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第4話 狂人

「レオルド様、準備完了しました。」




「こっちもオッケーです。」




「いつでもいけます。」




「じゃあ何かあると困るから一旦離れて〜」




「「「了解です。」」」




 梯子に登っていた男たちは、しっかりと装着されている事を確認すると、一斉に梯子を降りた。




 そんな俺たちを囲うようにして、多くの領民が集まっていた。


 現在の時刻は午後6時頃、夕陽が沈み始め、仕事場から家に帰る途中で何やら作業している俺たちを見つけて足を止めた領民たちが集結していた。


 お母様やヘレナ様、イレーナ、ユリウス達も揃っており、実験の開始を今か今かと待っていた。




「いや〜それにしても圧巻ですな、レオルド様っ!」




「あ、あぁ、そうだな。」




 忘れてた、今日はこいつもいる。


 アインは、頭のネジが何本か外れている事は間違いないが、その才能は俺やアイも認めている。


 俺が忙しくて(主にサッカーとか戦争とか)研究に携えない時は、彼が先導してくれている。


 実はかなり助かっていて、彼のおかげで時代が数年分ぐらい進んでいる。


 変人と天才は紙一重ってやつだ。




【馬鹿と天才は紙一重、では?】




 アインって、馬鹿ってよりは変人じゃね?




【確かにそうですね。発言を取り消します。】




「構想中であった計画が、やっと実現しますな、レオルド様。」




「まぁそれに関しては同意だな。これの発明は、この世界を変える。」




「はいっ!偉大なるレオルド様の歴史に、新たな1ページが追加される事間違いないですな。」




 アインは、まだ成功してもいないのにも関わらず、いつもの病気になっていた。


 だが、今の発言には1つ、『待った』をかけたい。




「それを言うならお前もだぞ、アイン」




「私ですか?」




「あぁ、ハーンブルク領の科学の発展に最も貢献していると言っても過言じゃない。誇っていいぞ。」




「レオルド様ぁ・・・・・・うっ、うぅぅありがどうございまず・・・・・・」




 俺は、素直に彼を褒めた。


 すると、突然泣いて喜び始めた。思えば、面と向かって彼に褒めたのはこれが初めてだった。


 釣られて、周りにいた研究員達も泣き始めた。


 天才とて人間、変人とて人間、彼らも悩むし苦しむ。そして、普通の人間と同じように、褒められたら喜ぶ。




 だが、今はまだその時じゃない。




「泣くのは後にしろ、まずはこれを完成させるぞ。」




「はいっ!レオルド様」




 ブカブカの白衣で、涙と鼻水を拭いた彼は、再び前を向いた。


 そんな彼の顔は、何だか無駄にカッコよかった。





 ✳︎





「始めてくれ。」




「了解っ!それじゃあいきますっ!」




「あぁ。」




 俺の合図によって、研究員の1人がレバーを倒した。


 すると、システムが作動して装置に電流が流れた。


 そして・・・・・・




「おぉー成功だーっ!」


「やったぞっ!」


「すごいっ・・・・・・」




 研究員や作業に携わった多くの人々が歓声をあげた。


 その様子を見ていた何も知らない領民達の反応は、驚きと疑問が半々ぐらいであった。




「すごい、なんだあれは・・・・・・」


「アレが最近噂になっていたやつか・・・・・・」


「夜なのに、眩しい?」


「風が吹いているのに、あんなに輝いているっ!」




 今回発明したのは電灯だ。


 実は、夜暗い事があらゆる方面でとても問題になっていた。


 単純に暗いというだけで、この世界では死活問題だったりする。


 明かりは基本的にランタンしかないし、夜は真っ暗だ。夜、道を歩いていたら石につまづいて転んだ、なんて話はよくある事だ。




 フィラメントを作ったり、水力発電装置を作ったり、電線を引いたりと、色々と大変であったが、やっと今日街に灯りが灯された。




 領民達からの温かい歓声を聞きながら、俺とアインは、感傷に浸っていた。


 特に、フィラメントの開発は難航した。


 焼けきれないように改良に改良を重ねて、やっと完成した代物だ。




「やりましたな、レオルド様。」




「まぁまだ耐久性とかのテストはしていないからまだわからないけど、多分問題ないだろうな。」




「えぇ、後は電圧の違いによる消耗量の差などの実験もやるべきだと思います。」




 推測では、1500時間ほど耐久できると考えている。改良を重ねたが、白熱電球の耐久力はそれぐらいだ。


 最初の方なんかは、1分ぐらいしか保たなかったので、大きな進歩だ。




「それじゃあ、俺たちの明かりで領内のあらゆる所を明るくするとするか。」




「了解です、レオルド様」




 そして俺たちは、大量の発電所を建設し、大量の電灯を設置し、街を明るくした。





 ✳︎





「アレが電球ですか・・・・・・」




「はい、最近、夜の街が暗すぎる事が問題になっていました。これは、我々の常識を覆すものになると思います。」




「まったく、レオルドはまたとんでもない物を作りましたね。」




「はい、流石奥様のご子息様でございます。」




 遠くから彼らの様子を見ていたレオルドの母エリナは、大いに驚いていた。


 事前に、どのようなものか説明はされていたが、電球と呼ばれるものがこれほど強い光を発するとは思わなかった。


 エリナは、電球の活用方法について、頭を悩ませた。

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