第24話 魔石に魔力を込めてみよう
「魔力の切れた魔石なら、シーラに頼めば手に入るだろ。魔石は満タンになれば、それ以上魔力は入らないし、爆発もしねえ。」
「そうなの?」
「ただ魔力操作の訓練をしてねえ魔力の少ない子どもには、魔力が操れねえから、魔力を吸う石を使って魔力の上限を引き上げる訓練を先にさせるって話だ。けど、あるじ様は既に魔力を操ることが出来るだろ?」
レルグとシャイナは、あれからシルヴィオをあるじ様、と呼んでくる。魔王の器なだけなので、魔王様と呼ぶのはおかしいが、現状従っている立場なので、そう呼んでいるのだろうな、と解釈していた。
「え?僕、魔力を操れてるの?」
「魔王様の固有スキルを使う時に、羽を操ってたろ?あれが魔力を操作するってことだ。無意識か?ひょっとして。」
「う、うん、特に意識してやったつもりはなかったね。じゃあ僕の場合は、魔力の切れた魔石に魔力を込めることで、魔力を吸う石と同じ訓練が出来るってことだね?」
「ま、そういうことだな。ついでに売れるし一石二鳥だろ。」
「魔族って、人間のお金が必要なの?」
稼ぐ提案をしてくるレルグに違和感を持ち、そう尋ねるシルヴィオ。
「普段生活する中じゃ必要ねえけどな。ここじゃ出入り商人からの買い物くらいしか楽しみがねえって、シャイナがうるせえんだ。」
嫌そうに顔をしかめてレルグが言う。
「なるほどね。人間のお金は人間から稼ぐしかないものね。僕の従者って暗示をかけてるから、お給金をもらってる筈だけど、それじゃ足りないのかな⋯⋯?」
「そうなんだろ。人型の女は種族問わず買い物が好きだからな。」
とレルグは頭の後ろで腕を組み、本格的に寝る体勢を取りながら言った。
「わかった、シーラに頼んでみるよ。」
ちょうどそこにシーラが部屋に入って来たので、シルヴィオは魔力を増やす訓練の為に、魔力の切れた魔石を手に入れたいのだと話した。
魔王の器として成長する為にも、魔力量を増やす訓練はいいことね、と、シーラは無表情にうなずいた。
部屋を出て行ったシーラが、しばらくしていくつかの、色んな大きさの宝石のようなものを持って戻って来た。
「これが魔石よ。私の縁戚を通じて売り買いすることになったと認識させたから、レルグ、あなた時々私の縁戚のふりをして、お金を受け取りにいってちょうだい。」
「俺がか?」
「どうせ暇でしょう。」
「部屋を出入りする時はどうすんだ?ただの出入り商人が王子の部屋に出入りするとこ見られたらおかしいだろ。」
「あなたはシルヴィオの眷族として契約したのだもの。影を通じて出入り可能よ。」
「影の出入りなあ⋯⋯。やれるのは知っちゃあいるが、やったことねえんだよな。確か通れる影とそうでない影があるんだろ?」
「心配なら、シルヴィオが生み出した眷族を一人連れていけばいいじゃないの。あの子たちは常に影を通じてあちこち行ってるんだから。出入り出来る影の探し方なんてお手の物でしょう。」
「そういうことなら、ギィ、お前手伝ってくれよ。」
「ギッ、ギィッ!?」
レルグに指名を受けたギィが、驚いて困惑しながら、シルヴィオにすがってくる。
「だいじょうぶだよ、レルグは優しいから。そんなに怖がらなくても平気だよ。」
「コイツ、なーんか他人な感じがしなくて、弟分みたいな気になるんだよなあ。可愛がってやるからこっちこいよ。」
「ギィッ!ギィッ!」
嬉しそうにしながら、わしわしと乱暴に頭を撫でるレルグに、困惑しているギィ。
確かにこの2人、そっくりだなと思うシルヴィオだった。
「大きさ、随分まちまちなんだね?」
シルヴィオはシーラに手渡された魔石を、手に持って見ながら言う。
「使う魔道具によって違うらしいわ。これはキッチンで火種を付けるのに使うもので、こっちは廊下のあかりの為の物ね。」
「こっちの少し大きいのは?」
「これは騎士団や宮廷魔法使いが使うものだそうよ。属性をまとわせたり、防御の強化の為に使ったり、杖にはめ込むんですって。」
「へええ〜⋯⋯。」
そこへ、
【デイリーミッション
魔石100個に魔力を込めよ
報酬:エクストラポーション】
と声と文字が現れた。
【どうして私に相談しないんですか?魔族に相談するとかどういうつもりですか?】
と、デイリーさんがプリプリしながらデイリーミッションを出してくる。
『ご、ごめんなさい、近くにいたから⋯⋯。』
【あなたの体を狙っている敵だと、忘れているのではないですか?気を抜きすぎですよ?彼らがあなたを守っているのは“魔王の器”であるからです。体が育ちきったと判断されたら、あなたは切り捨てられるのですよ?】
デイリーさんの言う通りだった。親しげに見えても、彼らはシルヴィオの体を狙っている魔族なのだ。完全に心を許していい相手ではない。気を引き締めないとと思うのだった。
試しに魔石に魔力を入れてみたところ、どれもすぐに満タンになってしまった。
まだまだあるわよ、とシーラが手渡してきた魔石の殆どに魔力を込めたところで、ようやく魔力が尽きてきたのを感じた。
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