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第18話 対峙

「俺はこの世界に染まってしまった。って、最近ふと感じるんだよな〜」




 ジオルターンの港の展望台から、俺は海に並ぶ大艦隊を眺めながら呟いた。


 周りには誰も人はおらず、あるのは夕日だけ。


 だが1人、彼女の耳には届いていた。




【そこに何か問題があるのですか?】




 いつもの『リアルフォルム』になりながら尋ねる。


 お母様の方針で、できるだけ『アイ』の事は秘密にしておこうという事になっているので、彼女はこういった誰もいない場所でしか顕現しないようにしている。




「俺は改めて、自分の影響力の高さってのを実感するよ。」




【立場が上の人間は、発言や行動に責任が伴いますので、当然の事では?】




「そう、その責任だよ。ほんと、お母様やヘレナ、イレーナの存在がいかに大きいか理解できる。1人じゃ無理だっただろうな。」




【確かにそうです、ですがこれはマスターの選択です。一度決めたなら、最後まで諦めず頑張って下さい。】




「はいはい、まぁぼちぼち頑張りますよ。」




 あのリアドリア訪問から数ヶ月が経過し、俺はついに11歳になった。


 とは言っても、10歳と11歳で明確にここが違うという点はない。


 せいぜい身長が高くなっただけ、と思ったら『アイ』に体重も数kg増えていますと突っ込まれた。




 ってそんな事はどうだっていい。


 国際情勢にも、大きな変化があつた。




 まず、ハーンブルク家(ジア連邦共和国)とグニルタ公国との間で秘密条約が締結された。交渉はすぐに終わり、ハーンブルク家の要求がすべてのまれる事となった。




 次に、ギャルドラン王国とサーマルディア王国が共に軍を国境付近に派遣し、睨み合いが始まった。


 それに応じてハーンブルク軍の『レインシリーズ』3隻を含む合計20隻の先遣部隊およそ1万5000の兵士がジオルターンに到着した。


 その情報は、すぐさまあえて放置しておいたスパイから、例の4カ国の下へ伝わり、その内の3カ国から合計3万5000がジオルターンに向けて進軍した。


 彼らは、国境沿いを流れるヴィスラ河を挟んで陣を築いた。




 ヴィスラ河は少し浅いため、『レインシリーズ』の通行は可能だが以前のような戦闘となると少し厳しい。そこで、河口付近をガチガチに固めた上で、大砲をヴィスラ河に多数設置した。


 こうする事によって、ハーンブルク軍は、敵の河を渡る手段を無くしたのだった。





 ✳︎





「動かないわね。いや、動けないとでも言うべきかしら。」




「まぁあちらさんも、本気で遣り合いたいわけじゃないと思うよ。多分、何かきっかけがないと無理な攻撃は行わないでしょうね。」




 2人で双眼鏡を覗いて、敵の陣地を眺める。だが、彼らには橋や船を作る様子が見られず、河から少し離れた所で何もせずに待っている部隊がほとんどであった。




「持久戦になれば、いくら本拠地が遠いと言っても兵力が少ないし、生産力があるこちら側が有利だよね?」




「そうだね。正直持久戦で負けはないかな〜でも、まだ参加していないもう一個の国がどう出るかによって、対応を変える予定なんじゃない?」




 戦争に参加すると予想されていた5カ国中、グニルタ公国とは秘密同盟を行ったため攻撃される可能性は低く、3カ国は部隊の一部は河沿いに軍を派遣したが、残りの1つの動きが正直なところ読めない。


 SHSからの情報では、兵士を集めているとの事だが、正直俺にはこの状況で有効な手段が思い浮かばない。




「どうするのよ。」




「今はここを動けないから静観かな。一応、河を渡ったり、渡ろうとしたら俺の所に情報が来る事になっているから焦って動くべきじゃないかな〜」




「じゃあしばらく待機って事ね。」




「いや、待機するのはあくまで歩兵だけで、海軍を使って集中砲火しようかな。ヨルクを呼んできてくれ。」




「はっ!」




 慌ててやって来たハーンブルク研究部漁業部門リーダーのヨルクに対して、俺はある命令を伝えた。




「それを、俺にですか?」




「あぁ、『時雨』と『秋雨』と黒船2隻を預けるからやってきてくれ。」




「はっ!承知致しました。」




 よし、これでいいかな。




【警告します。ヨルクだけでは、心許ないので、クレアを彼のサポートに付ける事を推薦します。】




 まじ?そんなにか?




【マスター、例の事件を思い出して下さい。】




 ・・・・・・確かに。


 クレアを補佐につけるか。いや、もういっその事クレアを上に立たせた方がいいまであるな。


 まぁいっか。




「クレアも頼む。ヨルクだけだと危なかっしいからこいつを補佐してやってくれ。」




「はい、レオルド様の仰せの通りに。」 




「おいおいそりゃーねえぜ、レオルド様。」




「だって、お前、俺が何したいか理解できてねぇ〜だろ?」




「うぅ・・・・・・」




 案の定クレアをサポートで付ける事に軽く文句を言ったが、俺が指摘するとすぐに口を閉じた。




「と言うわけだ、クレア。邪魔かもしれないが、こいつも頼む。」




「はっ!」




 翌朝、兼任でハーンブルク海軍の中で高い地位にいるヨルクを中心とした4隻の軍艦が、敵の全ての港を順次攻撃した。


 上陸はしていないものの、敵の船と軍事施設だけを狙って集中砲火を浴びせ、海上封鎖を行った。

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