謎のおっさん魔国ゲイズペインに闖入する
なんとなく始めました。てきとうです。誤字脱字は脳内変換推奨。
というか物書き自体初めて。まさにおなにーです。
第一話:血の橋の強者(魔国ゲイズペイン編)
魔国ゲイズペイン――
理と秩序よりも本能と暴力が支配する、恐怖と混沌の大地アスホール。そこに魔族によって築かれたこの国は、暴力と本能が正義となる苛烈な国。
この地において“人間”は明確に“劣等”とされ、冒険者として名を成すなど、夢物語以下の戯言。通常、魔族は人間よりも身体能力や魔力が高く、種族よって様々な特殊能力や固有スキルを保有している者が多く、それに対し、一部の冒険者等を除く一般の人間は戦闘力に劣ることから下等な種族と見下されていた。
首都アナルカントの一角にそびえる冒険者ギルド《血盟殿》は、魔国にある冒険者ギルドでも主要なギルドであり、血の契りを結んだ魔族たちが数多く集う、暴の殿堂。血と酒と怒号が渦巻く地獄の戦場さながらの場所である。
そのギルド内の奥に併設された酒場の広い空間には、昼間にも関わらず薄暗く壁に掛けられた魔物の頭蓋骨を利用したランタンが赤く揺れ、都会の喧騒に埋もれた狭い裏路地にある妖しい飲み屋街のように頭蓋骨の目や口から淡い光をはなっている。
そして今日も異形の魔族たちが酒と笑いに興じていた。
角の生えた魔族たちが巨大なジョッキをぶつけあい、耳をつんざくような笑い声を上げている。
「オレの一撃でヤツの首は三回転したんだぜ!」
「ははっ、てめぇの前じゃ流石の獣人様もただの肉袋だな!」
赤黒い肌の四本腕の巨漢がジョッキを掲げ、
尻尾を振りながら踊る女魔族に、下卑た視線を送る魔眼の男。
鋭い牙を覗かせるバフォメット族の若者たちは、テーブルを囲み、賭け事に興じている。
「クハハ! また負けたか、グラド! 次は腕一本賭けろよ!」
「ふざけんな、テメェの目がズルしてるんだろ!」
耳をつんざくような笑い声と、豪快なジョッキのぶつかり合い。
この空間には“日常”という名の暴力的秩序が確かに存在していた。
その中に一際大きな身体と六本腕を持つ異形の上級魔族【バーザック・グロウル】がテーブルに女の魔族を侍らせ、背中から黒煙を吐き出しながら赤黒い酒を煽り、下卑た笑いをあげながら大声で給仕のゴブリンに命令する。
「“地獄酒”もう一本持ってこい!早くしろ!!
」
痩せたゴブリンの給仕が震えながら応じる。
「・・・ああ!? 文句あんのか!?弱小ゴブリン!!」
「きゃははは!そのくらいにしてやんなよバーザック!w」
一瞬恨みがましい目をしたゴブリンはすぐに顔を伏せたが、そこにすかさずバーザックが突っ込みを入れる。そんな様子は此処での日常であり、そんな姿すら場の娯楽になっていた。
ここでは強さこそが全て、種族も命も、腕一本で決まる世界。
そこに――
コツ、コツ、コツ……
異質な足音が響いた。
瞬間、場が微かに揺れる。
「……ん?」
ギィィ……
ゆっくりと開いたギルドの扉から、ひとりの人間の男が入ってきたのだ。
「…………」
「……あ?」
「人間、だと……?」
笑い声が徐々に止まり、酒を注いでいた魔族たちが、眉をひそめて振り向いた。
その視線の先、ギルドの扉を開けて現れたのは――
最初は、誰もが理解できなかった。
異臭のように漂う“異物感”。
しかも武器も鎧も持たぬ軽装――
一人の“人間”だった。
それが、ギルドの中心に歩いてくる。
「……おい、見ろよ。ガチの人間だぜ」
「うせやろ……“下等種”が、ここに? 登録でもしに来たのか?」
「クク……愉快だ。誰があの肉塊を先に潰すか賭けるか?」
低く、粘つくような笑いが場に広がっていく。
いつしか音楽も止まり、給仕のゴブリンが手を止めるほどに場の空気は変わっていた。
黒髪に鋭い眼差しを宿し、無駄のない動きで中へと歩を進める。
手には武器も装飾もなく、ただ軽装のまま。
「まさか――本当に人間か? こんな場所に来るとか、命知らずもいいとこだな」
「クク……面白い。喰っていいか?」
ザワッと場の空気がざわめいた。
それまで自由奔放に騒いでいた魔族たちが、徐々に黙り、次第に冷たい目が集中していく。
「この俺たちの縄張りにヒトが来るとか、夢でも見てんのか?」
「クハハ、こいつ本当に登録しに来たんじゃねぇのか?」
「“血の橋”で血も流さず登録できるとでも?」
――冒険者ギルド《血盟殿》のルールはただ一つ。
「実力なき者は、死ね」
彼――如月一真は、その全てを無視して、まっすぐにカウンターへと進んだ。
「……冒険者登録を頼む」
受付に座っていたのは、美貌のサキュバス。だがその視線には、笑みも興味もない。
「へぇ、ずいぶんと面白い冗談ね。名前は?って、その前に、言っておくけど――」
サキュバスは鼻で笑いながら、指先で書類をトントンとつついた。
「“人間”は原則、登録不可よ。ここは魔族の国。人間の居場所なんてないわ」
「なら――“例外”を作ればいい」
その一言で、場の空気が完全に凍りついた。
「……おい、今、なんて言った……?」
「例外? おいおい、ふざけた野郎だ」
次の瞬間、席を蹴って立ち上がる巨体があった。
「面白ぇ……殺すぞ、人間!」
立ちはだかったのは、上級魔族【バーザック・グロウル】。
両肩から魔炎を吹き出し、黒鉄の大槌を引きずるように持った、炎の巨人。
「このギルドの裏にあるのは“血の橋!決闘のために作られた“橋”だ。ここで後退することは即ち戦いから逃げた臆病者と看做され敗者となる!逃げ道ないこの場所で力だけがすべてを決める。古来から数多の魔族、魔王が殴り合い殺しあってきた名誉ある血の祭壇。そこに立つ覚悟がねぇなら、今すぐ帰れ――下等種が!」
怒号が飛ぶ。
笑いが渦巻く。
バーザックが、大槌を振り上げる。
「人間如きが――この俺を倒してみせろ!」
その一言で、場が爆ぜた。
魔族たちが酒を手に、血戦を期待して口々に煽りを入れる。
「やれバーザック! ミンチにしろ!」
「奴の脳味噌で乾杯だ!」
だが――
ズンッ!!
突如として、凄まじい魔力の波動がギルド中を飲み込んだ。
目に見えぬ圧が、その場にいた全魔族の背筋を貫いた。1秒に満たない一瞬の出来事。
魔族達「な……っ!?」
主人公「・・・いいぞ。デカブツ。戦ってやる。・・・案内しろ」
それは魔族すら震え上がる、圧倒的魔の気配。しかしあまりに一瞬であったため、本能的に恐怖を感じたものの、多くの魔族は気のせいだと思うことにする。
そこそこの実力がある魔族達はなんとなく気付いたものの・・・
「・・おい、今の・・・」 「気のせいだよな」「あんなちっぽけな劣等種が・・・」
そしてモブ魔族
「おいおい・・・おまえらビビりすぎだろwww酒飲みすぎて頭おかしなったんじゃねえか?」
魔族達「うるせいぞ!モブリス!」「一番雑魚のおめえが出しゃばんな!カス!」「ふっw 負け犬ほどよく吠える」「まあいいや。とにかくこれは楽しみになってきたぜ!行くぞ!」
モブリス「かーおめえらわかってねえなあ。俺はいずれお前らなんぞおよびもつかない最強の魔族になるぜ!・・・
「・・・」
・・・ぐぬぬ・・・・あんの野郎ども!いずれぎゃふんと言わせてやるわ!ぎゃっふん!と・・・くそが」
既にモブリス以外の魔族達はブッチャーズブリッジに移動中で誰も聞いちゃいなかった
バーザック「・・・ブルッ(馬鹿な・・・手が震えている?この俺がびびっているだと? 一瞬、かつて相まみえた魔王様のような魔力が・・・いや、奴からは何も感じない・・・ふん、気のせいか・・・)
「・・・人間風情が。後から逃げようとしても逃げられんぞ?調子乗るなよ!」
---ブッチャーズブリッジ---
既にギルドの外からも話を聞きつけた野次馬の魔族達が橋の両端に集まり、占拠している。
魔族達「さっさとやれえ!」「ぶっ殺すぞ!人間!」「バーザックぶっ潰してくれや!」「ひゃひゃひゃひゃああああ」「むほほおおおお」「喰わせろぉおおぉ・・・」
もはやお祭り騒ぎである。普段から血に飢えている魔族達だが、それもそのはずで、実はここ数年新たに魔王となったヴァルゼノスによって人間になかなか手が出せない状況となっていたからだ。それは、魔王がとある人間の国と取引関係を結んだことにより、表向きには人間とも対等に付き合うようお触れがでているからであった。恐怖と混沌の大地アスホール大陸の長い歴史の中でも、前例のない規模の変貌を遂げつつある魔国であるが、まだまだかつての血で血を洗っていたころの名残りが残る場所も数多い。ここもそんな場所の一つである。
そんな中受付嬢のサキュバスが叫ぶ。「カズマ!私はあなたを応援してるわよ!もし勝ったらあなたの性奴隷にでもなんでもなってあげる♡でも負けたら、その時は・・・(干からびるまで血をチューチューするね。ニチャア・・・あなた、とっても美味しそう♡)」
モブリス「けっ!人間が勝つなど微塵も思ってないくせに、よく言うわwそんなことよりリリス!俺に一晩付き合えや!」
リリス「はあ~?あんたみたいなくそザコブサイクでキモイ奴と今こうして同じ空気吸ってるだけでも吐き気催してくるんだけど?あんたと過ごすくらいなら、血盟殿のゴブリンでも可愛がってた方がまだマシだわw・・・ところであんた誰だっけ?・・・おげえええええ」
魔族とはいえ、あまりに辛辣な物言いに、モブリスもそれを聞いていた周りの魔族達も口を閉じる。
その瞬間、司会のコールが始まる!
司会「よーし!じゃあ今回の対戦者を紹介ずるぜ!準備はできてるかお前ら!」
見物の魔族達「うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」
「東門我ら血盟殿が誇る、最強の一角!魔炎の巨人!バーザック・グロール!これまで、その剛炎と大槌により数多の戦士とモンスターが焼かれ血に濡れつぶされてブッチャーズブリッジの糧にされてきた!さあ、今日も新たな橋の餌がやってきたぞぉぉお!」
「対するは西門 どこからともなくやってきた謎の人間!命知らずのバカ!カズマ!素性の知れぬ人間がどうやってこの大地を囲う魔瘴を超えてやってきたのか!ほのかにすら漂わない強者感ゼロの装いは、間抜けそのもの・・・それともワンチャン想像を絶する強者が隠す真なる力の兆しかあぁぁwww」
魔族達「「「なわけねえだろぼけえええ!!!www死ねカス!!!」」」
いつの間にか、ギルドの判定員兼司会が現れて名前をコールしている。
司会P・ガイス「バーザックは分かっていると思うが、一応説明するぜ!」
バーザック「ああ。下等種には過ぎたる配慮だが、この地に眠る戦士達に経緯を払わねばならん。」
司会「ここはブッチャーズブリッジ。古来より数多の魔族が血で血を洗い、誇りを賭けて戦ってきた戦いの聖地!一度ここに立った者は逃げることができない!逃げる者は死あるのみ!さあ!戦士達よ。血を捧げよ!」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・
まさに今、魔国史上、いや世界史上前例のない一人の人間による「伝説」が、人知れず幕を開けようとしていた。




