第3話 血の橋の余韻
なんとなく思いついて、絵を挿入してみますた。むふふー
「おいおい本当に……人間が勝っちまったのか……?」
「馬鹿な……人間ってほんとは強い・・・とか?」
「こんなことが……あり得るのか……?」
観衆は沈黙した。
魔国の秩序を覆すような現実に、誰一人として声を上げられない。
「・・・ほかに文句のある奴はでてこい。今ここでやってやるぞ」
「「「「「・・・・・・・・」」」」」」
カズマは、静かに背を向けギルドに歩き出した。
海が割れるように、周囲に雲霞の如く集まっていた魔族達が無言で道を開ける。
「・・・(おい、お前名乗り出ろよ!さっきまで、下等種を潰せえ!とか言ってたやろ)」「(馬鹿言ってんじゃねえ!こんなバケモン相手にいくつ命があっても足りねえだろうが!殺すぞ!)」
しかし、この衝撃的な瞬間を見た魔族達の中でも、受けた印象はさまざまだった。
(こりゃ荒れるぞ。ただでさえ人間の国と表向き対等に付き合うようにお触れが出て、ストレス溜めてる魔族が多い中、このブッチャーズブリッジでも上から数えるほどの強者バーザックが倒されたんだ。下手すりゃ国が割れる。しばらく首都から離れた方がいいかも分からんな。)
(何ちゅう一方的な戦い・・・あのバーザックがまるで歯が立たなかった。俺も負けておれんな。今一度修行するか)
(くくく・・・まさか下等種と思われていた人間にもこのような強者がいるとはのう。陛下に伝えねばなるまい。)
(・・・こいつら登録の話、忘れていないだろうな?)
その日――魔大陸に初めての人間の冒険者が誕生した。
受付嬢のサキュバスが、恍惚とした笑みで呟く。
「……すごいものみちゃった・・・かっこいい……♡」
頬を赤らめた受付嬢のサキュバス・リリスが、腰をくねらせながら叫んだ。
―― 第三話:血の橋の余韻 ――
――その夜。
首都アナルカントの歓楽街は、まるで祭りのような騒ぎに包まれていた。
居酒屋、賭博場、路地裏の屋台に至るまで――話題はひとつ。
「見たか? 人間だぞ! 人間がバーザックを倒したんだ!」
「ありえねぇ! 夢でも見てたんじゃねぇのか?」
「いや、俺の目で確かに見た! あのベヒーモス形態のバーザックを粉砕したんだ!」
「くく……震えるぜ。あれが本当なら、魔王様クラスだろ」
酔いどれた魔族がジョッキを掲げ、テーブルを叩く。
隣の奴は「いや、きっと反則だ、裏で何か企んでる」と言い張る。
賭け事をしていた連中は顔を青ざめさせ、「あの時、人間に賭けときゃ……!」と地団駄を踏んでいる。
だが、誰も彼も結論は出なかった。
ただ“人間”という存在が、突如としてこの魔都に爪痕を残したのだ。
一方、ギルド血盟殿ーブラッドパクトーはこれまでの騒ぎが嘘のように静まり返っている・・・
というのも、まさに話題の当事者カズマは一人静かにギルドのカウンターに立っていた。その姿はまさにうだつの上がらぬしがないおっさんそのもので、戦いを終えて気が抜けたのか間抜け面をさらしていた。
(はあ~まじで勢いだけで、ここまできたがどうしよう~~~!まじ疲れたし、とりあえず寝たいだが・・・つうか腹減ったし美味いもん食いたい。おああああああ、何とかならんか!)
だんだんやけっぱちになりはじめてきた35歳独身のしがないおっさん。
なぜか気付いたら、こんな分けわからんファンタジー世界の魔族の国に転移しており、おっさんの心中は混乱の極みがあった。なんとかここまで、冷静さを保ちなぜか戦うことになり、見事?冒険者登録を果たしたものの、この後どうすればいいか何も考えていない。いや、もう考えたくない。はあ~・・・
しかし、ただのおっさんと思われるその姿、それは人間からみた印象。
今ここにいる魔族で、ゲイズペイン有数の強者バーザック相手にあれだけ一方的な勝利をした人間に対し、弱そうなどと油断する愚か者はいなかった。腑抜けた姿さえも、もはや一種の擬態、真なる強者がみせる隙ともいえぬ隙、誰もがこの男を警戒して緊迫した様子でいる。
そんな中、やっと冒険者登録を済ませることができた。
「はぁはぁ・・・登録、完了よ♡」
何故か異様に興奮しているサキュバスの受付嬢リリスが、艶やかな唇にわざとらしい笑みを浮かべながら、足を組み直す。その仕草に周囲の魔族もカズマも思わず視線が吸い寄せられる。
「まさか、本当に勝っちゃうなんてね…はぁ…。あなた、何者なの?」
「……ただの人間の冒険者だ。気にすんな・・・」なんとか短く返す。
(・・・おいおい!?最初は緊張し過ぎて気付いてなかったが、この姉ちゃんエロ過ぎじゃねえか!?見た目も前の世界じゃお目に掛かれないような美人でさらにボンテージみたいな恰好しやがってなんてスタイルの良さだよおいっ!・・・なんかハァハァして顔赤いし、しかもサキュバスだと・・・ファンタジー世界の生物じゃねえかよ!背中の小さい羽根がリアルに生えているとか本物の小悪魔エロスやんけ!)
もはや心の中では、ただのエロオヤジ全開であった。
しかし、その内面はおくびにも出さない。これでも一流の戦闘者として、様々な修行を積んできているのである。
一方リリスはその低い声と無駄のなさに、逆に背筋をぞくぞく震わせる。
リリス「・・・はぁはぁ・・・じゃあ規則に従い、最低限の説明を行う・・・わ」
(若干声が震えている気がするが・・・大丈夫かこの姉ちゃん)。
だがそれを隠すように、リリスはわざと書類を音を立てて机に置いて、深呼吸すると覚悟を決めたように話始めた。
リリス「まず――冒険者は依頼を請け負い、成功報酬を得ることになるわ。依頼の種類は討伐、護衛、探索、奪取……それと暗殺もある。このギルドでは依頼を拒否する権利は原則ない。受けた以上は必ず遂行すること」
カズマ「……暗殺までアリかよ。やれやれだな」
(くっ、身を乗り出した時の谷間が……いやいや俺は報酬の欄を見てただけだ!)
リリス「次に、活動範囲について。ゲイズペイン国内なら基本的に制限はないけど……生還率の低い魔瘴地帯や、魔王直轄領に入る依頼もあるわ。そこはB級以下じゃ“入れないし、帰れない場所”だと思って」
カズマ「……ま、なるようになるだろ。つうかB級以下とはなんだ?」
(なるように……いや違う、俺は今の腰のラインを見たわけじゃなく……!)
リリスは深いため息をつき、髪をかき上げて挑発するように笑う。
リリス「最後に――冒険者同士の争いについて。基本的に殺し合いは自由。ただし、殺した側が相手の装備・財産・奴隷契約をすべて引き継ぐのが掟。……命が安い世界よ」(チラッ♡)
カズマ「まじか…何でもありかよ…いや、安い命しか転がってないってことか?ジロッ」(うっ!組みなおした足の間から魅惑の三角ゾーンが・・・)
その声音と視線に、周囲の魔族が思わず身震いする。つい先ほどまで“ただのくたびれたおっさん”にしか見えなかった男が、一瞬、魔王とすら思わせる圧を纏ったように見えたからだ。
魔族達「「「・・・・・・・・・・」」」」
周囲で聞き耳を立てていた魔族達に緊張が走る!が、しかし
カズマ「……で、その説明はまだ続くのか? 腹減ったんだが。あと安い酒が欲しい。安いのでいい。何かねえか?エロいねえちゃんよぉ」思わず心の声を少しだしてしまうセクハラオヤジ。
(はぁはぁ・・・もう耐えられん。このねえちゃん見てたら、いつか嵌められて抜け出せなくなりそうだ。)
しかし、普段から野蛮で血気盛んな魔族達に揉まれ、逆にしばき倒しているリリスは人間ならセクハラ案件になるような言動にも気付かない。というか日常であり、魔族はもっと過激な言動であるため普通の会話でしかなかった。
リリス(・・・う~ん。さっきからいろいろ仕掛けいてるんだけど、効かないのかしら・・・普通のやつならイチコロなんだけど、やっぱり本物の強者には効きづらいのよねえ・・・って)
「あらっ!バーザックを倒した強者が安酒なんて似合わないわ!せっかくだから、初勝利の祝いに私が高いの奢ってあげるから一緒に飲みましょう!私はサキュバスのリリスで皆の受付嬢よ!ここでは私のこと知らない魔族なんていないんだから!私に任せて!(フフフ、この男を絶対落としてやるんだから♡)」
二人の会話を黙って見ていた魔族達やリリスに魅了されている魔族、密かに狙っていた魔族達が急にざわつき始めた。
「おいおい……!」「リリス、お前……人間に惚れたのか!?」「気でも狂ったか!?」
だが彼女は構わない。「うるさいわねぇ・・・あんた達うだつのあがらない弱魔族に要はないの!
・・・それにだってぇ……強い男が好きなんだもん♡ あ~ん夜の時間が楽しみだわ♡」
その様子に、モブリスが再び食いつく。
「ちょ、ちょっと待てよリリス! そいつはやめとけ! お前には俺がいるだろ!? な? 俺だって……」
「え? 誰?」
リリスは冷たく首をかしげた。
「だ、だから俺だよ! モブリスだよ! ほら、昨日も声かけ――」
「……ああ、ごめん。顔も名前も覚えてなかったわ♡」
「……ッッ!!!」
観衆の魔族たちが爆笑する。
「ギャハハハハハ!!!wwwいいぞギャグ要員!!!」
「ぷっ……ククク! おいモブリス、完全に無視されてんぞ!」
「哀れすぎるwww」
モブリスは必死に叫ぶ。
「お、お前ら笑うな! 俺は分かってたんだ! この人間の強さを! 俺だけが……!」
「おい!人間!バーザックは運よく倒せたようだが、俺はそうはいかんぜ!俺の必殺デスダンスで貴様はイチコロよ!(決まった!)」
だが、その声はカズマの背中にすら届かない。ただ、虚空に響き、乾いた笑い声に掻き消されていった。
カズマはすでにリリスと一緒に酒を飲みに行くことにして、席を離れていたのだった。
「「「・・・・」」」 「だっせえ・・・」「キモっ!」「・・・あほくさ」
「だれかあいつと付き合ってあげなよw」女魔族が同情心?で声をあげたが、
「おめえがつきあってやれよwフェリカ」
フェリカ「はあぁ???あんなカス存在自体が悪よ。あいつと絡むくらいなら、あの人間のおっさんの方がまだマシよ♡(あの人間?の正体と強さの秘密を暴いてやる。あわよくば、地元に招待してその子種をもらうんだから。)」
「おいおい!?おまえもかよフェリカ!冗談もほどほどにしてくれよ・・・」
「「「(ぐぎぎ!・・・くっそ!下等種の人間のくせに、このギルドの紅白2点同時攻略とか許せん!)」」」
普段全く団結力がない魔族達の心が奇しくも一致した瞬間であった。
ー リリス・ヴァン・ブラドマイアー ー
は魔国ゲイズペインの隣国、ヤリマン王国の出身。(ヤリマン王国はサキュバスと吸血鬼のハーフ女王が支配している国)リリスも同様にサキュバスと吸血鬼のハーフでこの国では主要な種族である。美人受付嬢としてブッチャーズブリッジで有名なリリスだが、実はバーザックと同じAランク冒険者であり、実力も文句なしに高い。まさにギルドの顔役の一人なのだ。単純な戦闘能力はB級程度だが、固有スキル魅惑の魔眼とパッシブスキル魅了、精神干渉スキルハートブレイク、魅惑のスマイルなど相手を魅了するスキルを多く持っており、他を寄せ付けない美貌と併せて非常にやっかいなスキルを多数所持しているため、モブ魔族とは比較にならないくらい強いのである。吸血鬼としての能力も持ち合わせているため、継戦能力も非常に高く、性豪としても知られており、名だたる冒険者魔族達も逆に搾り取られる有様であるため(吸血鬼とサキュバスの能力で相手の能力の一部を吸収したり奪うことができる。)、最近は誰も手を出さない。そのため欲求不満である。なお、本人はとにかく強者が好きなため現在は主人公を虎視眈々と狙っており、あわよくば、性も力も吸収することを画策している。