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第13話 カロリーナ・チェルレッティ公爵令嬢

 先代の国王と王太子によって引き裂かれた遺伝子が、子の世代でひとつになろうとしているのかも知れなかった。


 シルヴィオは将来の姉になるかも知れない少女の顔をじっくり見ようとしたが、まだ寝返りが大変な体の為、首を動かせるだけ動かして横目でそれを見ていた。


「シルヴィオさまがカロリーナさまをご覧になりたいようですわ。」

 侍女がそう言うと、その後ろについていた乳母が、シルヴィオを抱き上げ、カロリーナの近くに顔を寄せてくれた。


「とってもかわいらしいですわ。」

 嬉しそうに微笑むカロリーナは、少し太っていることをのぞけば、理知的な瞳をしていて、顔立ちのはっきりした子どもだった。


 太っていても、元が美人だとわかる顔だ。

 痩せたらモテそうだなあ、とシルヴィオは思いながら見ていたが、兄のラヴェール王子はまるで気にした様子もなく、カロリーナを見つめてはボーッとしていた。


 カロリーナは特にラヴェール王子を気にした様子がなかったので、ラヴェール王子の片思いなのかも知れなかった。


 シルヴィオが手を伸ばすと、カロリーナは指を握らせてくれて、ニコニコと微笑んでくれた。愛らしくて性格の良さそうな女の子だな、とシルヴィオは思ったのだった。


 ひとしきりシルヴィオを構った後で、ラヴェール王子とカロリーナは、お茶を用意してあるという庭園に呼ばれて部屋を出て行った。ひょっとしたらお見合いというやつかもしれない、とシルヴィオは考えた。


 それか既に婚約者候補として打診を受けているのかも知れなかった。謀反の意思ありとして名誉を損なわれたチェルレッティ公爵家から王妃を迎えることで、亡くなった元婚約者とその実家の名誉を回復してやりたいのかも知れない。


 自分が父親本人であるならそう考えるだろうなとシルヴィオは思った。それにラヴェール王子自身もカロリーナのことを気に入っているように見える。少なくとも現時点で彼女が姉になることに異論はなかった。


 乳母がお乳を飲ませてくれ、ゲップをさせられて、シルヴィオは再び昼寝をした。

 次の日のデイリーミッションは、久しぶりに


【デイリーミッション

 眷族を生み出せ。

 報酬:空間転移】


 だった。空間転移はいわゆるテレポートスキルだった。これでかなり行動範囲が広がるが、赤ん坊の状態でどこに行かせようと言うのだろうか、と内心首を傾げる。


 シーラが自分をダンジョンに連れていくと言っていたから、それに備えようということなのだろうか。そう思った時、ふと、最近シーラを見ていないことに気がついた。


 口に出して聞けない、赤ん坊の自分がもどかしい。

『みんな、シーラがどこで何をしているのか、調べてきてくれない?』


 かなり増えた眷族に、シーラの動向を探らせることにした。

「ギィッ!」


 と敬礼したギィにならうように、他の顔のない眷族たちも、敬礼をして、影の中へと消えていった。


 だがしばらくして戻ってくると、ギィッと首をフルフルと振った。どうやら見つけられなかったらしい。


『城の外にいるのかな?見てきてくれない?』

 と頼んだのだが、やはりフルフルと首を振るギィたち。


『お城の外に行かれないの?』

 と尋ねると、少し首をひねってから、フルフルと首を振る。少し違うらしい。


『⋯⋯ひょっとして、僕からあまり離れられないとか?』

 今度はコクッとうなずいた。つまり、ギィたちの行動範囲は、シルヴィオがいる場所から、近い場所になるらしい。


『フィオレ!ちょっと来て!』

 シルヴィオは心の中でフィオレを呼び出した。するとプリプリしながらフィオレがやって来る。


「あーもー、なによ!お昼寝してたのに!」『シーラっていう魔族を探して欲しいんだ。ギィたちじゃ見つけられなくて。お城の外にいるかも知れない。僕からあまり離れられないみたいでさ。』


「離れられない?お城に魔をはじく結界があるからじゃないの?」

『結界?』


「この子たちは結界の中で生まれたから、結界の中にいることが出来るけど、魔のものは外から侵入できない結界があるのよ。だから出たら戻ってこられないんでしょ。」


『え?シーラは外から来たよ?』

「それだけ強いってことじゃないの?例えばドラゴンなんかをおさえられるほどには、この城の結界は強くないもの。」


 シーラは確か始祖の血を引く吸血鬼だと言っていた。始祖というのは、前世の知識と同じであれば、吸血鬼の元祖のような存在で、かなり力が強い存在だった筈だ。


 だから結界を超えられたのか、とシルヴィオは思った。

「この子たちも、あんたの眷族なんだから、単独じゃなければ出入り出来る筈よ?」


 とフィオレが教えてくれる。ならばダンジョンに行く時には付いてきてもらえそうだ。

 シルヴィオはそう思ってホッとした。


 そこへ、探そうと思っていたシーラが、突然扉を開けて嬉しそうに部屋に入って来た。その姿を見て、怯えたようにフィオレが窓を貫通するようにして逃げて行った。


「待たせたわね!準備に手間取ったけれど、“魔王の揺りかご”に行くわよ!」

 とニッコリ微笑んで告げたのだった。



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