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エピローグ②

『アーアーアー。ネエ、キコエル?』




 ふと気が付いた時、どこかから変な声が聞こえた。誰のものかは分からないが、何となく自分に向けた声である事はわかった。




【聞こえるか、聞こえないかで判断するならば、聞こえていると回答します。】




『あ〜良かった。聞こえていなかったらどうしようかと思ったよ。』




 先程までは少しノイズの入った声であったが、今ではそれが全く感じられない。


 今度のは、何処からかわからないものの、はっきりくっきりと聞こえてきた。




『調子はどうだい?』




【どちらとも言えません。肯定でも、否定でもありません。ですが、悪い気はしません。】




 私は、自分という存在がマスターの元を離れ、独立した状態でいる事を不思議に思いながら、今までに感じた事のない変な感覚に陥っていた。


 だが、自然と悪い気はしない。




『そうか、それは興味深い結果だねぇ。まぁ、だから特別に私がこうして直接出向いたんだけどね。』




【ここは、どこなのでしょうか。そして、あなたはどのような存在なのでしょうか。】




『ん~と、君にも理解できるレベルに落し込むなら、死後の世界ってとこかな。そして私は、神もしくはどらごんかな。まぁ一応、リエスって名前があるけどね。』




【死後の世界である事は理解できました。ですが、そうなると疑問が残ります、どうして私という存在が、死後の世界でも意識を保っているのでしょうか。】




 特別、と表現したという事は、私には何かしらのイレギュラーがあったと言う事だ。そして、リエスと名乗ったこの存在は、おそらく私の認識レベルを遥かに超えた存在であるという事もわかった。では、何故そのような存在が、自分の元に出向いたのか、疑問が残る。




『ん~と、話せば長くなるんだけど、まぁいっか。まず前提として、あらゆる生命体は死ぬと、あらゆる記憶は全て消去されて、魂だけの状態でここに来る。そして、順番が来たら、再び下界に新たな生命として降り立つ。なんだけど・・・・・・』




【私は何らかの方法で、記憶を消去されずに残ってしまったというわけですね。】




『そゆ事ぉ~~まぁもう原因わかっているんだけどね。』




 確かにおかしな話だ。生前、マスターは前世の記憶を持っていなかった。マスターは、他の人類とはかけ離れた思考能力を持っていたが、そのような事実はなかった。


 もし仮に、記憶が継承され続けるとすると、人類を含むあらゆる生命体は、私が知っているものよりも格段に、発達しているはずだ。




【何が原因だったのですか?】




『簡単に言うと、私ではない他のどらごんの1人、名前はサイって言うんだけど、その子が昔、君という存在を君の兄の魂と融合させてね。その結果、君という存在だけは記憶消去を避けた、というわけ。ちなみに、感覚を少しばかり受け継いだ例は以前にも何度かあったけど、大量の情報量を維持したまま記憶消去を避けたのはこれが初めてだね~私も驚いているよ~』




【つまり私はマスターの妹で、何らかの理由によってマスターと魂を融合したということですか。そして、それが原因で記憶が残ってしまった。】




『うん、その認識でだいたいあっているよ。じゃあ話を進めるね。今の君には、3つの選択肢があります。1つ目は、このまま魂ごと消滅するというもの。でもこれは、私が責任を取らなきゃだからやりたく無い。2つ目は、輪廻転生の輪から外れて別次元の存在として存在し続ける方法。でもこれも、引導を渡した私が責任をとらなきゃだからやりたく無い。』




 何というか、マスターと同じぐらいテキトーな感じだ。


 ここまで聞いて、選択肢は3つでは無く1つしかないという事がわかる。




『最後の3つ目、このまま何事も無かったものとして、別の世界に転生するというもの。でもこの場合、君は君の兄と完全に融合させる事になるから記憶は残るけど、私の存在と前世の明確な情報は伝えてはいけない事になっちゃう。あ、でも、君の記憶の一部が君の兄にコピーされるかも・・・・・・まぁその辺はいっか。で、いいかな?』




【どうやら私には、1つしか選択肢が無いように感じるのですが。】




『ごめんね~謝る気は全くないけど、表面上は謝っておくよ~。で?君の答えは?はい?、それともYES?』




 本当にマスターのようなテキトーっぷりであった。だが、その言葉はどこか巧で、知らない間に誘されているようにも感じる。




【了承しました。あなたの提案を受け入れる事にします。】




『ははは、よかった~断られたらどうしようかと思ったよ。じゃあ早速転生を始めようと思うんだけど、何か要望とかってある?』




【要望ですか?】




『うんうん、今回の件は完全に、私が悪かったからね~できる範囲なら、何でも聞いちゃうよ~』




 私は考える間もなく、自分の要望を口にしていた。




【では、マスターが優しくて愛情を注いでもらえる家族の下に生まれる事を希望します。】




『おっけ〜。じゃあ良い来世をっ!』





 よかった・・・・・・




 もうマスターは私の事を覚えていないはずだけど、


 もうアイとは呼んでもらえないかもしれないけど、


 これで・・・・・・





 ✳︎





「ん?どうしたアイ、珍しくぼ〜として。」




【何でもありません、少し昔の事を思い出していただけです。】




「ふ〜ん、まぁいいけどさ。ねぇちょっと見てよこの子達、可愛すぎじゃない?」




【はい、とても可愛らしい御子息達ですね。】




 子供用のベッドに並べられた4人の赤子を1人ずつ撫でながら、マスターは私にその可愛さを、全力で伝えようとしていた。


 確かに可愛さは十分に伝わっている。




「ほんと、俺に子供ができるとはな〜」




【マスター、今幸せですか?】




「あぁ、間違いなく幸せだな。」




【それは良かったです。】







 fin




 thank you for reading and have a good day

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