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第4話 孤島

 俺は、集落の中心部へと案内された。


 木の椅子に3人並んで座らされ、村長と呼ばれる老人と相対する。


 村長の他に、怖そうなエルフが数人と先ほどのスピカという名前の少女が並んだ。


 対するこちら側は、7歳児、8歳児、10歳児と、中々印象的なメンツである。


 正直まともに取り合ってもらえるか心配であったが、交渉が始まった。




「まずは自己紹介から始めよう。私はこの集落の村長であるガルラスだ。私の後ろにいる者達は、私の護衛だと考えてくれ。そして、知っての通り、私は君たちの言葉で言うところの亜人だ。正確にはエルフだな。」(亜人語)




「俺はレオルド・フォン・ハーンブルクだ。この島からずっと東に進んだ先からやってきた。そして、こちらは人間だ。」(亜人語)




「東からか・・・・・・何という国から来たんだ?」(亜人語)




「サーマルディア王国だ。だが今回は、王国代表としてではなくハーンブルク家代表としてやって来た。こちらからも質問だ、この島がどういう扱いになっているのか知りたい。」(亜人語)




「いいでしょう、この集落がどのようにしてできたのかからお話します。」(亜人語)




 そして、ガルラスはここに住むエルフ達がどういう存在なのかを聞いた。


 話では、およそ200年前からこの島に住んでいるらしい。


 昔、大陸の東側、主に亜人が暮らす地域で大きな戦争が起きた。孤立主義を進めていたエルフの一族ももちろん巻き込まれ、何とかこの島に流れたそうだ。全員が避難民というわけではなく、半分以上が元々この島で暮らしていたエルフ達らしい。そして、大陸に残った仲間のエルフ達の救出にも成功し、今まで大陸とは距離をとって生活をしていたらしい。


 この集落の現在の人口はおよそ3万人で、同じような集落があと2つほどあるので、この島には合計10万人ほどが暮らしているそうだ。


 残りの2つの集落とも仲良くやっているそうで、交易なども行なっているらしい。


 ちなみに、報告では島は4つと言っていたが、正確には俺たちが今上陸している大きな島が1つと孤島が周囲にたくさんあるらしい。




 また、小笠原諸島のように、点々とした島が大陸の東海岸まで続いており、大陸までのおおよその距離もわかった。




「と、こんな感じだ。正直、島には何もないのでとても取引が行えるとは・・・・・・」(亜人語)




【むしろ好都合です。まずは領土を要求しましょう。全土併合してしまうのが1番楽ですが、それだとおそらく通らないので沿岸部を要求しましょう。】




 沿岸部に港を作れば、交易が可能だ。


 往復で2週間もかかってしまう場所にあるが、それ以上の価値があると考える。


 何よりここは、王国に発見されていない、つまり色々と悪巧みが出来そうな場所であるという事だ。




「では、この島の沿岸部に拠点を作っても何の問題もないですか?」(亜人語)




「一応、私たちはこの島全体を支配しているわけではないから拒否する事はしないが、こちらにも生活がかかっている。安全性がなきゃ却下だな。」(亜人語)




「わかりました、では沿岸部の割譲の代わりに安全保障条約を締結すると共にこの島を国家として認めます。」(亜人語)




「それはどういう事だ?」(亜人語)




「簡単に言えば、この島が亜人もしくは人間に攻撃された場合、我々ハーンブルク家が共闘をするという事です。代わりに、沿岸部を我々がもらいます。」(亜人語)




 俺は、どこかで聞いた事があるかのような提案をした。将来的にここに軍隊を配備する事ができるのは大きい。海戦などが行われた場合は間違いなく重要拠点となるだろう。


 それだけではない、エルフ達に労働力として働いてもらう事もできる。




「なるほど、こちらとしてはありがたい話だ、だがそちらにメリットがない気がするが・・・・・・」(亜人語)




「大丈夫です、エルフと交易ができるならそれぐらいは安いものです。」(亜人語)




 と、そんな事を言ったら先程まで黙っていたイレーナが耳打ちをして来た。


 どうやら心配であったようだ。




「レオルド、本当にこれでいいの?これじゃあ私たちの利益がないんじゃない?」




「大丈夫、方針は既に決めてある。これでも十分利益は出るはずだ。それに、領土は少ない方がいい。王国への報告が楽だし。」




「なら文句はないわ。私はもう少し搾り取るべきだと思うけど・・・・・・」




 少し不安があるようだが、ここは引っ込んでもらう。俺の計算アイでは、なんとかなるはずだ。




「何か相談があったようだが聞かないでおこう。では最後に、最も重要な事を聞かせてくれ。」(亜人語)




「何でしょうか。」(亜人語)




「人種の違いだ。古来より、人間と亜人は手を取り合えない者たちだ。それが今になって、急にお互いを認め合えるとは思えん。私はともかく、集落の者たちが心を動かすはずがない。」(亜人語)




 もっともな話だ。人間は亜人を嫌い、亜人は人間を嫌う。当たり前の事のように言われ続けている事だ。


 この世界において、亜人と人間で軍事同盟を結んでいる国はあるが、友好な関係ではない。




 正直この問題には秘策はない。今回も、お得意のサッカーを広める作戦を行う予定だが、すぐに効果は出ないはずだ。


 結局のところ、この問題を解決するには時間しかないのだ。




「少しずつ歩み寄るしかないと思います。現状、これといった策はありません。」(亜人語)




 俺は、正直に答えた。


 すると、ガルウスからの返答は意外なものだった。




「そうか、ならひとまず交換で人質を出す事にしよう。私のひ孫であるスピカを預かってほしい。」(亜人語)




「「はい?」」




 どこかで聞いた事があるセリフに、俺は思わず変な声を出してしまった。

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