ですか?」
「はい、例えば馬だったりですとか、馬車を飛ばして、そこに人が乗って移動出来るようにしたいと思っています。」
「素敵ですわね!楽しそうですわ!」
空を飛ぶというアイデアが、カロリーナはいたく気に入ったようである。
「ですが、空を飛ぶ魔法は使える方が希少な存在とのことで、作れたとしても量産は難しいのかなと頭打ちなのです。」
「確かにそうですわね……。魔道具は基本、たくさんの人に使っていただくことを目的として開発される物ですわ。もちろん魔法禁止の魔道具ですとか、特定の場所でしか使われないような物もありますが……。」
カロリーナもラヴェール王子同様、この年齢にしては、かなりしっかりと話す子どもだった。もう少し幼い話し方をされるかと思ったが、これならシルヴィオの普段の話し方でも違和感は持たれないだろうと思った。
魔法禁止の魔道具は、王宮の中に置かれていると聞いているが、あくまでも人間や魔物が使う現代魔法にのみ対応しており、古代魔法と呼ばれる精霊魔法や、魔族の魔法には有効でない物らしい。
だからこそシーラたちが、認識を変えさせる魔法を使えるわけだが。アカシックレコードで調べたところ、研究対象が近くにいないので、開発することが出来ないのだと言う。
「例えば、初級や中級の風魔法を応用してみるのはいかがでしょう?」
「初級や中級の風魔法、ですか?」
「はい、鳥は風に乗って飛びますでしょう?」
「そうだな。」
ラヴェール王子がうなずく。
「空中に浮かび上がる魔法、グラビティは、上級の風魔法になりますが、例えば浮かび上がった後で、風に乗って前に進めば、グラビティで必要とする魔力が抑えられるのでは?」
つまりはジェット噴射のような物だろうか?とシルヴィオは考える。形状は飛行機と違うので、推進力だけで揚力を得て、風に乗って浮かぶことは難しいだろうが、前に進んでいる間、浮かせる力は少なくて済むだろうな、と思う。
「凄いですね!カロリーナ嬢にお願いして良かったです!」
「とんでもございませんわ。まだそれで実現出来るかわかりませんもの。」
謙遜しつつも、嬉しそうにはにかむカロリーナ。
「実は私も既に物を浮かせる研究は行っていたのだが、そんな着眼点があったとは……。私も驚いているよ、カロリーナ。」
「既に試されていたのですか?」
「ええ。ですが、膨大な魔力を必要とする為、諦めておったのです。その時使っていた、グラビティの込められた魔石がありますので、それを使って、開発出来るか試してみましょう。」
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