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第3話 美術

 以前、俺は物流の圧迫を懸念して、それを解消するために新たな路線を作り、テラトスタに人や物が集中しないように務めた。結果として、今度はミドール工業地域周辺が圧迫された。


 と、いうのもジア連邦共和国内で採れた鉱山資源をミドールへと送る際に、路線を変えるために一度シュヴェリーンを経由するか、船を用いてテラトスタへと送らなければならなかった。


 それを受けて、ハーンブルク家は『ミドール』と『サラ』を結ぶ新たな路線を建設する事になった。




 そんなわけで俺は鉄道の建設状況の視察をしつつ、先日行ったある事の状況を確認するためにミドールを訪れていた。




「ようこそいらっしゃいました、レオルド様、それにヘレナ様も。」




 まず最初に訪れたのは、ミドールに建てられる事となった駅だ。ミドール駅は、シュヴェリーンとは違い新たに路線を加える予定が無かったため、急遽ハーンブルク鉄道の横に鉄道の駅が作られる事となった。




 新ミドール駅を訪れると、1人の女性が俺たちを出迎えた。




「久しぶりだな、クーネルさん」


「お久しぶりです、クーネルさん。」




「お二人ともお元気そうで何よりでございます。本日は確かに、工事の進捗状況の視察でしたよね。」




「あぁ、よろしく頼む。」




「承知いたしました。どうぞこちらへ。」




 俺たちは、クーネルさんの後に続いて道を歩く。クーネルさんというのは、ハーンブルク領鉄道統括庁におけるNo,2ぐらいの立ち位置の人だ。


 彼女もハーンブルク領にあるエリート学校出身であり、あの天才マッドサイエンティスト、アインと同級生らしい。


 元々は官僚の1人であったが、そこで能力が評価され、統括庁副長に抜擢された。例外のアインを除けば、同期の中で最も出世している人だ。


 ちなみに、そんなクーネルさんだが欠点として酒にかなり弱いらしい。しかも、よく飲むのに弱いというダメな感じだ。




 クーネルさんの案内に従ってしばらく進むと、ほぼ完成された駅が見えて来た。


 青を貴重とした様々なタイルが使われており、多くの工場がある中で一際目立っていた。


 何というか、かっこいい。




「何というか、立派な駅ですね。」




「ハーンブルク領美術学校を卒業した優秀なデザイナーにデザインしていただきました。伝えれば、彼女も喜ぶと思います、ヘレナ様」




「是非お願いいたします。」




 どうやらヘレナは、新ミドール駅のデザインを気に入ったようで、そんな感想を述べていた。




【美術学校を作ったかいがありましたね。やはり、素人ではなくプロに任せるに限ります。】




 悪かった、俺にデザイン能力が無くて。




【いえ、悪いとは言っていませんよ。アレはアレで芸術なので。】




 おいおい。




 と、アイはいつもの冗談を言うが、俺がデザインしたハーンブルク鉄道の駅やバビロン宮殿なんかは、思ったよりも反応は良い。この前、ハーンブルク領広告庁が出していた新聞によると、ハーンブルク領のベストスポットランキングによると、バビロン宮殿は3位だった。もちろん、忖度などは無いはずだ。


 ちなみに、1位はテラトスタ軍港で、2位はハワフシティの海岸だった。やはり、自然の美しさには負けるみたい。




 というわけで俺たち2人は、クーネルさんのアドバイスを聞きつつ、新ミドール駅を見て回った。実際に、利用する側の目線になって使いやすさなどを再確認したり、何処に何を設置するかなどの確認も行った。


 まぁ正直、必要ない気もするが、俺が褒める事によって、『レオルド様絶賛』という記事が明後日辺りの新聞に載る事になるので、悪くは無い。




「楽しかったよ、それと色々と勉強になった。俺から指摘するようなところは何も無いから、このまま続けてくれ。」




「承知致しました。」




 クーネルさんと別れた俺たちは、工場群の方へと向かった。駅の視察も大事だったが、正直俺とアイにとってはもう1つの事の方が大切であった。


 俺がミドールを訪れているという事が広まり、多くの労働者や住民がここにやってきていたので、手を振りながらしばらく歩くと、やっとの事で目的地にとたどり着いた。




 立派な屋敷に入り、案内に従って歩くと、豪華な客間に倒された。中に入ると、これから商談をする相手がそこに座っていた。




「調子はどうだ?」




「ぼちぼちでございます。普通よりも少し良いぐらいでしょうか。」




「お前のぼちぼちは全くアテにならないからな。」




「ははは、確かにそうかもしれませんな。」




 目の前に座る、何処にでもいそうな初老のお爺さんは、ニヤリと笑いながら答えた。


 この人はハーンブルク領でも指折りの大商会である『ライデン商会』の総支配人であり、俺の中でもかなり高い評価を下している人物だ。特に、彼のもつ嗅覚は驚異的で、これまでに何度も俺やアイを驚かすような事をしている数少ない人物の内の一人だ。


 それで、商談というのは・・・・・・




「そっちに預けた、製鉄工場の方は順調か?」




「はい、順調でございます。最初の方は色々と苦労しましたが、色々な工夫を施した結果、最近ではかなり順調となっております。」




「そうか、ならばやはり、お前たちに任せたのは正解だったかもな。」




 目の前の男の報告を聞いて、俺は満足しながら笑った。

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