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第1話 覚醒

 停戦から5ヶ月が経過した。


 停戦条約締結によって、ハーンブルク領とサラージア王国の争いには終止符が打たれ、両軍は完全に撤退した。


 首都シュヴェリーンでは、戦勝記念パレードが行われ、多くの領民が集まり、勝利を喜んだ。




 ハーンブルク領とサラージア王国の間で結ばれた『ドレスデン停戦条約』に則ってサラージア王国内の3つの湾岸都市と4つの資源地帯が割譲された。少し歪な国境線になってしまったが、誰がどう見てもハーンブルク側の勝利であった。


 この戦いにおけるサラージア王国側の被害者は民間人を含めると3万人を超え、対するハーンブルク側の被害者数は僅かに百数十名であった。




 そして、サラージア王国には更なる悲劇が起こる。平民優遇派のリーダーであるベルダルスを中心に、反乱を起こし『ジア共和国』の建国を宣言した。


 当然、サラージア王国はこれを否定し、泥沼の内乱状態になった。




 初めは、兵力差的にやや劣勢であったジア共和国側であったが、ハーンブルク領からの支援もあり、少しずつ戦線を押し上げていった。


 持久戦になれば、後ろ盾がないサラージア王国は必敗で、あと半年ほどで決着がつくだろうというのが『アイ』の予想だ。




 そして、もう一つの戦線であるトリアス戦線はというと、睨み合いを行いつつ、たまに小規模な戦闘が起こる、という状態を繰り返していた。


 というのも、サーマルディア王国とトリアス教国の間には、巨大な河とジャングルがあり、両方とも大軍の移動には適していない。


 多少の小競り合いは発生しているものの、本隊同士が正面からぶつかるような大規模な戦闘は発生していないらしい。


 おそらく泥沼化するだろうというのが『アイ』の意見だ。





 そこで、俺はハーンブルク領内に力を入れる事にした。結果として、ハーンブルク領内では色々な事が変わった。




 まず、人口が増えた。


 ハーンブルク領内の総人口は100万人を超え、サラージア王国内の3分の1が集まる大都市圏となった。


 シュヴェリーン、テラトスタ、ミドール、リバスタの4大都市はそれぞれ5万人ずつぐらい


 人口が増え、シュヴェリーンに関しては40万人にも上った。


 王都の人口である50万人には届かないものの、経済規模や生産量、労働人口などは間違いなく国内一位、世界でも10位以内には間違いなく入っている。




 次に、シュヴェリーンからテラトスタまでの道が整備&拡大され、その間にミドールのような都市が増えていった。現代日本でいうところの、名古屋県や横浜県、静岡県みたいな感じだ。




 蒸気機関に関しては未だに秘匿にされているが、画期的な製鉄技術の存在は少しずつ公になり、コークスの製法は公開していないものの、ハーンブルク家が作ったコークスを商人が買い、鉄を作るという動きが活発になった。


 同様に糸に関しても、ハーンブルク家が作った糸を商人が買い、服や布にするという産業が生まれ、最近では早くも人手不足に陥っているらしい。




 ハーンブルク領では、年間4000億マルクの領内予算の内の25%はあらゆる分野の研究費に費やされている。


 最近では電気の研究が最先端で行われており、都市に電灯が付く日も近いかも知れない。




 また、子供兵舎だけでなく、人口の増加とともに沢山の学校も開校され、都市は飛躍的に発達していった。




 2年前に俺が主導で行った『子育て支援法』によって、出生率は驚異の5.0を超えており、次世代を担う子供達が年々増えている。


『子育て支援法』は、15歳以上35歳未満の全ての女性に8万マルクが付与され、貸付金は子供が生まれる毎に返済金の4分の1が免除され、4人産めば全額が免除されるというものだ。




 少しは影響しているだろう。




 そして最後に、俺にも大きな変化が起きた。


 今日誕生日を迎え、8歳となった俺は魔法式の存在を感じ取れるようになったのだ。




【どうですか?】




「う〜ん感じるには感じるけど、いまいち使い方がわからないんだよな〜」




 8歳になったら、自然と使い方が頭の中に入り、練習すれば少しずつ使えるようになるという話であったが、現段階ではそれが嘘だったと言わざるを得ない。


 朝食を食べ終えた俺は、早速実験を開始する事にした。




【とりあえず、魔力を流して見て下さい。反応を見ましょう。】




「わかった。」




 僅かに感じるこの感覚を、自分のそばへと引き寄せるイメージ。


 少しずつ、魔法式に自分の魔力を流して、形にする。




「あ、でき、た?」




 う〜む、何も起こらん。


 そっちはどう?




【・・・】




 アイ?大丈夫か?




【レオルド様の魔法式の効果を完璧に把握しました。】




「うわっ!びっくりした。いきなり出てくる、な、よ・・・・・・嘘、夢?」




【いいえ、どうやら現実のようです。】




 俺の目の前に、ここにはいるはずのない青い髪の少女がこちらを向いていた。


 もちろん初対面だ。


 でも、何故かわかる。




「お前、アイなのか?」




【はい、マスター。正真正銘、アイです。】




「実体があるのか?」




 試しに頭を触って見ようとすると、確かにそこに存在している事を感じた。




【これからは一緒に並んで寝られますね、マスター】




 魔法式に魔力を流している間だけではあるが、俺は『アイ』を実体化させる事に成功した。


『アイ』が何者なのか、謎は深まるばかりであった。




 ちなみに、何故かメイド服を着ていた。


 残念・・・・・・

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