第15話 揺りかごの番人
『僕はその2人の番人を手懐ければいいだけなんだよね?』
それなら、なんとかその2人に認めてもらうだけでなんとかなるかも知れない。
「そこにたどり着くまでは、魔物と戦わないといけないけどね。」
とアッサリ言いつつシーラが笑う。
『えっ、聞いてないよ!?』
「あなたは魔王さまの器でしょう?眷族を生み出す力があるじゃないの。今も横にいるじゃない。その子たちに戦わせればいいじゃないの。」
『えっ、いける⋯⋯?』
怖がるそぶりをみせるギィたちに問いかける。フルフル震えながらも、半泣きになりながら、こっくりとうなずくギィたち。
薄暗い洞窟の奥をチラチラと見ながら、先に進めないでいる。
『なんか無理そうなんだけど⋯⋯。』
「魔王の器が直接生み出した眷族なのよ?そこらの魔物よりも強いに決まってるじゃないの。魔王の眷族は魔王の半分の力を持つ。魔族の間じゃ常識よ。」
真顔でそう言い放つシーラ。
「ほら、そう言っている間にも来たわ。本能的に守るから、問題ないわよ。」
とシーラが顎でしゃくるようにして、奥から出て来たゴブリンを指し示す。
『が、がんばって⋯⋯!』
赤ん坊の自分に戦える筈もないので、心の中でギィたちを応援する。
すると、ギィッ!とギィが鳴いて、それに他の眷属たちが続いていく。何やら先端に丸い鉄球のような物がついた、メイスのようなものを手に手に持って突撃していく。
ポコポコ、と音が出そうなくらい、軽くゴブリンたちを殴りつける。だが、その光景はかなりのスプラッタだった。
そして、怖かった〜!とでも言うように、泣きながらシルヴィオの元へと戻ってきて、抱きついて泣いているギィたち。
「ほら、出来たじゃないの。」
シーラだけはシレッとしている。
思ったよりも魔物は弱いようだとシルヴィオは思っていたが、自分の半分の力を持つギィたちが、かなり強いのだということには思い至らないようだった。
奥に進んで行くと、今度はハーピーの群れが現れた。眷族の1体が足に掴まれて飛び去られてしまう。慌ててそれを飛んで追いかけるギィたち。だが他のハーピーたちに邪魔をされ、なかなか助けることが出来ないでいる。
シルヴィオは何か出来ないかと、シーラの胸に抱かれながら焦っていた。ステータス画面を確認するが、飛び回っているハーピーたちに直接攻撃出来そうなものは魔導銃しかない。
ステータス画面を押して出してみるも、あまりに重たくて、取り落としそうになった。
身体強化を発動すると、なんとか持つことが出来た。
導きの羽が弾に出来ると、スキルを得た時に表示されたことを思い出し、導きの羽を手のひらの上に出してみる。
魔導銃に入れようとしてみたが、まるで入っていこうとしない。
『これ、どうすればいいんだ!?』
弾になれ、弾になれ、と念じていると、魔導銃の中にスッと吸い込まれていった。
『よし、これで⋯⋯!』
ハーピーに狙いを定めるも、銃など撃ったこともないシルヴィオの弾は当たらなかった。何度撃っても素早いハーピーに、スッとよけられてしまう。
『あーもー!これならどうだ!』
シルヴィオは導きの羽を雨のようにハーピーの上に直接降り注いだ。
導きの羽が当たったハーピーたちは、ビクッとして動きを止めた。導きの羽は対象を操ることの出来るスキルだ。
『その子を返してよ!』
シルヴィオが心の中で叫ぶと、ハーピーは素直に眷族を返してくれた。
怖がって泣く眷族を、慰めているギィと他の眷族たち。導きの羽を使えば、戦わずに先に進めるかも知れないな、とシルヴィオは思った。
続いてミミック、マンイーター。アンデッドと、次々魔物が出て来たが、導きの羽を使って端に避けるよう命令すれば、素直に道を通してくれた。
『⋯⋯戦ってないけど、先に進めればいいんだよね?』
「もちろんよ。一番の目的は、“魔王の揺りかご”の番人たちを従わせることだから。」
それも導きの羽を使えば問題ないだろう。もうすっかり怖くなくなったのか、遠足気分で物珍しそうにダンジョンを見物しながら、シルヴィオたちに付いてくるギィたち。
そしてついに最奥の部屋へと到達した。
「開けるわよ?準備はよくって?」
『う⋯⋯うん!』
シーラにそう尋ねられて返事をする。シーラが重たい金属の扉を開くと、中は玉座の間のように、中央に赤い絨毯が敷かれて、その先に豪華な椅子が置かれていた。
そしてその両サイドを守るように立っている──いや、1人は人間椅子に座っていたが──人物たち。
『ひょっとして、あれが番人なの?』
「そうよ。」
『ド変態じゃないか!魔王って、あんなのが部下なの!?』
ラバーマスクにボールギャグを身に着けた、パンイチの男の上に座っている、ボンテージ姿の、まるで女王さまのような美女に、思わず内心そう叫んでしまうシルヴィオ。
念話を受け取ることの出来る、魔王の配下である美女──シャイナは、それを聞いて眉間にシワを寄せる。
「⋯⋯ただの魔王さまの器であるだけの人間が、私の趣味にケチをつけるなんてねぇ?
ただじゃすまさないわよ?」
そう言って手にした杖に魔力を込めた。
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