表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

第6話 ギルドマスターからの依頼

ギルド血盟殿の4階広間、そこから続く廊下の壁一面には古びた武具や戦利品、討伐された魔物の剥製などが飾られ、これまでのギルドの活動や歴史の重みを感じさせる資料が展示されている。その廊下の先にある重厚な扉をくぐると、そこには広い執務室があった。余計な装飾がほとんどない部屋の左右には本棚に大量の本がところ狭しと敷き詰められ、部屋の中央にある大きな机には地図と依頼書が山積み。そして部屋の奥にどっかり腰を下ろしていたのは___巨体に比して極端に小さなレンズを掛けた屈強な魔族の男が一人、白髪混じりの角に鋭い牙を見せてニヤリと笑っていた。


「……おう、来たな。お前が“カズマ”だな」


低く荒い声が響く。


「俺はこのギルドのギルドマスターガルドン。ま、ガルドンでもギルマスでも好きに呼んでくれや」


凶悪そうな見た目の割に、気さくに言い放つガルドンにカズマは肩をすくめ、リリスは一歩下がって様子を窺う。


「人間が魔族の首都でのうのうと歩いてるなんざ、前代未聞だ。……だが、バーザックを倒したって話は耳にしてる。事実なら、大したモンだ」


現在魔国ゲイズペインでは魔王ヴァルゼノスの施策によって、人間の国との取引を公式に開始したものの、まだ首都に出入りする人間はほとんどいない。現状は人間の住むアルディア大陸の辺境ネザリア大平原の端、通称ブラックリーチから続く海を挟んだ国境、魔国の出先町バズラントで魔大陸では手に入りにくい物資や魔道具などを少し交易しているのがほとんどである。


「ギルマスは、俺とバーザックの戦いを見てなかったのか?」

「ああ。生憎と魔王陛下に呼び出されていてな。丁度、そん時にお前がうちのギルドに現れてバーザックを打ち倒したって情報が入ってきて、肝冷やしたぜこのやろう!!」

段々その時のことを思い出してきて、切れ気味になるガルドン。

「ははは・・・つまりもう魔王にまで俺の情報が届いているわけだ。はぁ~」

「しゃあねえだろ。すぐに陛下に届くレベルの話だ。いきなりそんな話聞かされた身としてはどんな処分くらうかひやひやしたんだぜ?まあ魔王陛下は笑っていたから大丈夫じゃねえか?たぶん」

「そいつは失礼したな。っておいおい、たぶんってなんだよ、冗談じゃねえぞ!ここにいきなり放り込まれて一方的に戦い挑まれて仕方なくやったんだ!」

「・・・ほう?いきなり放り込まれたってのはどういうことだ?」

「つっ!?(しまった。喋り過ぎた・・・)」

「ちょ、ギルマス!ほどほどにしてよ?こうみえて、カズマはめちゃくちゃ強いんだから♡」

すかさず、フォローしてくれるリリスに心の中で感謝する。

ガルドンが鋭くカズマを睨む・・・が、あたふたしてるカズマを見てふっと表情が和らぐ。

「一見すると、ただのくたびれたおっさんにしか見えんお前がバーザックをなぁ・・・あぁ分かってる。まぁお前さんのことはリリスからある程度は聞いている。随分と酒飲んでリリスと乳繰り合っていたらしいからなぁ・・・(ニヤニヤ)」

「ぐぬぬ・・・ああ、お前の言うように俺はただのくたびれたおっさんだよ!仕方ねえじゃねえか。いきなり見知らぬ場所に見知らぬ連中に喧嘩売られて戦い終わって、腹減ってたしリリスはエロいし酒もつまみも美味かった!こっちも我慢の限界があるんだよ!」(全部ばれてやがる・・・はぁ~まぁ当然だよな。俺はここじゃ異端の存在になっちまってるし、周り全てから注目されている。行動全てが筒抜けといっても言い。もうこの際、好きにやらせてもらうとするか・・・どうせなら楽しみたいし。何かの間違いでちょっとリリスの乳揉んでやろうかな。グヘヘ)

「ちょっとぉギルマス~カズマは初めて魔国のお酒飲んだのよ?酔っ払っちゃったから介抱してあげただけよ!ねっ♡でも、カズマもだいぶここに慣れてきたみたいだし、今度一緒に買い物行きましょう♡」

嬉しそうに語るリリス。

(・・・ふむ、見知らぬ連中か。こいつは何故か魔族に偏見もないどころか、存在すら知らなかったようなそぶりだ・・・本当に異世界からきた可能性も考慮する必要があるか?いや、人間の国じゃ、魔族なんぞまず見かけないだろうからな。そんな奴もいるか?まあしばらく様子みるか。聞いてた話よりだいぶ落ち着いているしな。)

「まぁ、そう心配するな。バーザックを一撃で倒したお前さんなら、ここでいくらでもやっていける。なんてったってここは実力至上主義の国だ。力こそ全て。強さ以外の要素は全て二の次ってわけだ。まあ、最近はそれでも随分変わってきたんだがな。昔に比べりゃ。実際5階のバーに行って酒飲んで分かったろ?少しずつだが、この国にもああいう店が増えてきている。戦争が終わり、人間の国と取引するようになって様々な文化が入り込んできているんだ。いずれおまえさんのように人間がこの首都ブッチャーズブリッジまでくるようになるだろう。そんなことを魔王陛下も話されていた。そして、そうなることを望む…とも」

「・・・」「へぇ~(これなら、カズマと付き合っても問題なさそうね♡むしろ模範事例として歓迎されちゃう?ニヒヒ」

その後、あらためて、ギルドや冒険者についての説明とランクについての説明があった。

カズマもギルマスの話をひととおり聞いてほっとする。流石に魔王相手に、戦うようなことになったら洒落にならない。戦って負けるつもりもないが、様々な厄介ごとが舞い込んでくるのは間違いない。そうならないように早々に立ち去ろうとするカズマ。しかし、そうは問屋が卸さない。

「よしっ!じゃあガルドンのおっさんあとはよろしく頼むわ!それじゃ「あ!こら!まあ、待て、焦るな。お前を呼んだのは、今の話もだが特別な依頼があってな!ガハハ!おまえのためにも最後まで話は聞いといた方がいいぞ?」

(チッ!逃がしてくれねえか・・・)

「・・・なんだよ依頼って?」

「たしかにおまえさんはAランクのバーザックを倒したから、実力は申し分ない。冒険者登録もしたから、依頼を受けてもらって構わないが、果たして依頼側の魔族がおまえさんを信用できるか?よしんば、依頼を達成しても反故にされたり、報酬をケチられたりするかもしれねえ。」

「・・・たしかに。」

「まあお前なら、力づくで奪うこともできるかもしれんが、それじゃあ冒険者登録する意味もねえだろう?だから、一旦ギルドマスターからの指名依頼ということで、その依頼をお前に達成してもらい、信用という箔をつける必要がある。ここまでは分かったな。」

「ああ。分かったよ。それで俺は何やればいいんだ?モンスター討伐とかか?」

「まぁそれもいいんだが、それじゃあただ強さを証明するだけにしかならん。既にそれは知れ渡っているだろう? この魔族の国で人間であるお前が信用を得るというのは並大抵のことではできない。だからまずはお前にはとある高位魔族の護衛をしてもらう。期限は明日から1ヶ月。相手の~・・・・・・」


ー翌日ー


ギルドの宿泊施設の一室を借りて寝泊りしているカズマ。昨日ガルドンから渡された地図を頼りに目的の場所に向かう準備をするため、市場に買い出しにいくところであった。勿論、金はもっていなかったため、ギルマスから前借りしている。(っち!それにしてもギルマスにうまく丸め込まれた気がしてならない・・・)

昨日のギルマスとのやりとりを思い出し、悩むカズマ。このしがない見た目のおっさんは既に精神的疲労により、朝から思考がまとまらなくなっていた。もはや、この脳筋の国なら最悪力づくで片づけられるからいいかという魔族寄りの安易な思考に染まりかけているダメオヤジである。


昨日のギルマスが言っていたことを思い出す。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「もし依頼が成功したら、Aランク認定してやるとともに、公式にお前を我がギルド血盟殿ブラッドパクトの幹部に推薦してやる。今うちの幹部は俺とリリス、バーザックと他6人いる。これまで九人会ナインリビドーだったから、丁度お前を入れて十人会にする。十人会の何かいい名前考えといてくれ!」

「名前ってなんでやねん。つうか幹部とかやりたくねえよ。」

「ん?おまえは既に夜の光‐ルクス・ノクティスで酒を飲んだと聞いているが、あそこはまだまだこの国じゃ珍しい高級バーだから酒もつまみもべらぼうに高いぞ?無一文のお前にそれらが支払えると思わんが、幹部になれば一応役員報酬が出るし、特別会員価格が適用されるぞ!他にもいくつか特典があるが・・・まあお前が要らんというなら、仕方ない。残念だ(ニヤァ)」

「ぐぎぎ・・・ちくしょうめぇ!!わぁーったよ!!幹部なってやるよ!ったくしゃあねえなあ。」

「そうか?むりしなくてもいいんだぞ?お前バーザック倒すくらい強いからな!いくらでも稼ぐ手段あるだろうし!」

「・・・すみませんでしたぁぁぁ!ギルマスいやガルドン殿!!何卒この人間である私めにもお慈悲を・・・ぐぎぎぎ」その場で即座に土下座するカズマ。

「ガハハハ!まさか、あのバーザックを倒したカズマ様がそこまで言うなら仕方がない!まあ、それもちゃんと依頼を達成できたらの話だがな!ガハハ!」

「(流石ギルマス・・・単純な戦闘力だけでなく、頭も回るのよねこの男は・・・ジー。私もギルマスに倣ってカズマを言葉で操れるかしら♡ヒヒ、楽しみになってきた)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(血の気の多い魔族も高位になれば人間以上に口も頭も回るってことかよ‥‥)

 「ふぅぅ~♡」

「っておわあああああ!いきなり耳に息吹きかけるなリリス!ってかいつの間に俺の部屋入ってきたんだ?鍵かけてたはずだが?・・・」

「私はカズマの案内役兼お目付け役!第一あんた何も準備もできてないし、目的の場所もよく分かってないでしょ?」

「・・・まぁな!でへっ!・・・ってそうじゃねえええ!!どうやって」

「ふふふ・・・それは秘密♡ ったくしょうがいないわねぇ、このゲイズペイン一の受付嬢リリスがしっかりサポートしてあげるから感謝しなさい!キュピーン♡」

(くっそ、こいつなんで朝からこんなエロい恰好してやがんだ!ああもう我慢できねえ!)

「あっリリス。なにかゴミついてるぞ?」

そう言いながら、リリスの腰に手を伸ばす。 

「え?どこどこ――ひゃんっ!?」

思い切り尻をわしづかみにされ、リリスは肩をすくめて飛び跳ねた。

「おしっ!ゴミ取れたぞ!」(ぐへへぇ……やっぱサキュバスのケツは人間の女とは格が違うぜ!こいつの尻なんていい感触してやがんだっ!プリっとした適度な弾力と柔らかさ!たまらん…病みつきになっちまうな!)

「もうカズマったらぁ!私のプリティなお尻触りたかっただけなんでしょ!?もう人がせっかく準備手伝ってやろうとしてるのに~ジトー」

頬をふくらませるリリスだったが、その尻尾は嬉しそうにぴょこぴょこ揺れていた。

(あ~ん、ほんとはもっとやってほしい♡もっとセクハラしてカズマ♡)

「ははは、感謝しろよ?ゴミとってやったんだぞ!ニチャァ)

「もう~そういうことにしてあげるわ♡」(えへへ~やったぁ……カズマから触ってきてくれた!もっといたずらしていいんだよ、カズマぁ♡)


「・・・・こらああああああっ!!!イチャコラしてねえで、さっさと行けぇぇぇ!!!!!!!!」

「どわあああああああああ!!!!!」「きゃああああああああああ!!!!!!」

「いきなり入ってくんなよギルマス!」「びっくりさせないでよギルマス!」

「うるせい!!バカップル!!朝からギルドでいちゃつきおって!!ブッチャーズブリッジで散っていった魔族の英雄たちが泣いておるわ!!!分かったらさっさと行けえええええ!!!!!」

「へいへい」「はいはい」


(・・・やっと行きやがったかあいつら。た~く姿は人間だが、だらしない下級魔族と変わらねえじゃねえか!!魔族も人間も似てるのかもしれねえな。本質は・・・まあ、それはおいおい考えるとしてだ・・・今は片づけなくちゃならん案件がある。そいつをまずどうにかするか・・・はぁ~~)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ