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第8話 言葉

 イレーナを家族の所へ返した俺は、次なる親子の所へと向かった。




 ユリアの所へ行くと、リトア王国からの参加者に囲まれて楽しそうに会話していた。


 久しぶりに再開した家族や友人との会話を楽しんでいるそうだ。


 ちなみにリトア王国に関しても、ユリアが招待したいと言った人物に対しては全員に招待状を送ってある。流石に、戦争で負けた相手の国で、問題行動はしないだろうと判断したからだ。


 多少恨まれているかもしれないが、その時はその時だ。




【いつでも、回避や解毒は可能です。即死魔法の類が飛んで来ても、レジストもしくは電気ショックで蘇生させます。】




 な、なるほど、それは安心、なのか?




【お任せ下さい。】




 頼りにしているぞ、相棒。




【YES、マスター】




 アイという最強の味方がいる俺は、堂々とユリアの隣に立った。


 俺が隣に立った事で、自然と注目が集まった。




「あ、旦那様。」




「やっユリア、楽しんでいるか?」




「はい、とても楽しくさせて頂いています、旦那様。」




 俺が尋ねると、ユリアは先ほどプレゼントしたイエローダイヤモンドが埋め込まれた指輪を撫でながら答えた。どうやら、相当嬉しかったようで、先ほどからずっと気にしている。もちろん、他のお嫁さんたちも同様だ。




 結婚指輪を用意するに当たって、もちろん何個か宝石店を訪れてみたりはしたのだが、欲しかったものは無かった。そこで、これらの指輪は全てアイが作ったものだ。


 お爺様経由でガラシオル帝国から原石を輸入し、自分で加工したものだ。もちろん俺は、ダイヤモンドの作り方などいっさい知らなかったが、アイの指示通りに一生懸命加工した。


 最終的な手直しなどは宝石商に任せたが、世界に一つだけの心が籠った贈り物ができあがった。




 おそらく、この世界の誰も、あれほどの輝きを放つ宝石を見た事がある人はいないだろう。




 やはりと言うべきか、俺の渡したダイヤモンドが気になるようで、周囲にいた女性陣の注目が集まっていた。


 ちなみに、儲け話があるのでは?と目を光らせていた商人達には、とりあえずたまたま拾ったと誤魔化しておいた。




「娘を大切にして下さっているようで安心しました、レオルド様。こんな素晴らしい指輪まで頂いたようで・・・・・・」




 そこまで言いかけ、俺の方へと近づいて来たジュンセさんは両手で俺の手を取ると、しっかりと握り締めた。




「どうかレオルド様、娘をよろしくお願いします。」




 それは、父親としての顔だった。


 正直、リトア王国で行われた話し合いの時から、だいぶ印象が変わった気がする。前は、正直に言えば少し頼りない若い王太子、という印象だったが、国が一度崩壊して、根本からひっくり返ったためか、少し男らしくなった気がする。


 まぁ、15歳が何を言っているんだ、って話ではあるが・・・・・・




 俺は、言葉を選ぶより先に、自分の気持ちを正面から伝えていた。




「はい、一生大切にします。」




 俺の言葉を聞いて安心したのか、先ほどの真剣な顔から一転、凄く安心した顔になった。


 そして、俺とジュンセさんの会話を聞いていたユリアの顔が、いつの間にか赤く染まっていた。




「ふふっよろしくお願いします、旦那様♪」




 その後、ユリアと2人でリトア王国からの参加者への挨拶回りを行った。そして、これが俺の守るべき笑顔なんだ、と再認識した。


 かなりの人物が参加していて手間取ったが、1時間ほどかけて周り終えた。




 ユリアにキスをすると、俺は最後の1人のもとへと向かった。





 ✳︎





「あ、レオルド様だ。」


「こんばんは、レオルド様」


「ごきげんよ、レオルド様」




 俺がクレアの方へと歩き出すと、本人よりも先に周りにいた家臣達に気付かれた。1番近くにいたアインが、俺に話しかけた。




「おぉレオルド様、挨拶周りは終わったのですか?」




「あぁ、一生分挨拶した気がする。」




 もうやりたくないというのが、本音だ。




「ははは、今日からはレオルド様は御当主になられます。当然、パーティーなどに呼ばれる回数は増える事になりますよ。」




「お前も人の事言えないぞ、アイン。できるだけ面倒事は避けるようにしているみたいだけど、お前をパーティーに誘いたいという人物は多い。その内断れなくなるかもな。」




「ははは、それは困りますね。」




 アインは、少しマジなトーンで言った。どうやら本当に参加したく無いらしい。


 まぁ俺としても、アインには研究に没頭してほしいので、アインの自由時間(研究タイム)はしっかりととれるようなスケジュール管理をしている。


 少し気持ちが落ち着いた俺は、人の輪の中で満遍の笑みを浮かべながら彼女の友人と楽しそうに談笑しているクレアを見つけた。


 タイミングを見計らって会話に混ざる。




「楽しそうだな、クレア」




「はい、楽しんでいます、レオルド様」


「こんばんは、レオルド様」


「初めまして、レオルド様」




「2人もこんばんは、ちょっとクレア借りるね。」




「はい、どうぞ。」


「わかりました〜」




 クレアは、孤児院時代からの友人を2人、今回のパーティーに参加させていた。最近は、会える日が少なくなっていたらしいが、いまだに仲の良い友人として、相談にのってもらったりするそうだ。


 クレアは、どちらかと言うと相談を受ける側らしいが・・・・・・




 周りの人には、ちょっと休憩するとだけ告げて、クレアを連れてパーティー会場を抜け出した俺は、中庭へとやって来た。


 中の騒がしい雰囲気から一転、ここは静かで肌がひんやりするような風が吹いていた。




 風に当たらないように気をつけながら、2人で揃って腰を下ろした。




「なんか、色々とあったな。」




「そうだね。私もあの日から、ずっと走りっぱなし無い気がする。」




 思えばこの10年間、ずっと走り続けていた気がする。万歩計があれば、余裕で1000万歩は超えているだろう。




「こんなにはちゃめちゃな夫で悪いな。」




「ん〜ん、そんな事ない。私はレオルドの妻になれて、嬉しいよ。」




「そうか・・・・・・これからも、頼むぞ、クレア」




 お礼のつもりで、俺は彼女を正面から抱きしめながら耳元で囁いた。


 彼女もそれを望んでいたようで、彼女の手に力がこもるのを感じた。




「ねぇ・・・・・・」




「しばらく、こうしているか?」




「う、うん・・・・・・」




 他の3人と違って、あまり賑わいの少ないひと時だったが、悪くはなかった。

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