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第14話 魔王の揺りかご

『えっ!?半年後じゃなかったの!?』

 そう聞いていた筈のシルヴィオは、突然の展開に目を丸くする。


「そのつもりだったんだけど、あなた急激に成長したでしょう?10日で経験値10万だなんて!スライム1体で経験値1、ゴブリン1体で経験値5よ?何をやったらそれだけ赤ん坊が経験値を稼げたのかしら。」


 嬉しそうにそう言うシーラに、デイリーミッションシステムで経験値が毎日倍々に増えていくことを思いだす。


 1日目に100、2日目に200、3日目に400⋯⋯と増えていけば、10日の今日もらえる経験値は51,200の筈だ。つまり102,300稼いだことになる。


「さすがは魔王さまの器というところかしらね。“魔王の揺りかご”の準備は出来ているわ。さっそく向かうわよ!」


『ま、待って!せめてみんなが寝静まってからじゃないと、僕がいなくなったら目立っちゃうよ!』


 きっと探されて、乳母や他の従者たちの責任になることだろう。せめてそれだけは避けたいと思った。


「ならこうすればいいわ。」

 シーラが指をパチンと鳴らすと、ギィの横にいた眷族の姿が、シルヴィオのものへと変化する。困惑してギィにすがりつく眷族。


「それを代わりに寝かせておきなさいな。それでバレることはないでしょう?どうせ赤ん坊が喋ることもないのだし。」

 と言った。


『わ⋯⋯わかったよ⋯⋯。ギィたち、僕の影に入ってついてきて。』

「ギッ、ギィッ!」


 わかった、というように影に入るギィたち眷族。猿団子のように身を寄せ合って不安げにしている姿は、正直とても愛しらしかったが、身の安全を任せるには不安に思えた。


「さ、行くわよ。」

 そう言って、シルヴィオを抱き上げるシーラ。代わりにシルヴィオの姿になった眷族をベッドに寝かせる。


 不安そうにこちらを見ている姿のほうが、よほど本当の赤ん坊のように見えて、妙に庇護欲をそそられるな、と思うのだった。

 シーラは空中に魔法陣を描いた。


「あなたを連れてこの結界を出入りは出来ないからね。出ることは出来ても、入ることが難しいわ。でも、内側からならこういうことが出来る。」


 空中から魔法陣が降りてきて、頭がついた部分から姿が消えていくシーラ。

『えっ!?えっ!?』


 とシルヴィオが驚いていると、

「転送魔法陣よ、安全に“魔王の揺りかご”の前までつくわ。」

 と顔の下半分だけの状態で言った。


 上半身からゆっくりと、外の世界の空気に触れたのを感じると、そこは今にも雷が鳴りそうな真っ黒い曇り空に、枯れかけた木々に囲まれた、おどろおどろしい場所だった。


 古めかしい巨大な城の入口は、ダンジョンという言葉からイメージするには、だいぶかけ離れた、まさしく魔王が住んでいそうな建物そのものに見えた。


『こ⋯⋯ここが“魔王の揺りかご”?』

 シルヴィオの影から出て来たギィたちも、最初はシルヴィオを守ろうと張り切って飛び出して来たものの、だんだんと不安げな様子になって、シルヴィオの体に手を触れている。


「ええそうよ。魔王さまが生まれ育ったダンジョン。以来復活されるたびにここで最初の時期を過ごされるの。だから“魔王の揺りかご”と呼ばれている場所なのよ。」


 とシーラが説明してくれる。

「このダンジョンの最下層に行って、そこの番人2人を手なづけてもらうわ。魔王さまの器なら、赤子の時点でそのくらい出来なくてはね。」


『2人!?2人もいるの!?』

 1人でもどうしたものかと思っていたところに、2人もの番人が出て来ると聞かされて、ギィたちも一気に怯えだした。


「問題ないでしょう?あなたはたかだか10日で10万もの経験値を手に入れられるような赤子なのだから。さ、入りましょう。」

『ま、待って、心の準備が⋯⋯!』


 そう言うシルヴィオの言葉を聞かず、シーラはスタスタと“魔王の揺りかご”の中へ入って行く。シーラが足を進めると、城の門がひとりでに上がって行き、まっくらなその入口を開いたのだった。


「──あらぁ、入って来たみたいよぉ、次世代の魔王さまの器とシーラが。ずいぶんと美味しそうな魔力ねえ。」


 魔道士のローブを着て杖を手にした、黒のボンテージのミニスカートにニーハイブーツをはいた、大きめのカールがかかった赤髪の美女が、嬉しそうに微笑んでいる。


 座っているのは椅子ではなく、ラバーマスクをつけられ、口にボールギャグをつけられ、よだれをたらし、四つん這いになったパンイチの男の背中だ。


「試しに食べるつもりじゃねっだろな。」

 美女の影から男の声がする。はちきれそうな筋肉に、下から上に向いて突き出した牙。


 目つきは悪いがイケメンで、好きな人はかなり好きな見た目だと言えるが、明らかに人間ではない見た目だ。


「んん〜。ちょ〜っとくらいならいいんじゃな〜いい?だって魔王さまの器よぉ?私たちの力にもなるしぃ。その程度すぐに復活なさるでしょお?」

 美女は艶めかしく笑うのだった。



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