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第2話 家督

 当日は、朝からとんでもなく偉い人達がわんさかバビロン宮殿を訪れていた。


 ハーンブルク家と仲の良い貴族や王族、首相なんかが訪れた。


 もちろん、3日前にはほとんど全員現地入りしており、特に大きな問題は起こらずに当日を迎える事ができた。


 話し合いの結果、午前中に家督相続のための儀式を行い、午後から結婚式が行われる事となった。




「あ~緊張してきた~」




 朝食をさっさと食べ終えた俺は朝一番に、相続の儀式を行う事になった。


 俺はてっきり、国王に忠誠を誓うのかと思ったらどうやら違うらしい。完全にハーンブルク家の中だけで行われ、後日国王に報告するという形をとるらしい。


 国王の前で何かするとなると少し緊張するが、お父様の前なら一切緊張しない自信がある。いや、正確にはあった。


 あれだけ余裕で片付くと思っていたのに、俺は先程から緊張しっぱなしであった。




「何というか、扉が重いな〜」




 もちろん、質量的な問題では無い。既に準備は整ったようで、俺がこの扉を開けて中に入れば、ほぼ家督相続は終わりだ。




「行ってらっしゃい、レオルド様」


「ちゃんとやりなさいよ、レオルド」


「が、頑張ってくださいね、レオルド様」


「行ってらっしゃいませ、レオルド様」




 俺のお嫁さんたちはしっかりギリギリのところまでついてきてくれた。


 俺は、そっと扉の取手に手をかける。




【さぁ、扉を開けて下さい、マスター】




 4つの手と5つの声が、俺を押した。




「じゃ、行ってくる。」




 俺はみんなにそう告げると、部屋の中に入っていった。




 ここは、別に特別な場所というわけでは無い。


 ただの、バビロン宮殿内の一室だ。


 そもそも、バビロン宮殿は少し前に作られた建物だし、今回の儀式が行われる部屋も、以前から何度か入った事がある部屋だ。


 部屋の中に入ると、正面にお父様とお母様の姿が見えた。


 2人とも、いつもの様子で、俺を見る。




「こっちに来い。」




「はい。」




 お父様に言われて、俺は2人の側へと歩く。ちなみに、事前に練習などは一切していない、ぶっつけ本番だ。以前、練習が必要か聞いたところ、いらないと言われた。




「片膝を付いて、頭を下げろ。」




「はい。」




 俺は、お父様に言われた通りに膝を床に付ける。


 何というか、それっぽい雰囲気だ。俺が動作を終えると、お父様が口を開いた。




「汝、レオルド・フォン・ハーンブルク、其方を我が後継者として認め、当主の座を其方に譲る。ジルバード・フォン・ハーンブルク」




 いつものお父様からは、考えられないほどしっかりとした口調であった。




「レオルド、その場に立ってくれ。」




「はい。」




 言われて、俺はゆっくりと立ち上がる。


 目の前には、ハーンブルク軍の軍服を着たお父様と、美しい白いドレスを着たお母様がいた。


 先程と変わらない格好だが、お母様は右手に1本の剣、左手に1枚の紙を持っていた。




 ん?紙?




 剣の方は何かわかる。確か、ハーンブルク家の当主に代々伝わる宝剣なはずだ。


 先日、お父様から宝剣の話は聞いている。だが、紙の方は聞いていない。




 もしや・・・・・・




【カンペですね・・・・・・】




 あ、やっぱり?




 何かそんな気はしたんだよなー


 まぁお父様が家督を受け継いだのも数十年前なはずだし。


 覚えていないのも仕方ないかなー




【・・・・・・そうですね。】




 何というか、肩の力が抜けた気がする。


 まぁ、多分、お父様もそれを考えた上で、カンペを出してくれたのだろう。


 うん、きっとそうだ。




「じゃあ次は、宝剣『ヒサクニ』の引き継ぎだな。」




 お父様はそう言うと、お母様から剣を受け取り、俺の方を向いた。


 俺は手を前に出し、宝剣を受けとる。




「頑張れよ。」




 ただ一言、それだけ言うと、俺に手渡した。


 何でできているかわからないが、真白いしっかりとした剣であった。


 お父様が手を離した直後、ずしんとした重みを感じた。




「その剣は、俺たちのご先祖さまがそれを使って国を救ったと言われているやつだ。ほんとかどうかは知らないが、それなりの剣として使える。」




「そうなんですか・・・・・・」




「よし、これで家督相続の儀式は終了だ。戻っていいぞ。それと、その剣は自分の好きなように使ってくれ。メインウェポンとして使ってもいいし、部屋に飾ってもいい。壊してもいいが、失くしたりするなよ。」




「わかりました。」




 いやいや、家宝を失くすって何だよ。




【過去に紛失した事があったのでは?】




 おいおい。




 まぁとりあえず、俺はこの剣を使うような場面は無いと思うし部屋に飾っておくかな〜




 そんな事を考えながら、俺は1人で先に部屋を出た。


 本当に呆気なく終わったため、少し本当にこれでいいのか心配になったが、まぁこれでいいだろう。





 ✳︎





 家督相続を終えた俺は、そのまままっすぐバビロン宮殿の最上階を目指した。




 ここで待機してくれているはずの彼と合流するために。




「お疲れ様です、レオルド様。家督の方は無事相続の方は完了できたようですね。」




「あぁ、宝剣の方もしっかりと受け取ったぞ。」




「それはけっこうです。」




「例のアレは準備できているか?」




「既に準備はできております。お申し付け通り、テストはしていませんが、機器は正常です。」




 俺を待っていた男、アインは先日完成したばかりの無線式音声伝達機の準備を完了させていた。


 今回の作品も、アイとアインのアイアイコンビの最新作だ。


 いずれ、東京タワーのような電波塔を作ろうと考えているが、現状シュヴェリーンで1番高い建物はバビロン宮殿なので、その最上階から発信を行う事にした。





 さぁこれが、当主として初めての仕事だ。






 仕事と、言えるかどうかは別として・・・・・・

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