侍女が語るお嬢様のこと
少しぶっ飛んだお嬢様が……
のっけからアレな単語があります。
楽しんでいただけたらうれしいです!
「駆け落ちも処女喪失もなしに王子妃にならなくて済む手段はないかしら?」
自室へ戻られたお嬢様はカウチにもたれかかってため息をつきながら、とんでもないことを口走ってくれた。
「まぁ! はしたないです、お嬢様」
処女喪失なんて言葉を口にするなどいただけませんよ。
「いいじゃない。ここにはあなたしかいないのだし」
「ダメです!」
お嬢様を表すのは、成績優秀、品行方正、容姿端麗の言葉。これを内外問わず通してほしいというのが私の願い。
対外的には非の打ち所がないのだが、実は特技が護身術、趣味は乗馬と庭いじり。特に乗馬はお散歩程度に留まらず障害物も早駆けも得意という、貴族令嬢としては少しお転婆が過ぎる。
剣術まで興味を示されなかっただけありがたいと思うことにしているのが侯爵家使用人全員の胸中だ。侍女長はたまに泣いていた。悲しいのか安堵なのかいまだにわからないけれど。
「そうよ! 見た目よ! ひどい火傷か大怪我をすればいいのよ!」
それ絶対ダメなやつ!!
いいことに気づいたみたいな笑顔をしないでくださいよ! かわいいけど!
「その結果、何が起こるか分からないお嬢様ではございませんよねぇ?」
私が右手を自分の首筋に当て、水平にして横に引いて見せるとお嬢様の表情がかきくもり、眉間にしわが寄っている。
そういうことだ。そんな大怪我をお嬢様が負えば当然、私のクビがとぶ。もしかすると解雇の意味だけでなく物理的にとんでしまう可能性もある。
「ミラに迷惑がかかるのは絶対にダメね」
私だけじゃないです、お嬢様。下手したら侍女長他のクビもとぶ。こちらも同様に物理的に以下略。
「ん〜、あとは、学院の成績を落とすことかしら? でも今さら遅すぎるし、わざとらしいわよね」
一気に難易度が落ちたがもう何も言うまい。
そういえば、駆け落ちするなら相手が必要だが。
「ところでお嬢様。駆け落ちがどうと先程仰ってましたけれどあれは」
「ええ、本当に最後の手段だけれど」
まさかそんな相手が!? え、私知らないんだけど誰ですか!?
「いざとなれば、ミラ、わたくしと駆け落ちしてくれるわよね?」
「駆け落ちは好き合ってる男女が結婚を許されずにする逃避行ですって!」
この回答に、私を選んでくれた嬉しさなのか、実は駆け落ちの意味をわかっていなかったことの哀しさなのか、はたまた別の感情なのか。私の涙はしばらく止まらなかった。
読んでいただきありがとうございます♪
次回は5/26を予定しています。




