第2話 血の橋の咆哮
GPTでバーザック作ったらこうなりましたw
――ブッチャーズブリッジ――
闇を孕んだ魔国の空に、観衆の咆哮が木霊する。
首都アナルカントに集う魔族どもが、まるで血に飢えた獣の群れのように橋の両端を埋め尽くしていた。
「殺せぇぇ! 肉に刻めぇぇ!」
「バーザック!大槌で人間をミンチにしろぉ!」
「血をよこせ! 骨をよこせぇぇ!」
熱狂と狂気が渦を巻き、魔石造りの橋が震えるほどの声援が響く。
その中央に――二つの影が相対していた。
一人は六本腕にして魔炎を背負う上級魔族【バーザック・グロウル】。
肩から吹き上がる魔炎は獰猛な獣の咆哮のように轟き、握る黒鉄の大槌からは地を引きづり擦るたびに火花を散らす。
もう一人は――うだつのあがらぬしがないおっさん、【如月一真】。
軽装に身を包み、武器らしい武器すら持たない。その姿は、群衆の目には哀れな獲物にしか映らない。だが、彼は動じなかった。ただ、静かに立ち、深い呼吸と共に目を細める。
司会役の魔族ガイスが声を張り上げる。
「両者、血を捧げよ――!!」
――ドンッ!!
開始の合図と共に、バーザックが地を蹴った。巨体が信じられぬ速度で突進し、大槌が空気を裂く。
「砕け散れェェ!」
六本腕の巨漢魔族【バーザック・グロウル】が振り下ろす大槌。空気を裂く風圧だけで観衆の髪が逆立ち、橋の欄干が爆ぜる。
――ドガァァァン!!
石畳が粉砕され、砕けた岩が弾丸のように飛び散った。橋が揺れ、魔石でできた石畳の表面が粉砕される。土煙と火花の中、観衆が一斉に歓声を上げた。
「やったか!?」
「もう肉片だろ!」
だが――。
「……遅い」
低く冷ややかな声が、土煙の中から響いた。
次の瞬間、煙を切り裂いて現れたのは無傷のカズマ。
彼は一歩横にずれただけで、巨体の一撃を紙一重でかわしていたのだ。
「ほう……ッ!!」
バーザックの六つの眼が驚愕に揺れる。
その隙を逃さず、カズマが軽く拳を突き出した。
――ゴッ!
「ぐぅッ……!」
巨体がわずかに揺らぐ。
ほんの小突きに過ぎぬはずの一撃が、上級魔族バーザックの肉体を鈍く震わせたのだ。
観衆は一瞬、言葉を失った。
「……今のを避けるだと……?」
「人間が……バーザックの一撃を……?」
しかし、すぐに嘲笑と罵声が渦を巻く。
「まぐれだ! まぐれに決まってる!」
「人間ごときが通じるわけねぇ!」
バーザックは唸るように笑った。
「クク……いいじゃねぇか。少しは楽しませてくれそうだな」
再び突撃。
六本の腕が大槌を振り下ろし、横薙ぎに薙ぎ払い、上から叩き潰す。暴風のような連撃が魔石で強化された橋をたやすく破壊し、石片が飛び散る。
だが、カズマは――。
その全てを、最小限の動きで回避していた。無駄のない一歩。首を傾け、腰を捻り、ただ軽やかに舞う。
「……フッ」
呼吸すら乱さず、冷淡に一撃を受け流す。とはいえ――完全に疲労がゼロではなかった。
さすがに橋全体を揺るがすような巨漢の猛攻を、受け流し続ければ体力も削られる。
カズマの額に、わずかに汗が滲む。
(……くっ!思った以上に速いうえに一撃一撃がとんでもなく重い。長引かせればこちらもダメージ負うな・・・早めに終わらすぞ)
バーザックの攻撃をかわすたびに、彼の頭の中で冷静な分析が進む。だがその冷静さが、逆に観衆の心をざわつかせていった。
「なんだ……人間が遊んでるように見えるぞ……?」
「馬鹿な! そんなはずがねぇ!」
徐々に、場の空気が変わり始める。
――そして、バーザックもそれを悟った。
「……調子に乗るなよ、人間!ここからが……本当の戦いだ」
その声には、もはや余裕はない。
それまで、縦横無尽にふるっていた大槌を突然宙に放り投げると同時に六本の腕を広げ、背中から燃え盛る黒炎が渦を巻き、巨体を包み込む。
轟音と共に、橋全体が揺れる。「見るがいい――我が真の姿を!」
炎の繭が破裂する。
現れたのは――八本足の異形にして伝説の巨大魔獣ベヒーモス。
六対の腕が獣の脚に変じ、背から無数の棘と噴火口のような突起が生え、そこからバーザックの全身に血管のようなぐつぐつと赤黒いマグマが煮えたぎるように体を這い煙をあげている。その異様はまさしく地獄の幻獣。
「なっ!??ベヒーモス形態…なんじゃそりゃ…!?」
「馬鹿な……ギルドの連中にすら見せたことがないって聞いてたぞ……!」
観衆が絶叫し、恐怖と興奮が混じる。
ベヒーモスと化したバーザックが咆哮する。
「グオオオオオオオオォォォ――!!」
その一声で、空気が震え、橋の欄干が砕け落ちる。
「人間! この一撃で貴様は終わりだァァ!!」
八本の脚が橋を駆け抜ける。
天を衝くような魔力の奔流が収束し、顎門が開く。
バーザックの両角に黒雷が落ち、その体を這う黒炎と混じり合う。
「――必殺、【獄雷焔葬】ッ!!」
もはや誰の目にも不可避の突進。灼熱と雷光が奔り、橋全体を覆うほどの巨大爆発が放たれた。
観衆は狂喜し、歓声が爆ぜる。
「終わった! 人間は消し炭だァァ!」
「さすがバーザックだ! これで決まりだァァ!」
だが――。
爆炎の中心に、まだ一つの影が立っていた。
「「馬鹿な……俺の必殺を……人間が……」
ベヒーモス形態のバーザックが、信じられぬように後ずさる。
風に揺れる薄汚れた黒髪。破れまくってもはや軽装というより、全裸に近いおっさん。
がしかし、わずかに肩で息をしながらも、冷たい瞳を光らせ、ほぼ無傷で立ちはだかる男。
「おい・・・」
「・・・ビクッ!!?」
「痛ぇじゃねぇか・・・」
「えーっ!?……うそ!!!???……♡」
受付嬢のサキュバス、リリスが両手を口に当て、目を潤ませる。
「本当に……生きてる……しかも傷一つないなんて……♡」
観衆の魔族たちは、驚愕の表情で叫んだ。
「バ、バーザックの必殺が……」
「人間が……防いだだと……?」
「嘘だろ!? 夢でも見てんのか!?」
場の空気は一変した。歓喜から混乱へ。嘲笑から沈黙へ。
強者と認めざるを得ない“恐怖”が、全員の喉を塞いでいた。
その中で――一人だけ、場違いな声が響いた。
「ふっ……やっぱりな」
モブリスである。
両腕を組み、したり顔で頷いていた。
「俺は最初から気付いてたぜ? あの人間……ただ者じゃねえってな」
「……」
「お、おい、なんでみんな黙ってんだよ。驚くことねえだろ? 俺だけは分かってたんだよなァ!」
だが、誰一人として振り向かない。
隣の魔族に声をかけても、無言で距離を取られる。
「おい!? なんでだよ!? お前らも同じ気持ちだろ!? なあ!」
そんな間抜けな声が響く中、橋の上の戦いは終わりを迎えた。
――ドゴォォォォン!!
衝撃が走り、橋全体が軋む。
腰を深く落とし、石橋に両足をめり込ませながら、まっすぐ突き出したカズマの拳がベヒーモス形態のバーザックの顔面を打ち砕き、巨体が平行に浮き飛ぶ。
「ぐはぁああ・・・・ぐぅぅぅぅぅ……っ……!」
砕けた牙から血を吐き、獣の体が徐々に縮んでいく。
変身が解け、元の六本腕の姿に戻ったバーザックは、地に伏していた。
血を吐きながら、バーザックが呟く。
「……はぁはぁ・・・なんという強さだ…信じられん・・・・・・何者なのだ?本当に・・・人間なの・・・か?」
「・・・まあ、そのうち気が向いたら話してやるよ。あと人間だ」
「・・・くっ・・・まあ・・・いい。・・いつか貴様に勝ち、正体を・・・暴いてやる。・・・面白くなって・・き・・た」
血の混じった口で苦しそうにしながらも笑みを浮かべ、言いたいことを言い終えたのか、バーザックは意識を手放した。
観衆は再びざわめく。
「本当に……人間が勝った……?」
「馬鹿な……人間って実は強いのか?……」
「こんなことが……あり得るのか……?」
…続く。かも




