第10話 日記の続きを探せ
今日のデイリーミッションはあまりに変わっていたので、シルヴィオは首をかしげた。
【デイリーミッション
乳母の好感度をあげよ。
報酬:固有スキル・アカシックレコード】
アカシックレコードが記録を見ることが出来る意味でのものであるのなら、この世界を含めた膨大な記録を閲覧出来るようになるわけなので、それ自体はありがたいスキルだ。
だが、乳母の好感度を上げるといっても、果たしてどうすればいいのか。
その時、王妃と乳母が一緒に部屋に入ってくる。久しぶりに会う母親だ。
乳母がシルヴィオをベビーベッドから抱き上げると、王妃に渡し、王妃がシルヴィオを嬉しそうにあやしている。
その時、シルヴィオは急に尿意を感じた。オムツをしているとはいえ、人前で漏らしたくはない。なにせ中身は赤ん坊ではないのだから。
ましてやこの世界のオムツは布オムツだ。オシッコを吸収する素材など存在しないから、今漏らせば王妃の服を汚してしまう。
シルヴィオは焦って乳母のほうを見ながら、ああ〜んと泣いた。念話以外で話せないので、泣く以外の伝え方がない。
それを見た乳母はハッとして、
「王妃さま、シルヴィオさまは尿意を我慢しているようです。こちらに渡していただけますでしょうか。」
「え?」
困惑する王妃を尻目に、手早くシルヴィオを受け取ると、ベッドの上に寝かせた。
我慢しきれずにオシッコが漏れる。ベッドとオムツが汚れた感触が気持ち悪い。
乳母は手早く新しいオムツを用意して、シルヴィオの体を清めてはきかえさせると、ベッドを清掃した。
どうやら汚れを綺麗にする魔道具があるらしく、それをかざしたらベッドから尿の臭いが消えたのだ。
オムツもそれで綺麗にしたらいいように思うが、トイレトレーニングの為には、オムツが濡れた感覚が大切だと、何かで聞いたことがある気がする。
だからあえてオムツは濡れたあとで取り替えるのかも知れなかった。
「すぐにわかるなんてさすがだわ。あなたを乳母に選んで良かった。」
そう王妃は乳母を微笑みながら褒めた。
「もったいないお言葉でございます。」
そう言いながらも、誇らしげな様子がうかがえる乳母。すると、
【デイリーミッションクリア
報酬:固有スキル・アカシックレコード】
と文字が表示され声がした。
王妃に褒められるきっかけを作ってくれたシルヴィオに対する好感度も、どうやら上がったらしい。
ひとしきり母親に甘やかされた後で、眠ったふりで乳母が出ていくのを確認したシルヴィオは、さっそくアカシックレコードを使ってみた。国王の日記について調べる為だ。
アカシックレコードによると、国王の過去の日記は何十冊にも及んだが、その中でシルヴィオが生まれる以前のものは22冊。1年に1冊のペースで書かれたものらしい。
そして幽閉されている期間に書かれたものは、3冊。つまり3年もの間、この国の王子が幽閉されていたということになる。
恐らくその幽閉期間の日記に秘密がありそうだ。シルヴィオは今日の分の眷族を生み出すと、デイリーミッションで、日記を調べるミッションが出るのを待った。
その時は割合とすぐに訪れた。次の日のデイリーミッションが、
【デイリーミッション
出生の秘密を暴け・その4。
国王の過去の日記の続きを手に入れよ。
報酬:スキル・無限回復】
だったからだ。さっそくギィに日記を取りに行ってもらう。今回は幽閉期間の日記を指定したので、探すのに少し時間がかかったようだった。
そしてやはりというか、鍵がかけられていた。また明日以降、鍵を手に入れるデイリーミッションが発動するのだろう。
【デイリーミッションクリア
報酬:スキル・無限回復
パッシブスキル。消耗するステータスを常時1分ごとに10%回復します。】
と表示され、声が聞こえた。消耗するステータスということは、HPだけでなく、MPやスタミナ等も常時回復するということだろう。一気に満タンになるわけではないが、回復薬などが切れたとしても、自動で回復出来るのだからありがたい。
またデイリーミッションの連続クリアが途絶えなければ、最大で20%回復してくれるのだ。1分ごとというのも、かなり早い速度だ。数秒で回復しなくては死ぬような戦いでもない限り、じゅうぶんな時間と言える。
今日もデイリーミッションが眷族を生み出す、ではなかった為、今日の分の回数を消費して、新たな眷族を生み出した。
そしてそのまた次の日が、
【デイリーミッション
出生の秘密を暴け・その5。
国王の過去の日記の続きの鍵を手に入れよ。
報酬:スキル・隠密】
だった。これでようやく、自分の出生の秘密がわかるかも知れない。さっそくギィに鍵を盗んで来てもらう。
【デイリーミッションクリア
報酬:スキル・隠密】
隠密は姿を隠して行動出来るスキルだった。隠密と空中浮遊を使えば、姿を隠して王宮内を動き回ることも可能そうだ。
今日の分の眷族を生み出したあとで、手に入れた鍵を使って、シルヴィオは国王の日記を読み始めた。
────────────────────
X(旧Twitter)始めてみました。
よろしければアカウントフォローお願いします。
@YinYang2145675
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。




