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ガルツは腕の中のライネルの傷ついた顔と手足を見つめ、眉をひそめた。浅くない切り傷からにじむ血が白い肌を汚している。
「……お前らか」
ガルツが低い声でつぶやき、盗賊たちに視線を向ける。剣を軽く持ち直し、殺気を込めて睨みつけた。
「ひっ……!」
盗賊たちは炎牙獣を倒した二人の実力を目の当たりにし、恐怖に顔を引きつらせる。
「や、やべえ!逃げろ!」
「首領、どうするんですか!?」
「バカ!命が大事だ!」
盗賊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、あっという間に姿を消した。
「フン……」
ガルツは剣を鞘に収めると、軽々とライネルを抱き上げた。普段なら絶対に抵抗されるが、流石のライネルも今はそんな気力は無いようだ。
ライネルをそっと近くの岩にもたれかけさせると、ガルツもその横に座り、ライネルを優しく抱き寄せた。
「大丈夫か?」
ガルツが尋ねるとライネルは微かに笑みを浮かべ、力なく口を開いた。
「……手と足は縄を切るとき、手元が狂って……自分で切った」
「何やってんだよ、お前……」
ガルツが苦笑すると、ライネルはかすかに肩をすくめてみせた。
「貞操の危機で……集中できなくてな」
「チッ!あいつら、殺しておけば良かった……魔法で治るのか?」
「恐らく」
ライネルは痛む手を膝に置き、集中力を高めると静かに呪文を唱え始める。
「《ヒール・ライト》」
青白い光が手のひらからあふれ、顔や手足の傷を覆っていく。切れた皮膚がゆっくりと閉じ、血が止まる。
その様子を見ながら、ライネルは不思議な感覚を覚えていた。
——こいつがいると、なんでこんなに落ち着くんだろう。
「ふぅ……」
傷が癒え、ライネルが息をついた。だが、失血までは回復できない。頬がまだ青白い。
「疲れた……」
ライネルが呟くように言い、力なくガルツの肩にもたれかかる。
「おい、大丈夫か?」
「少し、寝る……」
ガルツが声をかける間もなく、ライネルは目を閉じた。
「……おやすみ、ライネル」
ガルツはライネルの温もりを感じながら、夜空を見上げた。星が静かに光り、森の中に静寂が戻っていた。




