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第13話 side エリナ3

「エリナ様、当列車は15分後の18時00分出発、各駅停車シュヴェリーン行きでシュヴェリーンへの到着は19時45分頃を予定しておりますが、よろしいでしょうか。」




「はい、大丈夫です。」




「もしよろしければ、出発時刻を早める事もできますが・・・・・・」




「ふふふ、私は代理ではありますが、ハーンブルク家の当主です。その私が自分の都合で発車時刻を早める訳にはいきませんよ。」




「た、大変失礼しました。」




「では代わりと言っては何ですが、2人分の夕食の注文と最新号の新聞を2人分持って来ていただけませんか?」




「は、はい、すぐに。」




 テラトスタでの仕事を終えた私は、最近は1週間に2、3回ほど利用している『ハーンブルク鉄道』の最終列車に乗った。


 ハーンブルク鉄道には『普通』と『急行』の2種類が存在し、今私が乗っているのは『普通』の方だ。


『普通』はハーンブルク鉄道に存在する7つの駅全てに停車し、『急行』は4大都市の内のシュヴェリーンとテラトスタとミドールのみに停車するという物だ。


『普通』は始発の7時から1時間おきに終電の18時まで12本、『急行』は始発の6時30分から1時間おきに終電の17時30分まで12本存在する。




 列車は、先頭の機関車を除くと全部で7両編成で、その内の先頭車である2号車には、ハーンブルク家の人間もしくはハーンブルク家の家臣とその家族しか利用できないというシステムになっている。


 当然私は、専用車両である2号車に乗った。




「エリナ様、新聞の最新号をお持ちしました。」




「ご苦労様です。」




「夕食については、レオルド様が考案された『寿司』を予定しております。出発と同時にお持ちしますので、お楽しみにお待ち下さい。」




 また、2号車は車両の半分近くがキッチンとなっており、少し高価かつ数量限定だが、車内で料理が食べれるようになっている。




 私も、疲れて何か軽食が食べたいと思った時はよく利用するようにしている。




「わかりました。座っていいですよ、あなたも休んで下さい。」




「は、はいっ。」




 耳が、私たち人間よりも明らかに長いエルフの少女は、私の指示に従って座った。


 西の島国であるエルフ共和国と国交を結ぶため、半端人質のような感じでハーンブルク領に送られた少女、スピカさんは見習いだが最近は私の秘書をしてくれるようになった。


 レオルドが用意した、例のメイド服と呼ばれる可愛い服を見に纏い、スカートの中にはたくさんの護衛用の武器を装備してある。


 もう勉強によって、日常会話程度だが標準語も話せるようになり、少し危なっかしいが、一生懸命仕事に励んでくれている。




「ふぅ・・・・・・」




 水筒に入れておいたお茶を飲みながら、新聞を眺める。


 こうしていると、一日の疲れがとれるからだ。


 人口が増え、経済が発展した結果、私は以前よりもずっと忙しくなった。


 優秀な文官や家臣は増え、移動や生活は以前よりずっと便利になったが、私は1人である。




 科学研究所のアインと私の自慢の息子であるレオルドが共同で研究開発したモールス電信という新アイテムによって、ハーンブルク領における情報のやり取りは格段に早くなったが、王国や国防軍とのやり取りは未だに遅いままだ。




 そんな時、私の自慢の息子(2回目)であるレオルドはこのような事を提案した。





 ✳︎





「お母様、エルフ共和国から引き取ったスピカをお母様の護衛兼、補佐にするのはいかがでしょうか。」




「ハーンブルク家がエルフを亜人として差別しない事をアピールする為ですか?」




「それもありますが、最近のお母様は疲労が溜まっているように感じます。スピカは少し危なっかしいですが、努力家で信用のできるエルフです。彼女にお母様のサポートを任せるのはいかがでしょうか。」




「なるほど・・・・・・わかりました、彼女が進級するタイミングで私の秘書に任命する事にします。」




「わかりました。」




 そう言って、私の自慢の息子(3回目)は、少し笑顔になった。どうやら本当に心配してくれていたようだ。


 息子に心配されるなんて・・・・・・私も年老いたのかもしれない。


 でも、せめて孫の顔を見るまではハーンブルク家を支えたい。




「では久しぶりに、一緒にお風呂でも入りましょうか。身体の疲れを癒しましょう。」




「えっ!お、お母様とですか?」




 恥ずかしいからか、私の自慢の息子(4回目)の顔がどんどん赤くなっていくのがわかった。


 今年で9歳になり大人になったなと思っていたが、今でも幼い心が残っているようだ。




「さぁ行きましょう。お風呂の用意はできています。」




「は、はい、わかりました。」




 その後、久しぶりに2人きりで入る風呂を大いに楽しんだ。


 最初は緊張していた私の自慢の息子(5回目)であったが、共通の楽しい話題であるサッカーの話になると大いに盛り上がった。





 ✳︎





 そんな出来事を思い出しながら、私は電車に揺られる。


 新聞を見ると、私が応援しているRSWが3-2で競り勝ったと報じられていた。




「レオルドも順調のようですね。」




「はい、レオルド様は現在、対教国戦の最終調整を行っている所だと聞いています。」




「あの子ならきっと大丈夫です。何故なら・・・・・私の自慢の息子ですから。」




 私は確信を持ちながらそう言った。

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