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第14話 覚悟

「レオルド様、ご機嫌はいかがですか?」




「まあまあかな。それよりもその・・・・・・」




「何か?」




「いえ、何でも無いです。」






 パーティーの翌日、様々な予定がひと段落し、ほっと一息つけると思ったら、朝早くから俺は外へと連れ出された。


 何故かお嫁さんイレーナから「頑張って来なさいよ〜」と言われ、アイからも今日は最低限の防御体制だけ残して、私はサンセバスに行って来ます、と言われた。




 訳の分からないまま鉄道に乗せられ、気づいた時にはウィートンにいた。




 いつものメイド服ではなく赤と黄色を貴重とした色鮮やかワンピースを着た1人の少女と手を繋ぎながら歩く。


 俺は別に普通に歩けばいいと考えていたが、手を繋いでおけば正体がバレないから、という提案を聞き入れ、俺は彼女と手を繋ぎながら音楽の街を散歩した。




 俺がハーンブルク家の次期当主であるバレない程度に演奏を披露しながら、色々な店や屋台を周り、2人で楽しんだ。


 俺と彼女は別にまだ恋人というわけではなかったが、まるでデートをしているかのような気分になりながら、楽しんでいた。




 2人で並んで昼食を取り、午後は遊戯の街『ラスベスタ』で遊び回った。


 俺の知らない新感覚のゲームや、スポーツの体験などをして周り、一日中楽しんだ。




 日が沈み始め、帰りの電車に乗ったと思ったら、気づいた時にはシュヴェリーンの中心にある大きな公園へとやって来ていた。


 正面にある鮮やかな夕日を眺めながら、木陰にポツンと置いてある木でできたベンチに彼女と座る。




「どうしたの?急にこんな所に来て・・・・・・」




「知ってましたか?レオルド様。私たちが最初に出会ったのは、ちょうどこの辺だったらしいですよ。」




「あぁ、今は公園になっちゃったけどね。今から10年ぐらい前の話だけど、よく覚えているよ。」




 確かあの時、俺はお父様から出された課題をクリアするために、トリアス教をハーンブルク領から追い出すためにここを訪れたのだ。


 当時のトリアス教は、本当にどうしようもない宗教で、それによって多くの人々が被害にあった。


 俺はそれを、少しでも良くしようと動いて、ここで隣に座る少女に出会ったのだ。




「レオルド様は、どうしてここを公園にしようと思ったのですか?」




「バビロン宮殿を中心に持ってきてもよかったけど、やっぱり街の中心には心が安らぐ場所が必要かなって思ったんだよ。区画整理もそういう小さい事まで気をつけて配置しているし。」




 ハーンブルク領首都シュヴェリーンには、大きく分けて4つの地区があり、その中央には半径1kmの巨大な公園がある。


 また、それぞれの地区には花の名前がついており、




 公園の北側で、主に学校や研究所などが集まるハイビスカス地区


 公園の東側で、主に行政関係の建物が集まるアジサイ地区


 公園の南側で、主に商業施設が集まるダリア地区


 公園の西側で、駅やサッカー場、バビロン宮殿などがあるスズラン地区




 となっている。その周辺には住宅地が広がっており、それらにもパンジー町やアサガオ町などと言った花の名前がついており、それらが住所にもなっている。


 そして中央には、領民達が心を休めるように巨大な公園を作ったのだ。小さな池なんかもあり、領民達はそれぞれ自然を楽しむ事ができるように、という願いが込められている。




「どうだ?いい街になっただろ。」




「はい、とても住みやすい街になりました。昔のシュヴェリーンを知っている身からすると、街の風景も、領民の生活の質も、服も、表情も、大きく変わりました。」




 俺が、少し自慢げに言うと、クレアは微笑みながら頷きながら口を開いた。


 確かに大きく変わった。きっと、俺の目が行き届いていない所でも、大きく変わっているのだろう。




「そっか、もうアレから10年も経つのか・・・・・・」




 考えてみれば、俺ももう少しで15歳になる計算になる。前世を足すと35歳だが、俺は前世での記憶がほとんどないので、15歳とほとんど変わらない。


 だが、15年という月日は、長いようであっという間であった。




「私はあの時のレオルド様の行動に、とても感謝しています。私をあの閉じられた世界から救いだしてくれて、本当にありがとうございます。」




「いいって、そういうのは。俺とクレアの仲だろ?家族を除いたら、おそらく1番付き合いが長いぞ。」




「そうかもしれませんね・・・・・・」




 言いながら、少し悪い事をしてしまったなと感じた。


 どうして今日、彼女がここに誘ってくれたのか、察してしまったからだ。


 いや、むしろここまでされて気が付かない方がおかしい。俺は、ずっと前から彼女の気持ちに気づいていた。




「レオルド様、是非とも伝えたい事があります。」




 だが、身分というどうしようもないほど明確な差が、彼女を止める。




「あの・・・・・・その・・・・・・」




「もういい喋んな。」




「んっ!」




 だから、彼女の側からは無理でも、こちら側からならば、それを打ち破れる。


 いや、何が何でも打ち破ってみせる。




 俺は、何かを伝えようとしていた彼女の口に、自分の口を被せる。


 そして、右手でそっと彼女を抱き寄せた。




 彼女が落ち着いた事がわかると、俺はゆっくりと離れた。


 クレア、俺の行動に相当驚いたようで、じっと俺の目を見つめていた。





「俺と、結婚してくれ、クレア」

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