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第17話 帰還

 空気が美味しい。


 成分的にはあまりわからなかったが、故郷の空気というものは、やはり違うものがある。


 シュヴェリーンに着いた事は、寝ていたのにも関わらず、すぐに気が付いた。




「着いたか・・・・・・」




「気がつきましたか、レオルド様。」




「今はどのぐらい?」




「そうですね、夕方ですが、まだ日は沈み切っていません。」




「そうか・・・・・・」




 馬車の中から外を覗いてみると、遠くの方に懐かしの我が家が見えた。


 どうやら今は夕方らしい。というのも、この世界には時計がない。外国には似たようなものがあるらしいが、この国の国民には、時刻という概念を知らない人間すらいる。


 というか、時刻という概念が無いのは困るな。日時計でも作ろうかな。




【領民に、時間という概念を勉強させましょう。この世界における一年は360日、12ヶ月となっておりますので、それに合わせて前世同様24時間で時間を作ります。】




 ・・・・・・詳しい事はよくわからないから後よろしく〜




 と、めんどい事は全て『アイ』に任せて、俺は楽しい事だけを考えるのであった。





 ✳︎





 ハーンブルク領の領民の1番の楽しみといえば当然サッカーである。


 最近では、大人から子供まで、幅広い年齢の領民がサッカーを楽しんでいた。


 最初は2つしかなかったサッカー場も、僕たちの指示で作られたサッカー場が領内に30個、領民が勝手に作ったものも含めれば50個以上あると思う。


 その分、サッカーボールの売れ行きも順調で、今では各家庭に一個以上ある勢いだ。




「これがサッカーボール・・・・・・」




 ハーンブルク家が引き取った現宰相の娘イレーナも、サッカーというスポーツの噂は聞いていたらしいが、実物を見たのは初めてらしい。家の庭に作らせた、芝生の練習場でボールを蹴り合う。


 ちなみに俺の婚約者となった『ヘレナ』は成人(8歳)になるまでは王都に残るらしい。ちょくちょく遊びに来るともいっていたが、今は一旦置いておく事にする。


 めんどい事は後回しだ!




 昨日は領地に戻って来たばかりという事もあり疲れていたが、一晩寝ればこの通り元気いっぱいだ。


 早速俺は、イレーナにサッカーを教える事にした。




 とは言っても、俺自身もそんなにサッカーが上手いわけではないが、基本ぐらいならわかる。とりあえずパスの練習をして、感覚をつかんでもらった。




 最初の方は、ボールが真っ直ぐ前に飛ばなかったイレーナだったが、1時間ぐらい経過したあたりからボールがしっかりとこっちに帰って来るようになった。




「はぁはぁはぁ・・・・・・結構面白いわね。」




 クレアが用意したタオルで汗を拭きながら、イレーナは答える。


 ちなみに、サッカーをやりたいと最初に言い出したのはイレーナだ。王都で微かに噂になっていたものがどんなものなのか知りたかったそうだ。




「これが流行っているのにも納得がいったわ。サッカーは競技であるという話だったけど、ルールのようなものはあるの?」




「あぁ、あるぞ。まぁ今のところ知っているのは俺だけだけどな。」




「なら、そのルールを公表すれば良いんじゃない?チームを作って対戦させれば盛り上がると思うわよ。」




「それだ!スタジアム作るか。」




「すたじあむ?よくわからないけどまぁいいわ、それを作りましょ。」




「ただな〜材料が無いんだよな〜」




 スタジアムを何で作るかはすごく悩む。流石に、全部鉄で作るわけにはいかないので困る。


 前世だとコンクリートとか使うんかな。




【鉄筋コンクリートが多いですね。コンクリートを作れれば話は早いのですが、効率が悪すぎます。どうしますか?】




 将来的にも使うだろうし、やっぱりコンクリートで作りたいよな・・・・・・




【わかりました、スタジアム建設用の資料を作成します。】




 お願〜い。


 そうと決まれば・・・・・・




「よし、案がまとまった。少年兵舎の方に行こう。」




「わかりました、レオルド様。」


「あなたの案、みせてもらうわ。」




 俺は、足元にあったサッカーボールを左足でゴールへねじ込むと、自分の部屋へと戻っていった。





 ✳︎





 企画書を書き終え、お母様に後で見ておいてと伝えた後、俺は子供兵舎の方へ向かった。俺が現れると、多くの子供達が手を止めてこちらへと歩み寄ってくる。




「レオルド様〜」


「レオルド様〜」


「クレアお姉ちゃ〜ん」




 この子供兵舎に通っている子供達の多くは、俺に対してすごいありがたみを感じているそうだ。中には、既に生涯忠誠を誓う事にしている子もいるそうだ。


 これではやっている事が例の教会とおんなじ気がするが、布教目的では無い分俺の方がマシだと思いたい。




【そういうのを50歩100歩と言うんです】




 うるせーわ。




 この子供兵舎で働いている教師達に軽く挨拶をすると、俺はここで飛び抜けてサッカーが上手と呼ばれている2人を呼び出した。


 男の子の方スルマで、女の子の方がアンだ。2人とも16歳と、前世で言うところの高校1年生だ。




「いかがなさいましたか、レオルド様!」


「何なりとお申し付け下さい!」




 まだ何もいっていないにもかかわらず、地面につくほど頭を下げる。


 何か、トラウマになる出来事でもあったのだろうか。




「あ、いいからいいから、楽にしてくれない。」




「いえ、そう言うのわけには・・・・・・」




「ならこれは命令だ。普通にしろ。」




「「はっ!」」




 もはや何度目かわからないこのくだりで、落ち着かせると、2人に本題を告げた。




「君たち2人には、それぞれ14人(スタメン11人+補欠3人)のチームを作ってもらう。」




「「チーム」ですか?」




「うん、まだ正式には発表されていないけど、サッカーにルールを作ったんだ。領民にルールを覚えてもらうためにも、チームを2つ作って試合をさせたら面白そうだなって思って作った。」




「なるほど・・・・・・」




「それと、はいこれ。俺が作っておいたルールブックだ。書いてある事は公平だから期待以上の活躍を待っているよ。あ、それと後でメンバーの身長も教えてくれ。」




「「は、はい!」」




 めっちゃ丸投げ感が半端ないが、サッカーチーム作りには俺が関わらない方が面白いと思ったからこれでいい。


 渡す物を終えた俺は、早速研究部に顔を出す事にした。

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